第16.5話 立ち切った過去
____***
「………」
「さて、転移の準備が整いましたぞシェラミア様。じいと共に、帰りましょう」
煩いコウモリの声とじいやの声が聞こえる。500年、ずっと変わらない。500年もずっと、聞き続けて飽きた。
ぼやけた視界の中で、じいやの手が差し伸べられた。
帰らなきゃ……。彼がいない人間の世界にいたって仕方ない…。でも、これは夢。だから、帰ってもいい。
「どうかお気を確かにお持ちください。シェラミア様、貴方様は分かっているはずです。あの者とはどのみち、一緒にいることは出来ないのです」
「……聖也……私の下僕は…何処に…何処に…」
「あの男はもう、いないのですぞ」
__『私が、殺した』
嫌。
嫌だ。
違う。
私じゃない。
__『殺したくせに』
彼を殺す気なんてなかった。
殺したくなかった。
でも私を
彼はうざがってたの。
ただの道具にしか思ってなかった。
どれだけ生意気な事をしても
許してくれてた彼の本心。
可愛くなかった私。
知ってた。
本気で愛してなかった事ぐらい。
___『人間とは一緒にいられない』
_____『お前は、エウメニデスの娘』
快楽と欲望を満たす、
それが私。
私はいつか、彼を殺してた。
人間と分かり合う事など出来ない。
吸血鬼の王族の血。
「シェラミア様!しっかりなさいませ!」
気を失いかけてじいやに持たれかかる。
残った理性と感覚だけがそれを分からせてくれる。
じいやと周りのコウモリ達に助けてもらいながらなんとか立て直す。
そして、新幹線が使えず、急遽じいやが壁に描いた転移用の古代の陣と鏡が光り、家へ続く門となった。
雷の音、雨の激しさ。私の心の内を示すように、激しくなっていく。
ふと目に映ったのは、彼がくれた最後の金星のネックレス。突き返す暇もなく、自分の首にずっと下がっていた。
美と愛の象徴。
私には似合わない。私は、人間を殺すことになんの躊躇もなかった。お前と出会うまでは、殺人鬼だろうが吸血鬼だろうが何でも構わなかったのに。今は……憎い。
お前を感じられるのは、今やこれだけしか残ってない。
あぁ、どうして。
私はここまで怪物になれたんだろう。
これは悪い夢、きっと、悪い夢なのだ……。
それか、お前を忘れられる日はいつか、来るのだろうか。
「行きましょう姫。これからも、じいやは姫にお仕え致しますゆえ。心配ございません」
たとえ、私が正気を失ったとしても。それがじいの責任であり役目であると、そう呟いて、しわしわの手で私を引いて……。
『行かないで、お願い』
彼はきっとそう言うだろう。
でももう、貴方はいない。
いない。
ない。
______「シェリルーーーー!!!!!!!」
……?
彼の声が鼓膜に響き渡った。
色のない世界、雷と雨の混沌とした音の世界の中で、もういないはずの彼の声が聞こえる。
「待って!!行かないで!!」
「シェラミアさん!!」
「んなっ!?何故ここが分かったのじゃ!?」
じいやの足が止まった。世界がゆっくりと静止する。
どうなっているのかも分からず、ぼんやりした意識の中で立ち尽くしていると、後ろから抱き締められた。
覚えのある腕時計と服、暖かい体温と締め付ける力加減。
…………まさか…………あぁ……そんな事が……。
「シェリル…僕だよ。分かる?」
「聖……也……?」
冷たい頬を包むように触れる彼の手。私を見る優しい目と、安心出来る微笑みも……あぁ。
彼がいる。
私の、愛しい下僕。
「本当に…聖也か?何で生きてるの……?」
「何でって、僕はちゃんと生きてるよ!」
もう会えないと思ってた彼がいて、このほのかな体温でいつも寄り添ってくれた彼が、大丈夫かと私の顔を覗いて来る。
雷の音が徐々に聞こえなくなって、雨の音だけになった。
「…お前のせいで、物凄く嫌な夢を見た」
「嫌な思いさせてごめんね。もう怖くないよ、僕がいる」
「………バカ…………」
ぎゅうっと力強く抱き締められて、私は彼の胸をボンボン殴りながら身を寄せた。やっぱり、これは悪い夢だった。
「聖也……バカ聖也……」
「ここにいるよ、ここにいる…」
聖也生きてた……良かった。
でも、何故?あの時確かに…。
「ハクどの!これはどういうことですかの!?」
ハク…?ハクがいるのか?
聖也に抱き締められながらじいや達の方に顔を向けると、バーにいたときとは違い、神々しい白い衣装のハクが、じいやの前に立っていた。
「おじいさま。いくらなんでも、あのような形でシェラミアさんを騙して連れて帰ろうとするなんてよくありません。シェラミアさんの心を乱せば、体の中の力に影響が強く出ることも分かっていたはずですよ!」
「ハクどの!!これはマナナンガル家の問題なのですぞ、口出しは無用にございます!!」
「…騙した…?なんの事だ?」
「あ、いえ、それはその」
…………じいや。その戸惑いようは何かやった事ぐらいバレバレだ。
「じいや………正直に申さぬとそこにいた犬に食わせるぞ!!何をやった!?」
「シェラミアさんに説明出来ないようであれば、私から説明致しますが」
「わ…………分かりました………白状致しますゆえ、どうか、孫たちだけは見逃してやってくだされ…」
孫?孫だと?…じいやのところの四兄妹コウモリの事か。孫まで使って何をやったと言うのか。
「えぇっと…実は……」
蛇と私に睨まれて渋々白状したじいやの話を聞き、あの公園で見た聖也と白田優愛が…孫二人が変化して見せた茶番だった事が発覚する。
しかも、私を迎えに来る前に、手間暇かけて聖也の身辺調査を行い、白田のことに行き着いたのを利用し、私と聖也を別れさせようとしてたのだと!?
「貴様!!たちの悪い悪戯を仕掛けただけでなく、よくも私に聖也を始末させるような手を!!!!あの白田とその子供と鉢合わせたのもお前達のしわざか!!!!」
「違いまする!!あの母子は我らに関係なくモノホンでござりまする!!本当の所シェラミア様に、眞藤聖也の過去の女性関係を暴露して諦めさせるつもりでございましたが……まさか、向こうから接触するとは思わなかったもので」
でも結果的に聖也から自滅してくれたのでこのまま連れて帰れるかと思っていたが、ハクやベルカ達の後押しのせいで、また寄りが戻りそうになった為に急遽、あんな形を取ったとか。
……気まずそうにじいやの肩に乗ってる二羽のコウモリを見た。
「ほう………ではあの時。偽物の聖也は、私の事を、"我が儘で、意地っ張りで、すぐに威張る八重歯出っ歯な女"…と言っていたが??」
「え!?………い、いや………言ってないで…ござる………多分それは、
「!?兄のせいです!?僕はそんなの一言も書いてないですよ!!!!第一、シェラミア様の牙がちょっと出っ張ってるの気にしてたのはお前なのです!!」
「
「お前こそシェラミア様は男の趣味が悪いって酷評してたです!絶対前の彼氏がよかったのに、なんでこんなハナタレを選んだんだって陰で笑ってたのです!!」
この煩い言い合いに、聖也はなんだかショックを受けてるが、このバカコウモリどもの考えてることが、よーーーーーく分かった。
「ハク、こやつら食べていいぞ」
「い、いえ。食べません…何故私なのですか?」
「へびはコウモリも食べるんだろう?」
「そんなっ!!せめてこの老骨だけに!!この無礼なバカ孫どもだけはお許しを!!」
「いえ、だから食べませんって。何故皆さん、私が何もかも食べると思うんでしょう…」
元のでかい白蛇の姿を見れば誰だってそう思うだろうと言いたい所だったが止めた。
「…ハク。何故聖也を私の元に連れてきた?」
率直な疑問を代わりに問い掛ける。今や神の遣いとなり仙女となった蛇の妖怪。元は私と同じような立場でも、対極の存在。
昨日久しぶりにあったばかりで、聖也のこともよく知らなかっただろうお前が、何故関わってきたのか。
ハクは私の質問に微笑みかけて静かに答えた。
「言ったでしょう?シェラミアさんと彼氏さんが出会い結ばれたのは、何かの縁です。同じ人間と一緒になった身として、その縁を簡単に諦めて欲しくなかったので」
あのシェラミアさんが、ここまで惚れ込んで悲しんでらっしゃるのに放っておけませんしね。と。相変わらず…お人好しというか、物好きなやつだ。
「それに、私この方好きです。うちの旦那様と同じで、優しくて、善良な魂と…不思議な魅力をお持ちですよ」
「それどういう意味だ」
「やだ、私は旦那様一筋ですよ」
ハクと私が話していると、聖也が横からやって来て私の手を掴んだ。ハッと顔を上げて彼を見ると、彼はいつものように私を見て微笑んでいた。
「ハクさん、ありがとう」
「いえ。どうか、頑張ってくださいね」
「じいやさん」
彼は私の手をぐっと離そうとしない力をかけて掴みながら、言い争う孫のコウモリを手で止めているじいやの方に向き直った。そして、そのまま頭を深く下げて言った。
「シェラミアを連れて帰ります。色々と、すみません」
「なっ……いや、連れて帰りますって、こっちの台詞…」
「行こう、シェリル」
一言謝って、戸惑ったじいやの前から私を連れて走り出した。
風も収まり、小雨の音になった外に向かって。彼と行こう。不安は消えないけど、まだ聖也を………信じたかったから。
____***
彼女を連れて飛び出してきた。見つかって良かった。家にまで帰られたら、結界があるからハクさんでも無闇に近寄れなかったらしいから、本当にギリギリで。
僕が死んでしまったと思い込んでた彼女は、生気のない虚ろな表情で、生きていると分かった瞬間、いつになく僕を求めてきて、目には涙が滲んでいて…………悲しんでくれてたんだと思う、怖かったんだと思う。
その証拠に、君はずっと僕の体に寄り添って、手を離そうとしなかった。二人して雨に濡れながら帰って、服を着替えて髪を拭く間も、彼女は手早く着替えを済ませるとすぐに僕の元に来た。
「髪まだ濡れてるよ」
「…拭いて」
「いいよ」
濡れた髪を拭いてほしいとせがんできて、望み通りしまってたタオルを取り出して彼女の髪を拭いた。気持ち良さそうに僕に身を預けて、二人きりの夜の時のように、甘えてくる素振りも見せた。
「…本当にお前なんだな。ゾンビじゃないな?」
「そんなわけないじゃん」
「…私、うざいか?目障りか?」
「は?なんでそんなこと言うの?思ったことないよ。誰が言ったの?」
「お前」
偽物だって知ってるのに、ぷくっと膨れて顔をそらす仕草が本当に可愛くて思わず笑った。
「うざいって言ったから殺したの?」
「違う……………あの女の方が好きって言ったから」
…くぅぅぅ………理由まで可愛い。こんな殺したくなるほど嫉妬してくれるようなシェリルになら、殺されても文句言わない。シェリル以外を好きになるなんてあり得ないから。特に…白田優愛の事は。
髪を拭いていた手を止めて、彼女の首にかける。彼女の綺麗な目を覗きながら、既に決心していた事を告げる。
「話すよ。優愛との事を…。聞いてほしい」
そう告げると、彼女はもう怒って逃げ出すことはしなかった。じっと、僕の言葉を待っていてくれた。
そう…何処から話そう。でもいっそ、全てから話した方がいい。
「白田優愛とは、高校の時に知り合った。高2の時にクラスが一緒になって好きになったんだけどその時は別の子と付き合ってたから、卒業する時に別れて、僕から告白して付き合った」
「……ちゃらんぽらん」
ようやく僕が彼女の元彼の話聞く気持ちが分かったのか、あからさまに嫌そうな顔になった。
「専門学校がたまたま一緒でさ、僕はヘアスタイリストで彼女はデザイン学科、小柄だけど可愛いからモデルの仕事もしてた。それで…半年ぐらいは付き合ったかな。理由があって一回別れた」
「他の女が好きになったから?」
「前だったらそうだったかもね。でも違う。優愛は家庭が複雑だったのもあって結構……扱いが難しかった。それで疲れて」
一度は冷却期間として別れたけど、その後3ヶ月ぐらいして仲を戻した。けど優愛の難しいところは日に日にエスカレートしていた。
最初はメールとか電話をすぐ返さなかったり、不意に情緒不安定になって怒ったり泣いたりするぐらいだった。それだけならまだ耐えられた。
でも、だんだんと束縛が酷くなって休みの日はまだしもバイトに行くのも友達と遊びに行くのも許さなかったり、僕と少し話をしただけの女の子を見た瞬間、髪の毛を引っ付かんで喧嘩し始めた事もあった。
それで何度も別れたりくっついたりを繰り返してた事を言う。
そのうちに、優愛に対しての愛情も薄れて。僕はもう彼女の事がどうでもいいと思うようになって、他の女の子と付き合ったりしたこともあった。
でも、全部うまくはいかなくて、フラれて、結局優愛のところに戻ることが常だった。
優愛のやることに影響されて、僕まで病んでたんだと思う。心配してきた周りの友達や悠斗は別れた方がいいと進めて来るようになり、優愛の方は僕に依存してたものの、きっぱりと別れた。
それから何週間後に、彼女から妊娠したと言われた。
喜ぶ事が出来なかった。ただでさえ国家試験が迫ってた時期で、もう縁を切ったと思っていたのにこれだ。
子供をおろせとも言えなかった。出来た子供に何も罪はないし、僕の責任でもあったわけだから。
納得は出来なかった。これからの人生、もう愛せない人と一緒に暮らして子供を育てるしかないのかと思うと、死んでしまいたいと思った。
それでも…。
僕はその道を選んだ。
自分のやった事には、責任取らなきゃいけないって。彼女も、家庭をもって子供がいれば変わってくれるかも知れないと淡い期待も抱いた。…なんて。
卒業したら結婚することにして、優愛は学校を辞めて、両親や親戚に報告とか謝りに回ったり、色々と大変な思いをしながら、今のマンションの部屋も借りて、一緒に暮らした。
「やっぱり一緒に住んでたのか。ムカつく」
「ほっぺつねるのは全部話してからにしてほしいかなぁ…?」
「今つねりたいからつねってる」
ムッとした表情でシェリルに、シェリルの部屋は子供部屋にするつもりだったよと言うとますます力が入る。いてて、まぁ当然だよね…。
「どうしてここを引っ越さなかった?賃料結構するんだろう?」
「まぁ、その辺はぶっちゃけうちの親のコネで家賃安くしてもらってて…なんか、簡単に引っ越すのも勿体ないし悪い気がしてさぁ」
「甘ったれめ!甘ったれ!!」
「痛い痛い!!肉千切れちゃうよ!……んで、問題はここからだった」
一緒に暮らして、だいたい…4ヵ月ぐらい。優愛のお腹が大きくなり始めた頃に、彼女の浮気が発覚した。
情報は簡単に学校の友達から入ってきた。相手は、高校の時に優愛が僕の前に付き合ってた先輩で、当時大学生だった。
しかも、僕が最後に別れを切り出す前からもちょこちょこ会っていたと、相手の男から直接聞いたと聞いて、そこで疑念が生まれた。
というよりは、結構初めからあった疑問。国家試験を控えてからは、優愛とは全くしてなかった。本当に数えられるぐらいしか。
妊娠を告げられた時、もしかしてあの時かと思った覚えはあったけど、避妊はちゃんとしてたし、失敗してたんだとしても、お腹の大きさとその時の受精期間が何だか一致してないような気もした。
まさかと思い、悠斗や他の友達と一緒に調べた結果、別れる直前までその男と頻繁に会ってた事実や、僕と付き合ってた女の子へ嫌がらせして別れされてた事も発覚した。
お腹の子供が、あの男の子供でもあることも、男から直接聞いた。
吐き気がした、色んな意味で。
どうしてそこまでして、彼女が僕を繋ぎ止めようとしたのか、男も男で、自分の子供なのにみすみすと優愛の行為を黙認していた事にも。
あの時は…大変な騒ぎになった。
妊娠も結局4ヵ月所か7ヵ月だったし、両家や友達、浮気してた男や男の家族まで巻き込んで、こんな修羅場を自分が経験するなんて思わなかった。
国家試験、マジで落ちるかと思ったぐらいだった。
「その後、相手と男の家族には土下座されて慰謝料貰ってすぐ別れたんだ。優愛は最後までごねてたけど…赤ちゃんが生まれてからDNA鑑定して、ちゃんと僕の子じゃないって分かってからは、あの男と一緒に暮らすことになったって聞いた。…結局、ワケわかんないんだよね」
「お前とは違う意味で頭おかしいな」
「そんな、感じ。こんなことがあって、僕もちょっとやられちゃってさ。精神科通って薬のんでた。下積み期間でもあったから余計辛かったけど…周りに支えてくれる人がいっぱいいたからやって来れた。…それでもやっぱ辛くて、一回、本気で死のうかと思った。山とか…そういうとこでさ」
「…!まさかお前…」
彼女は察したように目を見開いたから、僕は頷いた。
「……怒る?」
「……」
黙っちゃった。そうだよね、答えにくいよね。
「…でもさ、その時に運命の人と出会えたから、死にに行くのも悪くないって思った」
「うんっ…!?誰が!!」
「髪が栗色で、唇は赤くて、瞳はピンク色。美人で気が強くて意地っ張りで、スタイル抜群な、吸血鬼のおねーさん」
君のことだよ。
そっと冷たい頬を包んであげて、恥ずかしそうでも、何処か嬉しそうにしている君に告げた。
「…本当に殺してくれても良かった。今だってそう。まだ殺したりないなら、殺してもいい。でも、これだけは言いたい。今まで出会ってきた誰よりも、君が好き。君以外には考えられないし、優愛の元に戻る気もない。愛してる」
そう、死ぬ前に君を一目見てから。
ずっと好きだ。
彼女の冷たい両手を握り、もう一度、君に伝える。
「信じて…欲しい。好きだ、愛してる」
「………」
ほんのり赤くなった顔でうつむく彼女。ぎゅっと優しく握り返してくれた手、僕を見上げて、顔を近づけてきた。
「…お前を死なせはしない…飽きるまでこきつかってやる。私を……こんな気持ちに、させたのだから…死なせるだけじゃ気が済まないからな」
いつもむすっとしていた顔がとろんと溶けて、君はぎゅっと僕を抱き締めて、肩に顔をのせて僕を見上げた。
「話…聞いてやらなくて、ごめん」
初めて君から謝罪の言葉を囁かれた。許してほしいと、逆に君からねだるように。
「いいよ。誤解解けて良かった」
「ん…」
チュッと重なるキスをした後、本当にお前の子供じゃないのだな?ともう一度確認してくる。鑑定結果の書類あるから見せようかと言うと、後でいいと身を寄せながら首を振った。
「…次に誰かを、私より慕ったら殺してやる。確実に、絶対」
「好きにならないってば。君しか眼中にないし、これからもずっと…僕が死んでも、生まれ変わってまた君に会いに行きたい」
「こ、根拠のないことをつらつらと…」
「だから君も、他の男を好きにならないでね。可愛い人、好きだ。おいで」
彼女を引き寄せて、何度も何度も甘いキスを繰り返し、指が強く絡み合うほどソファーの上で愛し合う。
互いの爪痕が体に残るぐらいに強く、愛をぶつける。
僅かに残っていた希望も愛も奪われて、心が死んでいた日々に、彩りを戻してくれた君。
いつも帰りを待っていて、ぶっきらぼうで意地っ張りでも、いつも僕の世話を焼いてくれて、笑うととても可愛い。
君がいるだけで、どれだけ救われたと思う?
「ねぇシェリル…いつか、結婚してくれる?」
「ふぁ!?こ、こんなときに、何を言って…」
キスマークを沢山つけて、互いの肉体が快楽に溺れている最中に君を見下ろして呟いた言葉に君は動揺する。
「子供いらないならいいから。ずっと一緒にいるなら、結婚はしてほしいかな?」
「こ、子供いらないって本気…?」
「ぶっちゃけ欲しいけど。君が欲しくないなら、別にいいよ」
「……今、返事しなきゃ、ダメか…?」
あぁ……快楽に揺さぶられながら恥じらう君も最高。これだから、手放したくないんだ。
「大丈夫。またプロポーズするから」
君がその気になってくれるまで。…いや、その気にさせた方が早い。次の契約日終了までに、必ず。
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