第34話 調査開始
「三十年?!」
ドンキホーテは驚愕のあまり、大きな声を上げてしまう。周りの視線が彼に突き刺さる。
だが同時このロランという少年がなぜここまで大人びた性格なのかも理解できた。
おそらく見た目の年齢は八歳から十二才と言ったところだろう。それから三十年。およそ約四十才だ。
大人びているはずだとドンキホーテは納得した。
「三十年もお前は繰り返してんのか? 俺らより年上じゃん!」
「そうだよ、いい加減先に進みたくてしょうがない」
ドンキホーテの言葉に皮肉げに返すロラン。
「まじかよ」ドンキホーテは頭を抱える、自分達はこれから三十年かかっても倒さないような相手に戦いを挑みにいくのかと。
「それで、どうするんだ? 私達は協力すると約束した、まずはなにをすればいい?」
だからといって、尻込んでいるわけにはいかないと、レーデンスは行動に移すことを提案する。ロランは「そうだね」と言い、続けた。
「君たちにはまず、花クジラについて調べてもらいたいことがある」
「なんだ? なにをすればいいんだ?」
ドンキホーテは首を傾げた。
「王都エポロの王立図書館で、花クジラに関する文献を見つけてもらいたい」
「おい! まて、全然、前にした依頼と違うじゃねぇか! あれ結局、関係ねぇののかよ!」
ドンキホーテは抗議に似た声を上げた。ロランは言った。
「ああ、前の周回の依頼は君たちをテストさせてもらったんだ」
「テスト?」
レーデンスが意味がわからず聞く。
「ああ、レーデンス、僕は実は前回君たちと一周間ほど依頼をこなしているんだ、それは単純に言えばテストだったんだよ」
「おいおい、なんでテストなんてする必要があっただよ?」
ドンキホーテのいうことは最もなものだ。一週間を消費しなぜ自分達を見極めたのか、ドンキホーテは疑問に思った。
その、問いにロランは答えた。
「それは、簡単なことだ、これから君たちは命を狙われる」
「は?」
「なに?」
ドンキホーテとレーデンスはロランの言葉に困惑する。
しかしロランそんな二人の困惑を気にすることなく続ける。
「だから君たちがどれほど戦えるか、見ておきたかったんだよ」
「ちょ、ちょっと待って欲しいのだが……私達の敵は花クジラだけではないのか? それとも他に敵がいるのか?」
「他に敵がいるんだよ、レーデンス。花クジラ以外でね、そいつらはおそらく、花クジラの召喚者が雇った、暗殺者達だ」
ペラペラと話すロランにレーデンスは、一抹の不安を覚えた。
「まってくれ、そんな者がいるなら、こんな大勢がいる所で今更だが話して良いのか?
私達への依頼も秘密裏に行った方が良かったんじゃ……」
「問題ない、レーデンス、奴らは僕らの動きや会話を感じ取れる能力があるらしい、どこに行っても、どんなに秘密にしようとも奴らは来る」
「そんなことできんのか? 敵、めっちゃ厄介じゃねぇか」
ドンキホーテの言うことにロランは頷く。
「僕がなぜ、三十年も足止めを食らっているかわかるだろ?」
そのロランなら発言には、半ばの呆れと、ちょっとした徒労感のようなものが感じられた。おそらく、このようなことを何回も繰り返しているのだろう。
精神的な疲弊をこの少年は感じているのだ、それが大人びた雰囲気を作っている一因なのかもしれない。
そう思ったドンキホーテは、宣言した。
「なあ、ロラン、じゃあよぉ〜、俺たちでこのクソみたいな繰り返しから抜け出そうぜ、全力で協力してやるからよ! なぁ、レーデンス!」
「しょうがない、まだ信じきれてはいないが、嘘をついてるようにも感じないしな、できることはやらせてもらう」
ロランはその言葉を聞き、フッと笑う。
「ああ、よろしく頼むよ、永遠の時なんてろくなもじゃないからね」
そうしてドンキホーテ達とロランは再び協力関係を結ぶことになった。
冒険者ギルドをでて、王立の図書館に向かうドンキホーテ達、通りを歩いていると言うのに妙な緊張感が生まれている。
「なぁ、本当に暗殺者っつーのは図書館に行くまで現れねぇのかよ」
あたりをキョロキョロと見回す、ドンキホーテはロランにそう聞いた。
「ああ、どうやら僕たちが、花クジラを調べる行為を行った瞬間に、その暗殺者は放たれるらしい、向こうも無闇にやたらに攻撃をしてくるわけではないから安心して」
そうは言われたものの落ち着かないのは確かだ、「そうかい」とドンキホーテは口をつくも、ソワソワと未だに辺りを確認していた。
「安心しろドンキホーテ、感知のアビリティで、周囲を探っているが、敵意を持つものは、現れていない」
レーデンスは自身アビリティを使いそう言う。
「んじゃあ、少なくとも辺りは大丈夫か……」
ドンキホーテは肩を落としホッと安心する。
そうして歩いていくうちに、ついにドンキホーテ達一行は何事もなく、図書館の前に着いた。
本当に無事についたことをドンキホーテは驚きつつ、ロランとレーデンスとともに、図書館に入っていった。
城壁の上で二人組の男がその様子を監視しているとも知らずに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます