第35話 急襲

 王立図書館、それは王都エポロにある、ソール国の中でも二番目に巨大な図書館である。

 二番目と言っても、王立なだけあり、本の貯蔵量はかなりのものである。また外観も荘厳な装飾が施されており、図書館というよりは神殿に感じられる見た目をしていた。

 手をかけているのは外観だけでは無い、内観かなり手をかけて作られている。

その証拠にこの図書館は地下に大きな地下室が作られており、そこに大量の叡智が収めれているのだ。


 王都エポロ王立図書館に行けば全てがわかる。


 誰が言ったか、そうとまで言言われるほど本の貯蔵量を誇っている。

 そんな王立図書館は基本的に一般開放されており、本の貸し出しは不可能だが、図書館内で読むことはできる。

そのため日々の勉強をすべく休日には一般市民や冒険者達が勉強のために訪れるのだ。

 ドンキホーテ達もまた、王立図書館の膨大な知識の宝庫に答えを求め、扉を叩いた。


「さあて、やるとしますか」


 そう言いながらドンキホーテは腕を両肩を回し、図書館の中に入っていく。

 その後に、レーデンス、ロランと続き、図書館の中に入っていった。


 荘厳な見た目だけでなく、内観もそれに見合うような、豪勢な装飾が施されれている。

 巨大なシャンデリアが吊り下げれらていて、その下には数え切れないほどの本棚が、華麗に並べ立てられており、空間を区切っていた。


「相変わらず、すげえ数だな……」


 ドンキホーテは小声でそういう。


「ああ、手分けしたとして、全て読むのに、何年かかるのやら……」


 レーデンスもそう同調した。しかしここが目的の場所ではない、と事前に説明を受けていたドンキホーテ達。

 この地上一階にあたるここはすでに、全ての本をロランが三週ほど読み尽くしたらしい。


「二人ともついてきて、地下に行くよ……」


 ロランの案内に促されるまま二人は図書館の内部の地下へ続く階段へと足を運ぶ。


 地下へ降りた彼らを待っていたのはさらに、荘厳な光景だった。


 そこは広大な空間であった、螺旋状の階段が、壁に沿って備え付けられており、壁にはさらに本棚が埋め込まれている。

 照明はまるで、人魂のように浮かんだ、魔法灯と呼ばれている、魔力を力の元とした光の玉が宙に浮かびあたりを照らしていた。

 そして何より特徴的なのが、吹き抜け構造になっており、それが地下深くまで続いているということだ。

 ドンキホーテはちらりと階段の手すり越しから下を見てみた。

 どうやら底はあるらしいが、はるか先で、床が豆粒のように見える。


「落ちたら死ぬなこりゃ」

「安心して、死にはしない、安全装置の魔法があるからね、土魔法と風魔法の応用で、落下制御の魔法が発動するから」


「詳しいな」とドンキホーテは言う。「まあ落ちたことあるから」とさらりととんでもない事をロランは返した。


「じゃあ始めようか」


 ロランはそう言って、螺旋階段を降り始める。壁にはびっしりと本が天井まで埋まっており、それが地下深くまで続いていると思うとドンキホーテは気が遠くなりそうになった。

 これでは、調べるのに何十年もかかりそうだ。


「じゃあよ、説明の通り、調べ始めるんでいいんだな?」

「うん、僕と付かず離れず、文献を探ってくれ」


 ロランの立てた作戦はこうだ。

 この膨大な地下空間の図書を探しつつ、いつ暗殺者達が来てもいいようにロラン自身の近くで護衛すると言うもの。

 ロラン曰く、暗殺者達が放たれるタイミングは、花クジラの真相を調べようと行動した時らしい。

 その証拠にロランは繰り返される時の中で何度も図書館内で襲撃を受けた。

 逆に言えば、この図書館の中に答えがあると言っても過言ではない。そのため花クジラの素性調べるためには王立図書館が必要不可欠なのだ。


「それにしてもよ、今更だがやばくねぇのか?」


 調べ始めたロラン達の水を差すようにドンキホーテは小声で喋り始める。


「ここの図書館は石造りといえどよ、本棚に火でもつけられたら、大事な文献がなくなっちまうんじゃないか?」


 レーデンスは言う。


「その事なら心配はない、図書館の本には全て、火を防ぐ魔法が施されている、生半可なものでは燃やされないさ」


 ドンキホーテ「なるほどな」といって目についた「悪魔魔法学」という本を手にとってパラパラとめくる。まずは花クジラの正体を知らなくてはならない。

 しかし、ロランが言うには花クジラの情報は今まで見つけたことがないらしい。

 ではどうやって目星をつけるのか、そんなのは簡単だ、あらゆるカテゴリの本を読むほかない。単純だがそうするしかなかった。

 歴史、伝記、魔法学、童話、そのほかにも関連があると思われる本の種類を読み漁るしかないのだ、それも丁寧に。


「クッソここに、テーブルでもあればな」


 ドンキホーテは独りごちる、しかしいつ暗殺者達が襲ってくるかわからないと言うのに、時間をかけてはいられない、早く見つけなければ、という思いがドンキホーテを急かす。

 だが幸いにもレーデンスの「感知」アビリティのおかげで、周囲の警戒は事足りている。

 しかも平日という、状況も相まってこの地下の空間にも人は少ない。不審な動きがあればすぐさまレーデンスが察知するだろう。

 そうして、しばらくレーデンスが辺りの警戒をドンキホーテとロランが文献を探していると。

 レーデンスが言った。


「二人とも! 敵意を感知した! 敵がやってくるぞ!」


 その言葉にドンキホーテは護身用に持ってきた剣に手をかけ、左手にある盾を構える。ロランはドンキホーテの陰に隠れた。

ドンキホーテは戦闘態勢に入り、レーデンスに尋ねた。


「レーデンス、敵は今どこだ!?」

「ちょうど、この地下の入り口の扉に立っている、二人組だ!」


 来たか、ドンキホーテは覚悟を決める。するとギイと地下の扉が開け放たれた音が聞こえた。


 くる敵が。


 そして次の瞬間、扉の方向から飛び出したのは無数の空飛ぶ虫であった。


「これは……!」


 レーデンスは驚く、その虫達はどうやら腹に針のようなものを持っており、敵意をむき出しにしてドンキホーテ達に襲い掛かる。


「くっ、感知のアビリティを逆手に取られた! 虫達の無数の敵意が邪魔をして、二人組を感知できん!」

「……任せて」


 ロランがドンキホーテの一歩前に歩み出て、手のひらを虫の軍に向けると、手がぼんやりと光り、煙のようなものが虫達を包んだ。

 すると煙に包まれた虫達は羽を羽ばたかせる力がなくなり地面に落ちる。


「生活魔法、殺虫だよ」


 ロランはそう言った。


「レーデンス敵はどこだ?」


 ドンキホーテはレーデンスにそう尋ねる。


「まて、今敵意を探知しているのだが、この死にかけの虫の敵意しか感じ取れん」

「じゃあ、いなくなっちまったのかな」


 ドンキホーテがそう言った瞬間ふと、彼は目の前に転がる虫達を見た。その時だ


 虫が、ひとりでに潰された。まるで見えない何かに踏まれたかのように。


ドンキホーテは叫ぶ。


「レーデンス! 何かいる!」


 しかし遅かったジャキリと何か聞きなれない音がしたと思った瞬間、ドンキホーテとレーデンス何もない空間から射出された鉛の雨に晒された。

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