第40話 決意
「こいつだ……」
ドンキホーテは挿絵を眺めながら呟いた。
「ルーオ・オホース」
ロランが口を開いた。
「それがこの化け物の名前だ、上級の悪魔でね、契約を結ぶことが出来てね、契約を結ぶとある能力を使うことが出来る」
「どんな能力だ?」
ドンキホーテが聞いた、レーデンスも神妙な顔つきをして腕を組んでいる。ロランは解を答える。
「ルーオ・オホースの目を通じて、全てを見るっていう能力、この能力には相手のアビリティを見破る力もあるようなんだ」
つまり、あの空に浮かぶ一つ目の巨大な化け物の目は誰かの目と通じているのだ。そして監視している、この街全体を。
なんのために、その理由は明白だ、ロランをドンキホーテ達をはては、その他の不穏分子を見つけるためだろう。
「用意周到だな、花クジラを守るためにそこまでするとは」
レーデンスは敵の用心深さに若干、感心する。よほどこの繰り返す時の牢獄を敵は手放したくないのだ。
「だがはっきりしたぜ、なんで敵が俺達の居場所やアビリティがわかったのか、監視役が居たんだな」
ドンキホーテはそう言った。
「あと、なんで図書館に行くと襲撃されるのかもわかったよ」
ロランはさらに説明を付け加える。
「この魔物、神聖な場所だったり、魔法が多数かけられている場所は、邪魔をされてよく見えなくなるらしい。
良い目を持っているが故に、色々見えすぎてしまうんだね」
「図書館って魔法、たくさんあるのか?」
ドンキホーテが呆けたように言った。彼は何がなんだかわかっていないようだが、レーデンスはハッと気づく。
「本にかかっている防火の魔法か!」
ロランは頷いた。
「おそらく、そういうことだろう、図書館の本には全てに魔法が施されている。そんな魔法の巣窟みたいなところじゃ、この化け物は見通すことができないんだろう」
「じゃあよ、俺たちが襲われたのって……」
ドンキホーテはひらめきを口にする、ロランが引き継いで言った。
「わざわざ、こんな強大な魔物を召喚するぐらいだ、心配性なんだろうね、僕達の姿が監視できなくなったから、刺客を寄越したんだ」
推測の域を出ないが、それ以上納得できる答えがない、しかしその仮説が正しければ今まで図書館で襲われていたのは、真実がここにあるからではなく、ただ単にロランの動向がわからなくなることを懸念して襲いかかってきた可能性が高いのだ。
「ではもしかして、図書館に答えがあるわけではないのか?」
レーデンスはそう言った。しかしその考えは早計だと、ロランが首を横に降る。
「そう考えるのはまだ早いよレーデンス、まだ推測に過ぎないからね、図書館の知識にはまだ頼り続けてもいいと思う」
だがよ、とドンキホーテが口を挟む。
「こんなに襲撃されるんじゃロクに、調べものもできねぇぜ、どうするんだ?」
「そこは僕に考えがある」
ロランは澄ました表情でそう言った。ドンキホーテは首を傾げる。
「でもその前に今日、寝るところ準備しておかなくちゃね、君たちも自分の荷物を持ってくるといい」
そういえば、まだ繰り返す一週間の一日目だというのに随分と密度の高い、一日を過ごしたものだと、ドンキホーテと、レーデンスは改めて思う。
そんな一日を過ごしたせいか時間はもう、日が傾き始める頃だ。
「寝るところを準備って、当てはあるのかよ? ロラン」
「僕の親が所持してる別荘がこの街にある、そこはいま誰も使ってないから、そこに今日は泊まらせてもらう」
「別荘!?」とレーデンスとドンキホーテは驚愕する。
「た、たしかに暗殺者に狙われている状況で、冒険者の宿には帰れんな、一日の猶予があるとはいえ、いつ襲われるかは分からん。
だが、いいのか?」
レーデンスは心配そうに聞いた。しかしロランはさらりと答える。
「別にいいよ、どうせパーティ開くぐらいにしか使ってないし多分、いまの時期ハウスキーパーの人もいないだろうし、最悪襲われても大丈夫だよ」
「そ、そうか」とレーデンスは驚きを隠せずにいう。
「じゃあ決まりだね」ロランはそう言って本を元の場所に戻しに行き、さっさと螺旋階段を登り地下から出てしまう。
ドンキホーテとレーデンスも後に続く。そして図書館の外に出たところでドンキホーテがロランに問いかけた。
「な、なあロラン、前から気になってたんだがよ、お前、一体何者?」
「僕は僕だよ?」
「ちげぇよ! そうじゃなくてだな! お前の素性が知りてぇんだ! なんで、繰り返しの記憶があるのかとか、なんでそんなに金持ってるのだとか、他にも気になることあるけど!」
ロランは、「はあ」とため息をついた後、ロランは言う。
「じゃあ、別荘に着いたら言うよ、その前にまず君たちの荷物だ、必要だろ?」
「ぐぬぬ、約束だかんな!」
そう言ってドンキホーテ達は一先ず、下宿先である冒険者の宿を目指した。
一つ目の化け物、「ルーオ・オホース」は未だ見下している。この街をそしてロラン達を。
ドンキホーテは空にいる化け物を一瞬だけ見つめた後、誓った。
――絶対、この繰り返しから抜け出してやる! そして俺はなるんだ、騎士に!
「どうした、ドンキホーテ? 早く行こう」
レーデンスの急かす声が聞こえる。「あ、すまねぇ!」とドンキホーテは駆け出した。一つ目の化け物はジッとそれを見つめている。
その視界はとある水晶に映し出されていた。
「最初の刺客を倒すとは……」
見知らぬ薄暗い部屋で男の声が響いた、声の主の男は椅子に座り目の前のテーブルにある、両手ほどの大きさの水晶を見つめている。
水晶に映すドンキホーテ達の行動を眺め、男は呟く。
「慌ててはダメだ、焦った瞬間から、全ては崩れ去る。慎重にいかなければな」
指をパチンと鳴らす、すると水晶はドンキホーテ達を、映すのをやめた。
「さて、対策を練らねば」
そう呟きながら、男は影の中に溶けていった。
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