第39話 一つ目の正体
「なんだ、あれ……」
ドンキホーテは呆然と立ち尽くした、空に浮かぶ巨大な一つ目は、空を覆い隠していた、だが不思議なことに、日光は遮られておらず街は照らされていた。
ギョロリ、瞳はドンキホーテを見つめる。
見られている。その事に気づいた時、ドンキホーテは恐怖を覚え、目を背けて、地面に視線を移す。
――見ていると悟られちゃいけねぇ!
拳を握りしめ、必死に冷静を保つ、そんな彼の一連の行動はレーデンスやロランから見ると、不審なものであった。
「大丈夫か、ドンキホーテ?」
いつの間にやら、そばに来ていたレーデンスに肩をドンキホーテは叩かれる。
「あ、ああ……」と惚けたような、声を上げて、彼はレーデンスの方に振り返る。
「何か、上を見ていたが何かあったのか?」
そう言って、上を見つめようとするレーデンスにドンキホーテは待ったをかける。
「見ちゃダメだ、レーデンス」
「……? どう言う事だ?」
「目だ……」
「目?」
「目があるんだよ、でっけえ一つ目が、俺たちを見下してやがる」
「……「不変」の力で見えたのか?」
「そうだ、レーデンス、多分、なんて言うんだろうな、人の感覚を狂わせる、魔法か何かを使ってるんだろう、だから他の奴には見えねぇ。
不変の力を持つ、俺以外の奴は……」
ドンキホーテはレーデンスに、なるべく、不自然にならないようにと、口頭で伝えた後、ロランに近づく。
「突然、飛び出したからびっくりしたよ、それで何か思いついたのかい?」
ロランは、腕を組みながらそう聞いた。ドンキホーテは言う。
「召喚されているのは、花クジラだけじゃねぇ」
「なんだって……?」
それからドンキホーテは、自身の見たものを詳細に伝えた。空に浮かぶ巨大な一つ目のことを、それがまるで監視するかのように、自分たちを見下していた事に。
それを聞いたロランは深刻な顔をし言った。
「再び、図書館で調べものをする理由ができたね」
ロランは早々と、図書館の中に戻っていく、「あ、おい!」と、ドンキホーテは痛む身体に鞭を打ち、ロランの後を追いかける。レーデンスもそれに続いた。
図書館の中に入ると、いやでも感じる静寂の雰囲気がドンキホーテ達を包む。
先程まで、あの暗殺者達が起こした喧騒は何処へやら、何事もなかったかのように図書館は平和を取り戻していた。
一見何も問題はなさそうに見えたのだが、ドンキホーテ達は図書館の男性職員に止められる。
「申し訳ありません、今日は誠に勝手ですが、もう閉館させて頂くことになりました」
「な! どうして……」
「先程、身元の知らぬ、男達が暴れ図書館を荒らしてしまったのです、利用者の方々は怯え、いなくなり、貴重な本はあちこちに散らばってしまいました……
なので、現場の後始末を我々が総動員でするため、今日は閉館とさせていただきたいのです」
「まじか」とドンキホーテは言葉をこぼす。しかしロランは食い下がった。
「それは重々承知の上なのですが、どうか僕達の要望を聞いてください、僕達は先程の事件の被害者なのです」
「ああ、よく見れば……申し訳ありません、気づくのが遅れてしまい……」
「いえ、その事は別にいいのです。お忙しいでしょうから、僕達の要望は一つ、あの事件のせいで、私たちは知識の探求という貴重な経験を邪魔されてしまいました。少しの時間でいい、地下の図書を利用させてもらえませんか?」
「ですが」と、職員は口ごもり考えた後、こう言った。
「少々時間を頂けますか? 上のものと掛け合ってみます」
職員はその場を離れた、ドンキホーテはニヤニヤしながら言う。
「ロラン、お前丁寧だなぁ、いやぁ以外だ、もっと高圧的にいくもんだと思ったぜ」
「僕をなんだと思ってるんだ……」
そんな話をしていると、職員が戻ってきた。
「お待たせいたしました、図書館の利用の許可がおりましたので、どうぞご利用ください、ですがしばらくの間、職員が整理の仕事をしますので、ご了承ください」
「わかりました」
ロランはそう答えると、そそくさと地下室に向かっていった。男性職員はドンキホーテの方に向き直ると、
「しっかりした弟さんですね」
とにこやかに言った、どうやら勘違いをしているようだ。
「え、ああ、はは、そうなんすよぉ〜」
訂正するのもめんどくさいので、そのまま、受け流すことにしたドンキホーテ、レーデンスは後ろで苦笑していた。
「さて調べものをしますか」
ドンキホーテは、そういって再び地下室に入る、ロランは先に入っており散らばった本を片付ける職員の横で本をすでに読んでいた。
「私たちも負けてはいられないな」
「そうだな、レーデンス」
じゃあ始めるか、とドンキホーテとレーデンスが拳を付き合わせた瞬間、ロランがつかつかと近寄ってきた。
「気合いを入れたところ申し訳ないんだけど、僕、見つけたよ」
「え」
間抜けな声を出すドンキホーテ
「一つ目の、巨大な化け物どこかで読んだ記憶があったんだ、だからこんなに早く見つけられた、多分こいつのことだと思う」
ロランは手に持っていた本をペラペラとめくりとある挿絵付きのページのところで、めくるのをやめた。
「これじゃない? 君のいっていた、目玉の化け物」
そしてそれをレーデンスとドンキホーテに見せる。
「どうだ、ドンキホーテ?」
レーデンスがドンキホーテに尋ねた。ドンキホーテは穴が空くほど見つめ、そしてゴクリと唾を飲んでいった。
「こいつだ……」
本の見開きにはこう書いてあった、全てを見つめる傍観者、「ルーオ・オホース」と。
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