第99話 ゲーセン

カッパ寿司を出ると、樋野はアルコールが入って気が良くなったからか、そのまま寺町通りにあるゲーセンまで、皆を引き連れて行った。


「ゲームですか?」


祐香がちょっと嫌な表情をするが、樋野はお構いなしだ。


「言い方古いなぁ〜。E-sportsだよ、E-sports。」


そう言って、樋野は適当に台を選んで、100円玉を投入口に入れた。



生徒たちは、樋野の後ろで画面を見みつめた。

特に酒井や岡崎は、ゲーム好きみたいで、目を輝かせながら見ていた。


- 見せるだけあって、そこそこ上手いんだろう!! -


生徒たちは、そう思ったに違いない。



そして、樋野の実力は、彼らが予想したレベルの上の更に上を行った。

オンライン対戦のゲーム機なのだが、連戦連勝、相手を全く寄せ付けない。

下手な相手ばかりなら分かるが、動きから見て手練れだと思うような敵プレイヤーでも、完勝するのだ。


「スッゲェ〜〜。」


そう言って、酒井が思わずため息を吐くほどだ。



「相変わらずうまいもんだな。風乃かざのと今でもやってるのか?」

「いや、まぁ、最近タマにね。この間、風乃がふらっとうちまで来て、ゲーム機置いて行ったから。」


風乃も、樋野のことを気に留めてくれていたらしい。

そのことが山野にとっては、嬉しかった。

樋野は山野と会話している間も手を止めず、そのまま簡単に勝ってしまった。



「よし、じゃ、上原、やってみろ。」


樋野はみんなの後ろの方でボーッと見ていた上原にそう言った。

当然、上原はたじろぐ。


「えっ・・・・。」

「得意だろ、どれくらいの実力か酒井に見せてやれ。」

「いや・・・、でも・・・・」


そう言って、その場から動こうとしない上原を、後ろに回り込んだ山野が両肩を掴んで押す。

山野の力に負けて、上原はゆっくりと前に進んだ。

その姿を、酒井はボーっと見ていた。



上原が席に着くと、樋野は100円玉を投入する。

それまでの上原は渋々そうな態度だったが、キャラクター選択画面になると、人が変わったかのようにコントローラーを動かした。



- FIGHT!! -


そう言うアナウンスと共にゲームが始まる。

始まるや、上原は、樋野に負けず劣らずのコントローラ捌きで、敵プレイヤーを瞬殺する。

陽菜たちにしてみれば、勝っているので凄いと言うのは分かる。

ただ、ゲームの知識が皆無かいむ過ぎて、どう凄いのかは分からない。

酒井と岡崎が、コンボがどうのこうのと言っているが、その会話に交じれない。



「ちょっとカツハル、どう凄いの?」


莉央は2人の間に割り込んで聞く。


「どうって、普通はあんな自由自在に動けないぞ。相手の動きに合わせてコンボ打つなんて、簡単じゃない!」

「あんたとどっちが上??」

「えっ、そっ、そうだな。同じくらいだ。」

「ふーん。」


そう言って莉央は直ぐに引き下がった。

今は酒井に質問するより、ゲーム画面を見ている方が楽しそうだったからだ。



上原は、樋野と同じく連戦連勝、負け無しだ。

が、9戦目で、負けた。


- YOU ROSE -


画面に表示されると、陽菜は自分が拳を握っていたことに気付いた。



「今のは運が無かったな。」


そう樋野が席を立とうとした上原に声をかけているのが、陽菜に聞こえた。


「運?」

「実力に大きな差が無いと、最後はジャンケンと同じ運任せになるんだよ。」


陽菜の呟きに気づいた樋野は、そう説明した。



「上原、ゲームは上手いじゃないか!?」

「あ、ありがとうございます。」


山野がそう言うと、上原は照れたようにそう言った。



その後、同じように店を数軒回って山野が説明し、15時には三条京阪前で解散となった。

華は、自分が間違って降りた駅に戻って来たことに、一人顔を強張らせていた。

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