第36話 刺客
鉛の雨が、ドンキホーテ達を襲う。幸いにも、闘気による身体強度の上昇や、リヴァイアサン事件の報酬で買った上質な皮鎧のおかげで、鉛の雨は、鎧の表層で止まっていく。
「うおおお!!?」
「グッ……!」
だからと言って、反撃ができるわけでも痛みがないわけでもない、ましてその強烈な衝撃がなくなるわけでもなく、ドンキホーテとレーデンスは呻き声をあげながら、仰け反る。
ドンキホーテは鉛の雨の衝撃に耐えきれず、階段を転げ落ちる、レーデンスはドンキホーテが転げ落ちたことにより無防備になったロランを守るべく、ロランの前に立ち、攻撃が及ばないように防いだ。
やがて、鉛の雨が止む。
「ガハッ……」
「レーデンス……!」
なんとかロランを守りきったレーデンスは片膝をつき、口から血を吐いた。それをみてロランは心配そうに、レーデンスに語りかける。
しかしまだ倒れるわけにはいかないとレーデンスは、感知のアビリティを発動。周りいるけたたましい音に動揺する数少ない図書館の利用者達と正面の敵を感知する。
たしかにドンキホーテの言う通り、目に見えない敵が、目の前にいるようだ。
邪魔な死にかけだった虫達の敵意はもはや完全に消えているため完璧に感じ取れる。
息を荒くしながら、レーデンスはその敵がいると思われるところを睨みつけた。
すると、何もない空間が突如、陽炎のように揺らぎ、まるで鏡面の水面から浮かび上がるようにフードを被った二人組の男が姿を見せた。
「しぶといな」
レーデンスから見て右の男がそう呟く、二人の男の手には、細い鉄の筒と木の取っ手でできた武器らしきものを持っている。
さらにその未知の武器は、鉄の筒の横にいささか薄い長方体が突き刺さっていた。
「俺がとどめを刺す」
右の男はそういい、長方体の何かを引き抜くと、腰のポーチから同じ長方体を取り出し突き刺した。
左の男も「ああ」と言い、遅れて同じ長方体の何かを筒から取り出し再び同じものを突き刺す。
その光景を見て、ロランがレーデンスに言う。
「レーデンス、動くんだ! あれは機関銃! 古代兵器だ! 鉛玉がまた来る!」
「わかって……いる……!」
よろりと、レーデンスは起き上がり剣を引き抜くも、先ほどの攻撃でどうやら、肺が傷つけられ、骨もヒビが入っている。
加えて全身に激痛が走っている。まともに戦えるかどうかレーデンス自身にもわかっていなかった。
「今、回復魔法を……!」
ロランはそう呟き、レーデンスの後ろで、魔法を唱え用とした。しかし機関銃を装填した右の男が言う。
「させると思うか?」
銃口をレーデンスに向けた。
「グッ……!」
再び鉛の雨に晒されるのか。レーデンスはせめて、ロランだけは守らねばと左手に装備していた盾を構える。
レーデンスが覚悟を決めたその時だ。
「おらぁぁぁ!」
下から誰かが駆け上がってくる。この地下空間には、少なからず人がいるが、こんな声をあげながら突き進んでくる者は今一人をおいてほかにいないだろう。
ドンキホーテだ。
ドンキホーテはもとより頑丈な体と、先に転げ落ち、鉛玉にそれほど晒されなかったお陰でレーデンスよりは軽症ですんだのだ。
螺旋階段を駆け上がるドンキホーテ、彼は闘気によって強化された、脚力を存分に発揮していた。そして目にも止まらぬ速さで、すぐさまレーデンスの前にまで舞い戻る。
機関銃の銃口を構えていた男は、すぐさまドンキホーテに照準を合わせた。
それに一瞬で感づいたドンキホーテは本棚を駆け上がり、強化された脚力を生かして、重力に逆らうように、本棚を大地にして走る。
すぐさま、機関銃を持つ二人組の男は発砲するも弾丸はドンキホーテの影を貫くだけだった。
そして、ドンキホーテは本棚走り抜け、二人組の男の横を取った彼は本棚を再び蹴る。
本が蹴られた衝撃で飛び散り、ドンキホーテは男二人組に向かって突撃していく。
男たちは発砲し続けるも、ドンキホーテの速さに照準が追いつかず、彼が過ぎ去った本棚撃ち続けていた。
そしてそのまま突撃してくるドンキホーテのタックルに二人組の男は避けられず、手すりを破壊して吹き抜けから落ちていく。
勢いの余った、ドンキホーテと共に。
「ぎゃあああ!!」
ドンキホーテはそう叫びながら吹き抜けから真っ逆さまに落ちる。しかし底の床に激突する寸前に、落下速度が急激に落ち、難なく着地できた。
ドンキホーテは尻餅をつき呟く
「ロランの言ってた、落下制御の魔法……」
助かった、そう言いかけた時。ドンキホーテは殺気を感じ、飛び上がる。案の定、彼が居座っていた場所に鉛玉の雨が着弾した。
「クッソ! テメェらも助かったのかよ!」
ドンキホーテはそう叫び、銃弾が飛んできたであろう方向を見る。銃口から煙を上げ、銃を構えていた男は外したのを確認するとチッ、と舌打ちをした。
となりにいる男は長方体の形をした、恐らく弾倉なのだろう、それを取り替え装填していた。発砲した男は、相方に言う。
「早くしろ、カタをつけたい」
「わかってるよ」
少々、イラつきのこもった、口調で男たちは、会話する。ドンキホーテはそれを聞いてニタリと嫌らしい笑み浮かびた。
「早くカタをつけたいぃぃ〜? カタをつけられるのはテメェらの方だぜ!」
「抜かせ、ガキが!」
銃を構えた男が発砲する。その瞬間、ドンキホーテの姿が青白い光と共に消える。
「な――!」
そして驚く暇もなく、発砲した男の顔面に、ドンキホーテの左拳が炸裂した。
突如、目の前に瞬間移動したドンキホーテに男は殴られたのである。声も上げられず、刺客の一人は殴り飛ばされ本棚に激突した。
そしてそのまま、気を失ってしまう。
ドンキホーテは残りの男を見て言った。
「さあて、次はテメェの番だ!」
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