第17話 禁恋の先には
____**
「地盤沈下で公園に穴が開いたって」
「昼じゃなくて逆に良かったわ。子供が巻き込まれてたかもしれないし」
「地震に台風まで来るし、自然災害多すぎ」
シェラミアが怒りをぶつけた現場の公園では、地盤沈下で陥没しただけとは考えにくいほど不可解な惨状となり、立ち入り禁止となった場所に近所の人が集まって騒ぎになっていた。
「ママ、公園に大きい穴あいてる~。お姉ちゃんとお兄ちゃんいたところだ」
一人の幼児が興味を示し公園に近づこうとしたが、慌てて後ろから「ゆうちゃん」と、若い母親が止めた。
「危ないからダメよ」
「ブランコどこ行っちゃったの?」
入ろうとする子供を抱きながら、母親もなくなってしまった公園の惨状を見つめ、脳裏には執着する男の姿を思い浮かべた。
拒絶され、新しい彼女と共に自分の前から去っていった日の事を思い出しても、彼女は周囲に分かりにくい微笑みを浮かべていた彼女の背後を、深くパーカーのフードを被った背の高い何者かの姿が、サングラス越しに見つめていた。
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何かに呼ばれてふと目を覚ましたら、彼が寝言で私の名前を呼んでいた。床の上で寝たまま寒そうな彼の上に、掛け布団を持ってきてかけてやる。
また風邪引かなきゃいいけど。いつも動いた後はそのまま何も着ないで寝るんだから、風邪引くのも当たり前か。
「…シェリルちゃん…シェリル……かわあいねぇ……」
こうも夢まで見てうへへと笑ってるのも端から見ると気持ち悪い。一体夢の中で何をしてるんだ。
小さい子供と変わらないまま大人になったのかと思っていたが、お前もお前で…色々苦労があったみたいだな。
この間拾ったカードみたいなのも、心の病とやらの病院の診察券だったのか。思い返せば、たまに錠剤を飲んでて、具合悪いのか聞くと、笑って誤魔化してた時あったし。
もう少し早く話してくれてたらとも思うが、話したくない気持ちも分かる。私も、多分話せないから。
お前がそうやって、本当に私を求めてくれるなら、一緒にいたい。だが…まだじいやの言ってることも分かるんだ。
そもそもお前と一緒にいることが、時代遅れな血統主義の長老一族にバレたら、お前は…ただでは済まされないからな。最悪、マナナンガル家は取り潰されて、永遠に尊厳を失うだろう。
私は命まで取られないかもしれないけど、お前はどうなるか分からない。
だから…じいやは私の手でお前を殺したという風にしたかったんだろう。そうすれば、まだダメージが少なくて済むと思っただろうし。昨日、お前に抱かれながらそう思った。イジイジと彼の髪を指で弄びながら、無垢な寝顔を眺める。
「んむ……」
髪を少し触っただけで嬉しそうに笑って……子供にしか思えないな、彼氏というよりは。これ、言ったら怒るか?
女々しい男は好きじゃないが、何故かやっぱり、不思議なくらい気持ちが変わらない。私には無縁だったものを持って分けてくれるお前と、離れたくない。
死で分かたれる未来は…もう少し、先でいい。お前がいなくなったと思ったとき、とても…嫌だった。自分が許せなくて、私の中に押し込めたあの力も…制御が出来なくて。
情けない。
カーテンの隙間から少しずつ、光が明るくなっていくのが見える。
私の腰に腕を回して自堕落に裸で寝転がる聖也の寝顔を眺めた後、自分の部屋に行って鏡の前に座った。
「鏡よ鏡よ。我が名、シェラミアの声に応えよ、応えよ………」
__『お呼びだしありがとうございます!シェラミア・マナナンガル様。担当鏡のトゥルースでございます!御用件を受け賜ります!』
「じいやに繋いでくれ」
__『ご通話でございますね、かしこまりました!!…ただいま、お繋ぎしております……』
黒い黒曜石の鏡の中が渦巻き、その間適当な服を着て待っていると、しばらくしてじいやのしょぼんっとした顔が浮かび上がってきた。
「じいや、なんだその情けない顔は」
あまりのいじけ顔に思わず突っ込むと、目線をチラチラさせたハゲ頭がこっちを向く。
「姫、そんなに、あの男がよいのですか?じいがやり過ぎましたとはいえ、あんな駆け落ちみたいな感じで置いていかれて…じい、悲しゅうございます」
「……じいや。じいやの気持ちはわかっている。じいやが私を見放した時は一度もないと知ってる」
「シェラミア様…」
「500を過ぎても未婚である上に人間と交わってるなど、ヴラドに知られたらまずいことは分かってるけど、私……今は、あいつがいい」
何かあったときは、私があいつを守る。寿命が尽きるたった80年かそこらの間だけだ。その後は、じいやの言う通り、誰かと結婚でも何でもして子でも何でも産んでやる。
そうじいやに振り絞って伝えると、じいやは静かに私を隈だらけの目で見つめながら、答えた。
「信用なりませぬ。姫の性格上、あやつの墓にしがみついて100年は泣いて暮らすに決まっております」
「そんなに泣くわけないだろ!!馬鹿者!!」
「いえ泣きます。絶対泣きます。というより、泣く所か世界が海に沈むやも知れませぬ」
昨日の様子を見てはっきり分かりましたと淡々と言われた。このじじい…!!昨日のあれはそもそもお前がたちの悪いやり方で騙したせいだろうがっ!!
「わかっておりますぞ。姫は愛する者を失ってすぐに他の者と子作り出来るほど割り切れるタイプではございませぬ。奔放では御座いますが」
「もっと言い方というものはないのか!!別に愛してるわけじゃない!!あ、あ、あいつは……こ、子供だ!!手のかかる子供みたいなものだ!!」
「何故今になってそんな苦しい言い訳をし始めるのですか」
いい加減惚れてると認めたらどうですかと怒られるが、真っ向から事実を認めるのも恥ずかしくて、はっきりと出来ない……自分の性が憎たらしい。
「…とは言えど、じいも姫の幸せを第一に考えておりますし、何しろ…ハク殿にも釘を刺され最早手遅れと感じました。じいから一つ、提案が御座います」
「…?なんだ?」
「あの者を、吸血鬼になさいませ」
人間と純血の吸血鬼が一緒につがいとしているなど、端から見れば誰もが真っ向から反対するとんでもないこと。ならば、それを容認させる一番早い方法を、じいやは簡潔に提示してきた。
「姫が本気であの者と添い遂げたいと望むなら、いっそ吸血鬼にして婿入りさせたらよろしい。それならば、ドラクレシュティ家を始めとする長老一族もまだ穏便に収めらるやもしれません」
今や付き合いもなく連絡も離縁してから絶っているが、どうかしてると思うほど血統に拘る奴等に、人間と付き合ってるなんて事だけでもバレたら確実に聖也は生きていない。
人間から変異した吸血鬼まで忌み嫌う連中に、それも通用するかは分からないが、同胞であるならばまだマシではあるのは確かで、じいやがそう提案するのも分かる。
けど私は前から言ってるように、彼を吸血鬼になんて……したくない。
あいつには絶対無理だ。
ボケッとしてるだけが理由じゃない。
吸血鬼になれば、血以外で生きていく術がないのだ。人間との共存をはかり、牛や羊の血で生きる吸血鬼もいるにはいるが、最初に変異した頃は、どうしても血の渇望が抑えられない。
結果的に一人は絶対殺すのだ。
そのせいで、人間だけでなく下手すれば吸血鬼にも命を狙われることだってある世界。
好きなものは食べられなくなり、太陽の下を堂々と歩けない。家族や友人には先に死なれ、心臓の鼓動は冷めていくごとに情もなくなって、いずれ孤独を味わう。
………吸血鬼になった者は多く後悔する。永遠の命の代償に、生きた屍になることを。
あいつには、そんな思いをして欲しくない。普通に生きて、人間として死んでほしい。
私の心を溶かしてくれた、あの暖かい心を、失わせたくないのだ。私に向けられる気持ちも…。
「お気持ちは分かりますが、人間として死ぬまで、あの者の面倒を見るのは断固反対でございます。姫は人間にはなれませぬ。絶対に苦労しますぞ」
「……あいつには、人間でいてもらいたいんだ。吸血鬼の生活は大変なのはよく分かるだろう?そのうち、私にも飽きるかもしれないしな」
「そうは言えど、あの者が死ねば未練がましく泣き暮らされ、また婚期が遅れるよりはマシです。…姫のお力の事を、忘れてはいませんでしょうな??じいやは姫の幸せを何よりも願っていますが、それも…心配なのです」
「分かってる。でも私は、聖也の事を……見ていたいのだ。いずれ為すべき事は分かっている」
分かってるから。だからこそ悩むけど、あいつを手離すにはまだ惜しいのだ。私にはまだまだ時間がある。その気になればいつだって、子供も産めるはずだと……何も、根拠がない。
しかしじいやは私の意を汲んだのか、それとも罪滅ぼしか。最終的には、納得はいってないものの私の意思を尊重してくれた。
「仕方ありませんな。もう少しお考えくださいませ。時期が来たらまた、お尋ね致します。何度も言いますが、あの者と添うなど断固反対でございます」
「………うむ」
「くれぐれもお気をつけを」
そこで、鏡からじいやの姿は消えた。
………聖也を吸血鬼に。
それが出来たら、どんなに簡単だろう。
リビングで寝ている彼の首に噛みついて血を仮死状態になるまで吸い上げて、私の血を飲ませるだけで、簡単に彼は私の同胞になる。
寿命で死ぬことのない永遠の命を与えて…………いや、ダメだ。
そんなこと、出来ない………。
忌々しい朝の時間になり、改めて棺桶で寝ようと思ったものの、なかなか寝付けなくて、再びリビングに戻って彼の寝顔を覗く。聖也と初めて一緒のベッドに寝た日よりも前に、何度か彼の寝ているところを見た。
何度かこのまま殺してしまおうかとも考えて近づいた日があったけど、こんなまぬけで無防備な寝顔を見てるとむしろ自分が卑怯に思えて、結局眺めるだけだった。
こんな間抜けな顔でぐーぐー寝ているところを見るのも悪くない。…不思議な奴。対して強いわけでも、かっこいいわけでもないのに、一緒にいると落ち着くし。
こんな人間もいるんだと思った。
だからお前の事を、長く見てみたいと思うのかも。少しでも長く…。
「……くすぐったいな、シェリルちゃん」
はっと我に返り、いつの間にか目が開いていた彼と目があった。さっと弄ってた彼の前髪から指をしまって、そっぽを向く。
「起きたなら声ぐらいかけて」
「今、かけたよ」
体をよじって毛延びをする聖也はそのままだらしなく上半身を起こし、背中を向けた私にすり寄って寝ぼけたように体重をかけて、髪に鼻を擦り付けてきた。
「…良い匂い。今まで君は何処にいたの?」
「何処だっていいでしょ。望み通り、帰ってきてやったんだ」
「あれ~…?嫉妬してたくせに」
「シャッ!!するわけあるかっっ!!」
ムウッ~と顔を引っ付けてくる聖也に牙を見せて怒ったが、ますますこの色ボケは、離れてた間にまた重症化したせいか以前より全く効く気配がなかった。
「言っておくが、まだ許したわけじゃないからな」
「えぇ?昨日と話ちがくない??仲直りしたよねぇ?」
「誤解なのは分かった。しかし……」
背後から彼に抱かれながら、彼の耳をつまんでぎゅっと引っ張った。
「あの女と一緒に住んでた家に黙って住まわせるなんて侮辱的だ!しかも私の部屋は子供部屋か!!!!」
「いでででででっっ!!!!ご、ごめんなさい!!だ、だって、引っ越さなくても充分こっちのがスペースあるわけだったしいででっっ!!」
「ムカつく!!嘘つき!!あの女と!!同棲してた家に!!吸血鬼からしても不吉!!どうせあの女と!!同じベッドで!!寝てたくせに!!!!!」
「ごめん!!ごめんなさい!!イタっ!!いたいってばぁ~!!」
耳と同時に、左頬もぎゅっと強く引っ張った。痛がる聖也の情けなく泣く姿を、内心面白おかしく眺めてからパッと手を離した。
「次こそ帰ってやるからな」
「分かった、分かったよ。優愛の事は心配しなくて良いから、ね?」
「心配なんかしてない」
「またまた」
シェリルちゃんはいつも素直じゃないよねとニヤニヤしながらまた私にすり寄って来て、機嫌をとるように頭を撫でてきた。
「本当に、あの女に情はないのか」
「全くない。ぶっちゃけ、結婚だってしたいと思ってしようとしたわけじゃないし」
「お前って、薄情なとこあるな。そこだけは吸血鬼っぽい」
「そうかな?結果的に良かったと思ってるよ。結婚してたら、シェリルと出会った時、絶望的に後悔してたと思うもん」
えへへと笑いつつも、微妙に恐ろしいことを言う。やろうと思えば平気で浮気出来そうな所が信用ならないのだ。
「…ねぇ、シェリル。もう1年とか2年したら、引っ越そうか。その頃にはある程度お金貯まるし」
「え?」
「嫌でしょ?元カノとの為に借りた家なんて」
「嫌…ではあるが……」
「二人で暮らせるところに行こう」
人間が憧れとする都心の生活を捨てて、私がもう少し羽を伸ばせるよう、田舎の静かな環境の何処かで家を買って暮らそうと言うのだ。
若者は都会に憧れる傾向にあると言うが、聖也はどちらかと言えばそっちに属してる。こいつが普段通りの姿で、田舎で畑を耕してる姿が全く想像出来ない。
…まぁ、服装を変えたら似合いそうだが、ただ、田舎に引っ込むのはまだ早いだろうに。
「引っ越すなら都会の物件にも色々あるだろう?田舎は…虫とか出るぞ?お前の嫌いなゴキブリとか変な虫もいるぞ」
「こっちにいたらまたハンターが君の事狙ってきて危ないし、都会は何かと騒がしいから、君と安心して暮らせるようにしたいんだよ。じいやさんにもそうお願いしたんだけど……なかなか聞き入れてもらえなかったな」
まぁじいやはそうだろうな。あの石頭は、私を騙して聖也を殺すぐらいだ。
「優愛の事が片付いたら、またじいやさんと話させて。ちゃんとしてから、君と住む家を探したいから」
「話しても、無駄だと思うけど。じいやは石頭だから」
「仕方ないよ。僕は人間で、ずっとは一緒にいられないし、君に辛い思いさせちゃうってじいやさんも心配してるんだよ。その通りだと思う」
「ようやく理解したのか」
「成長した?」
エヘヘ~と無邪気に笑うところもぽやっとしている……というか、始めからわかってなきゃだめなところだろうそれは。
「わざわざ家なんか買わなくてもいいんじゃないか?こういう所でも不満はないし」
「だめ。賃貸は、僕の老後心配だし遺せないもん。家を買って、ちょっとずつローン払って完済したらちゃんと僕らのものになる。僕がいなくなっても、君が帰ってこれる場所にできるでしょ?まーまだ先の事だしどうなるかは、分かんないけどねぇ~」
「…お前って、本当に変な人間だな」
私なんかとの将来のことを考えるなら、同族との将来を考えた方が気が楽だと言うのに。会ったときから相当の変わり者だ。
初めて会った時に口説いてくるわ、人懐っこく話しかけてくるわ、血を吸われてものほほんと平気な顔をしてるわ……とにかく、色々と変だと思ってたけど、ここまでとは。
でも、何故かそれが凄く…嬉しくて、寂しい気持ちがあるのだ。お前がいなくなったら、私は…別の男と結婚して子供を作らなきゃいけないのに。
絶対言えないけど。
「んー……君がいなくてずっとハラハラしてたから疲れちゃった。もう少し寝よっと…」
「おい、今日仕事じゃないのか」
眠そうにグダグダとまた毛布を被って寝ようとする聖也にもう朝だと教えるが、私の腰にいやらしい手を回してきた。
「今日はお休みだよ。シェリルも一緒にねんねしよ?…それとも、昨日の続きしちゃう?」
「……疲れたのか疲れてないのかはっきりしろ」
呆れるほど求めてくる事に、もはやため息が出た私にエヘヘと無邪気に笑いながらとんでもない発言を発した。
「シェリルは別腹。見るだけで下半身元気になっちゃう」
「!!」
今凄く、鳥肌が立つような台詞を吐かれた。……全てが台無し。
従来の無邪気さで気持ちの悪さは何とかカバー出来てるが、それでも気持ち悪い!!
またエビの抱き枕で顔をどつく。
「やっぱり全く反省してないな!?そういう性欲に忠実過ぎるせいで、あの女の嘘にまんまと引っ掛かったって事は学習してないのか!?」
「君だって忠実じゃん。昨日だってあんなにプリプリ怒ってたのに、やるときは凄いし…」
「そういう事を言ってるんじゃない!!!!去勢しろ!!お前なんか、去勢したほうが世の中の為だ!!」
「えー?やだよ。僕はもうシェリルちゃん一筋だって」
「嫌!!来るな触るな!!バカ変態!!種まき男!!」
エビの抱き枕でバシバシ叩きながら、やっぱ帰るべきだったかもと後悔した。
じいや………やっぱこやつ、殺していい。
「シェリル痛いよ、冗談だからこっちおいで」
「全く冗談に聞こえないんだお前の場合!!」
「ごめんてぇ」
この調子で、私と彼の契約期間は一応、続行になった。
_____***
「…はぁぁ~~~~~もうバカバカバカ!!あの姫にも困ったものじゃ!!何処で育て方を間違えてしまったのじゃ!!」
「落ち込まないで、おじいさま。シェラミア様だって、ちゃんと考えておられですよ」
「考えておったら、あんな小僧と一緒になろうとは思わぬわ!バカ孫!!」
「そんな藪から棒に…」
吸血鬼姫のじいやは、鬱蒼とした気分で魔法の鏡の前で背を向ける。
魔法の鏡を持っていた褐色の肌をした一人の青年が、じいやとコウモリ姿の弟たちを慰める傍ら、その様子をビロードの椅子に腰掛けた人物が、青いアクアマリンのような瞳をぎらつかせて眺めていた。
「…シェラミアは相変わらずのようだな」
「申し訳ございませぬ。何とか、こちらに引き戻す予定だったのですが」
「仕方ないさ。あれは、
白く長い枯れ木のような指先のワイングラスの中の飲み物を揺らし、「あのような小動物程度に踊らされるなど、彼女らしくない」優雅に香りを嗅ぐ人物に、じいやと傍らに控える青年は恭しく黙って頭を下げた。
「まぁいい、こちらの意向は変わりない。叔父君にはこの件黙っておいてやろう。…その見返りの事は、分かっているな?」
「承知しておりますブルワ卿。必ずや、シェラミア様はじいが説得しますゆえ、今しばらくはお待ちを…」
「いや、折角だ。この私から、彼女と話をしよう」
「「えっ」」
男の言葉に、じいやと青年はぎょっとして顔を見合わせた。
「い、いや…それは、止めておいた方がよろしいかと」
「何故だ。私が行っては、彼女が100年ぶりの感動の再会に心踊り、貧血になるとでも?」
「その逆です」
「なればこそ、この私が、直々に顔を見せてやらねばな!フハハハハハッ!!!!」
「あ、駄目じゃ聞いとらん」
「おじいさま…今会わせたらまずいんじゃないんですか?今度こそ世界終わりますよ」
「うむ………」
高笑いする男の傍ら、コウモリたちは呆然とその様子を眺めるしかなかった。
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