第12話 問題発生!!
山野が帰った学校では、祐香の声が職員室内に響き渡っていた。
「えーっ!校長先生、あの男を雇うんですか!?アイツ、暴力団ですよ!!」
山野が帰った後、職員室に来た校長を祐香が真っ先に捕まえた。
そして事の顛末を聞き出したのだ。
「いや、それは誤解だって説明しているじゃないですか。彼は、元警察官だと。」
「そんな本人の言い分を素直に信じるんですか!?どこからどう見たらあの写真が警察官に見えるんですか??ねぇ、木島先生。」
「えっ?そっ、そうですね。校長先生に説明頂いても、まだ信じられません。身元調査はされたんですか?」
「いや、そこまでは・・・・。」
「すべきです!!」
「えっ??」
祐香に詰め寄られ、校長は助けを求めるつもりで、他の職員を見渡した。
が、その目が皆、祐香の味方だと言うことを物語っていた。
「別に、校長先生を疑っている訳ではありません。ただ、念には念を入れるべきだと思うんです。」
「わっ、分かりました。ちょっと、考えさせて下さい。」
祐香の提案に、校長はそう言うしか方法が無かった。
翌日、問題は早速起きた。
昨日、山野が投げ飛ばした学生が、全身包帯姿になった上、車椅子に乗って登校してきたのだ。
それも、男の保護者付きで!!
「うちの子が、校内の不審者から暴力を受けたって言うのに、どう言うつもりだ!!」
その父親を名乗る男は、明らかにあっち方面の人だ。
元々、入学当初から要注意人物とされていたので、教職員はこの学生がどんな非行を働いても見て見ぬふりをしていた。
祐香を除いては・・・。
校長室から漏れ聞こえる話を聞けば、暴力を振るった相手は、山野に間違いない。
- 言わんこっちゃない・・・・。 -
祐香は、そう思った。
校長が、どう対応するかと思えば、山野を呼び出して確認すると言うことになった。
小一時間もすると、山野はやって来た。
昨日とは違う縦縞の入ったスーツ姿で・・・。
- どう見たって暴力団でしょ!! -
車からその姿で降りて来たのを見て、祐香はそう思った。
山野はゆっくりとした足取りで、校舎に入って来た。
すかさず祐香は、山野の前に立ち塞がる。
このまま何も教えずに校長室に向かわせたら、祐香自身の気分が悪い。
だから、最低限のことを忠告しておこうと思ったのだ。
「お相手も、あなたの同業者の方よ。」
「同業者??」
「暴力団関係ってことよ。」
「なんだ、そっちか!昨日、校長がちゃんと説明しておくと言ってくれたのに。」
そう言って、山野は小さく肩を落とした。
すかさず祐香は、校長の名誉の為に、山野の勘違いを正す。
「あんなウソ、いくら校長先生の言葉でも信じる訳ないでしょ。」
「ウソって、ウソかぁ〜〜。」
そうとだけ言って、山野は頭をかきながら祐香の前を通り過ぎて行った。
もうちょっと、何か別の反応があるだろうと思っていた祐香は、少し拍子抜けした。
山野が校長室の前に来て扉をノックしようとすると、中から威勢の良い声が漏れ聞こえてきた。
数年前までは、毎日のように聞いていた口調だ。
久々に聞くと、何でも新鮮に感じる。
だから、つい表情が緩んでしまう。
脅せばビビると、単純に考えているところがカワイイと山野は思う。
それでも、ここは緩む表情を引き締めようと、両手で自分の両頬を叩いてからノックした。
ノックの音が聞こえたらしく、怒声は止み、校長先生の返事が聞こえた。
「どうぞ。」
山野がゆっくりと扉を開けると、昨日山野が座っていた場所に、学生と保護者らしき男が座っていた。
だから山野は、睨み据えるような表情を作って、校長の隣に座った。
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