第4.5話 好きって言いなよ!!
____
「大丈夫………?まさかあんなに弱いと思わなかったから」
弱いんじゃなくて、強すぎたんだと反論したくとも気持ちが悪くてそれもできない。医務室行きは許してもらえたものの、ちょっとした弾みに吸血鬼とバレては困る。辞退してベンチで休ませてもらっていた。
「横になりたいなら膝貸すよ」
「い……いい!平気だから」
「恥ずかしがらなくたっていいんだよ。ほら」
「いいと言ってるだろ!!何度も言わせるな!!」
隣に座った聖也が膝に引き寄せようと肩に手が回ってきて、咄嗟に無意識に払ってしまった。ある種の後ろめたさなのか、よく、分からない。
パシッと払った音がして、ハッとして聖也の顔を見る。聖也は驚いた顔をした後、自分が予想していた通りの表情に静かに変わっていった。
「……シェリル、やっぱ、僕の事好きになれなかったかな」
ほわっと白い息と一緒に彼の口からポツリと漏らされた突然の言葉。今まで私の気持ちを探るようなことを言ってこなかった聖也が、ふいに口にする。
「な、何を言い出す」
「あんまり僕といても楽しくなさそうだし。慣れない場所に引っ張り出してきてまで付き合ってほしいって言ったのは僕だから、ずっと、迷惑だったのかなって思っててさ」
「別にそう言うわけじゃ…」
迷惑なんかじゃない。
言おうとした口が開けたまま閉じていく。ここで、「そろそろ解放してもらいたい」と言えば、別れることは確実に出来る。…………でも、困ったような悲しいような表情の聖也に、そんな口を叩けるほどの度胸も、感情もないことに、気づかされた。
「別にいいよ。僕のわがままで付き合って貰ってるのは分かってるから。嫌だったら、ちゃんと言ってくれていい」
「…だから………そんなことはなくてだな……」
何を戸惑ってるんだ私!!こいつにこんなされたところで何とも思ったことなんかないのに、何を……今さら!!
たった一年で、こんな…人間の男一人に
餌に情など持つな、伴侶に愛など持つな。
名門で冷酷な、純血吸血鬼一族に生まれた者はそう言い聞かされて育つ。
長き年月に渡ればいずれ冷めるものに、価値を見いだす必要はないと、教えられる。
「強要する気はないよ。君が嫌だと思うことはしない。でも、言って貰わないと分からない。そんな頭良くないからさ」
私もその訓練を受けてきたはずだった。吸血鬼特有の冷めきった鉄の心。それは子孫を産むための伴侶に対しても変わりはない。
「…どうして」
声が抑えられそうになかった。吸血鬼として生きていくことに飽きていたせいなのか、誰との接触を避けてきたせいなのか、たった一年で芽生えてしまった情に絆されてしまった事への、情けなさなのか。
どうして彼はそんな目で、私を見るのか。
吸血鬼には向けられることのない、慈悲の目を。
「……トイレへ行ってくる。待ってて」
彼の目から逃れるようにトイレへ立った。
____**
トイレへ行くと言う彼女の背中を呼び止められなかった。
最初の頃より打ち解けられたかと思っていたけど、これ以上のスキンシップさえ拒否されてると思うとなんだか悲しくなる。
君の考えてることが分からない。物事ははっきりとしているのに、何処か曖昧なところがある。例えば、今みたいに。
好きでもない人からの告白だけでもただの迷惑なのに、思えばよく同棲までしてくれたものだと思う。
あの感じだと……やっぱシェリルは、僕に対してただの、血の供給源兼同居人って感じだったな。
薄々分かってはいたものの、ショック。
それでも、彼女を手放したいと思わない。こんなにも手放したくないと思った人は初めてだ。
ムカムカして一人ベンチの上で頭をかきむしる。僕と歩いているときの彼女を、色んな男達が見ていたのは知ってる。気づかないふりをしてた。本当は、彼女を見るなと食ってかかりたかったぐらい。
彼女は誰から見ても魅惑的な容姿で、それが餌を誘き寄せるための習性のようなものだったとしても、彼女を初めてみたときの電流が走ったような感覚は忘れられない。
____『何処が好きなの?』
気恥ずかしくて一番最初に目がいった胸と答えてしまったけど、いや、確かに胸は含んでる。けど、僕が彼女の何処が好きかと言えば、存在全てが好きだと言える。
吸血鬼としての彼女も……。煌々と輝く薄紅色の瞳も、青白く血管の浮いた肌も、吸血のときに生える立派な牙も………全てが好きだ。
彼女に別れを告げられたら……僕はもういっそ君に殺されたい。君に全ての血液も命もあげたい。だって離れたくないんだ。
君になら………。
そう伝えられたらどれほどいいか。君に伝えられたら……。
「そこの君、ちょっとお聞きしたいのだが」
「……え?」
ベンチに座って頭を抱えていた僕にわざわざ声をかけてきた男の声が聞こえて、顔をあげた。そこにいたのは、金髪で高そうなスーツを着た、外国人だった。
観光客にしては服装がちょっとフォーマル過ぎる。このテーマパークの関係者とも思えるけど……僕になんの用なんだろう。
「失礼、道に迷ってしまって。新エリアのインドエリアへ行きたいのですが、よろしければ道案内を、頼めるだろうか?」
「あ、あーインドエリアですか?」
「このパンダランドは意外にも広くてね。地図を見てもよく分からない」
肌の血色が悪く、何処か具合の悪そうにも思える男性。顔をあげたときちょっとビックリしたぐらいハンサムな人なのに、連れて歩いている人が誰もいない。
インドエリアのマジックショーがあるレストランに行くんだと言ってるけど、これだけ身なりもいい人が、スマホのアプリも利用しないで人にわざわざ道案内を頼むのは、なんだか違和感がある。
ベンチから立ち上がって、スマホの画面を見せながら道順を教えようとしても、実際に来てくれないと分からないと言われて、道案内を頼んでくる。
パークキャストなら、この先の大通りに探せばいるはずなのに。
「申し訳ないんですけど、僕彼女を待ってて一緒にはいけないんです。近くにキャストさんがいると思うので、その人たちに案内してもらった方が、確実ですよ!」
「そうです…か。それは、残念だ」
男は残念だと言いつつ、僕の方を向いた。
輝かしくギラギラとした緑色の瞳が、僕を捕らえ、体が動かなくなった。
「あー……喉が渇く…」
おかしい、本当に体が……動かない……!?
その瞳を中心に、世界がぐるりぐるりと回って……まずい……やっぱ…この人なんかっ………。
「甘い極上の血の匂いを漂わせた人間を、ようやく見つけたというのに」
その男の不適な笑みを最後に、僕の意識は閉ざされた。
____***
あいつはまるで太陽だ。
疎ましく、光を浴びたらすぐに灰になってしまう致命的な弱点。
吸血鬼の私には、一生浴びることの許されない光。子供の頃、なんとなくあの眩しくも暖かな太陽の光というものに憧れて、母とじいの目を盗んではうっかり浴びてしまわないように、日の出を盗み見ていたことも、あったかな。
たとえ恋い焦がれても、絶対に受け入れられはしない。そんな太陽と同じ……絶対に交わらない。交われない。
分かってたはずだった。
それなのに、まさか、私まで本気になるなんて。
「…そんなの、じゃない。私は、あいつの事なんか好きじゃない」
この感情は、ただの情だ。一緒に暮らしていれば、たとえネズミ相手でも情が出てくるというもの!
けして、恋い焦がれてなんかない……なのに、何故なの?どうして、あいつの悲しむ顔を見ると、どうして別れようと思うと………凄く、嫌なの??
「……聖也………」
忌々しい、彼。
私の、太陽。
最初はただの、冬を越すには丁度いい食事としか思ってなかった。飼い殺して、冬が明けるまで血を啜った後は、いつも通り墓地に埋めたらいい。
付き合うことになったあの夜も、ただの暇潰しのつもりで、人の世界を見に行ってみようと思っただけ。
50年前よりもはるかに文明が進歩した人間の暮らす国で、あいつからは色々教わったし、スマホもパソコンも全部買って貰った。あいつは毎日のように仕事に行く前に私に触れる、帰ってきても同じ、熱すぎるくらいの体温を感じなかった日はない。
日々耳が酸っぱくなるほど「好きだよ」「愛してる」「今日も可愛い」という言葉を聞かされて、永遠と長引きそうなどうでもいい話に相づちを打つ日々。
吸血のときは自分から進んで首筋を差し出す。いつだって致死量に至るほど飲み尽くす事だって私には出来たのに、密着する私の肌を慈しむようにぎゅっと抱き留めていた細腕。
毎日一緒に生活する上で、一緒に過ごす時間は限られていたが………退屈しなかった。
いつの間にか、この生活が終わった後の事を、考えなくなってた。
なんとなく、あいつが飽きるか死ぬときまでずっとこのままだと……。
私、やっぱりあいつの事が………..。
____『シェラミア。貴方は、母と同じ過ちを犯さないでちょうだい。愛してるわ』
お母様の最期の言葉。
絶対に私は、あんな最期は遂げないと、誓った。人間を信じてはいけない、所詮愛など、永遠ではないのだと。
最初から死んでいる呪われた者として、氷の心を持ち、純血の血を絶えさせないように結婚し、子どもを産む。そこに愛はない。ただ私は、最後のマナナンガル家の吸血鬼として、子どもを産むためだけに結婚する。母も、そうだったように。
…………でも、何回戒めとして思い出しても。私の中で、聖也と別れるという選択肢が、出てこないの。
お母様、私も、お母様のように……なるのかしら。私も彼の事が、頭から離れなくなってるの。
「っ………もういい!!」
これが禁忌だと分かっていても。
バンッとトイレの個室の扉を開き、飛び出して聖也の所へ走った。
私の望みは一つ。ようやく、分かった。分かってしまった。
女子トイレにいた人間の視線を潜り抜け、彼の待つベンチに真っ先に戻った。
トイレに籠ってからまだそんなに時間は経っていないはずだった。
「聖也…?」
さっきお前が言ったことは全て誤解だと言いたくて、急いでベンチへと戻った。
だけど、そこにいるはずのあいつの姿がない。
「聖也!」
辺りを見渡して、別のベンチに座っていないかどうかも探したが、いない。
そんな………あいつが黙って帰るはずがない。スマホを取り出し、ラインの履歴をチェックしてみたが、なんのメッセージもない。今何処にいる?とメッセージを打っても、既読が付かない。電話もかけても同じだった。
おかしい。5分も経てばすぐにスマホを片手に持つというのに、私からの電話にもメッセージにも出ないのは、変だ。
………本当に、何処へ?
このままさよならはあり得ない。家に帰ればどうせ顔を合わせるし、何よりあいつが私を置き去りにするような真似なんか……。
スマホのライン画面を見ながら、再びベンチに座った時だった。
微かに鼻を掠めた残り香に、違和感を覚える。
あいつの使っている香水の匂いと一緒に、潮辛いのある海の匂いと、甘ったるくしつこい香水の匂い、その中に隠れて染み付いている………血の香りを。
敏感な吸血鬼の鼻を刺激した、同族の匂いと、海の匂いが染み付いた残り香から、海に近い場所に長く居着いた人物だと分かる。
______イタリア人。これは、地中海沿い特有の香りだ。この甘ったるい匂いも、あの国の名産品であるチーズとはちみつを混ぜて作られた男物の香水であるということからも明白だった。
「バウダー………ロサンチーノ………!!!!!!」
ここで何があったのか、容易に推理が出来た。私はベンチから立ち上がる。
奴が私の匂いを感知した上での行動なのかは知らないが、関係ない。あまりにも無礼極まりない事であるのは変わらないのだから。
____***
____血生臭い匂いと、微かに聞こえる喧騒に目が覚めた。
ベンチで道を聞かれてからの記憶が飛んでいる。そして、ここがどこなのかも分からない。鼻には嗅ぎなれない血生臭い臭いと何処かから漂ってくるスパイスの匂いが刺激してくる。
僕の目の前は、黄土色の土で出来た真新しい殺風景な場所で、人気もなく少し暗い場所。ステンドグラスがはめ込まれた外からは、人の声と周りの街頭の光が差し込んでいる。
何処……なんだ?
「気がついたか?」
薄暗い中に誰かが立っているのに気づいた。僕に話しかけてきたその人は、まさにベンチで最後に見た人物。
高そうなスーツに、オールバックにした金髪と青白く血管が見える肌、ギラギラと光る瞳、魅力的な端正な顔立ちの外国人………あぁ、どうしてもっと早く気付かなかったんだろう。
この妖しげな雰囲気は彼女を思わせる。この人、吸血鬼……だったのか。
立ち上がろうとしたけど、何故か体が硬直して動かない。手足に何もついていないのに。
「動こうとしても無駄だ。君の体は私の能力によって封じられている。逃げる事もできない」
あぁ……そうか。あの眼に見られた瞬間、体が動かなくなった。吸血鬼にはそれぞれ特殊な能力を持つ吸血鬼がいるとシェラミアは言ってた。
5人に1人の割合だから、人間から吸血鬼になった場合はそんな能力がない場合もあるけど、純血種はほとんど皆持ってるらしい。シェラミアの場合、物を操ったり透視したり、念写の能力を持つサイコキネシスを持ってる。
この人も、そうだというんだろう。
「君は今困惑していると思うが、教えるつもりはない。そこの食糧と同じく、私に殺されるのだから」
不敵な笑みを浮かべ、チラッと僕の横の方に目線を向けた。
顔だけは自由が効いた為に、見たくもないけど、彼の見る横の方へと顔を向けて、その場所を見た。
「っ…!!」
「すまんな、あまり片付けが行き届いていない」
吐きそうになったのは言うまでもなく、見なきゃよかったと後悔した。
僕のすぐ側には、乱雑に処理された血まみれの麻布袋が、中身が見えるのも入れて五体ぐらい、隅の方に集められるように重なっていた。
「大型テーマパークの都市伝説で共通してるのは、入った人数と出る人数とか一致していない……と言うこと。昔からある。美術館でも博物館でも同じだ」
何故だか分かるか?と、僕にのらりくらりと近寄って、弄ぶかのように長い爪を首筋に押し立てて来た。"こういう事だ"と。
「お前は、美味しそうな血の匂いを漂わせているな……若い生娘にも似た新鮮で、我らを惑わせる香ばしい匂いだ」
「初めて……言われたよ。そんなの」
お前なんか怖くない。と、僕は出来るだけ強く睨み付けた。
僕の口から押し出した言葉に、男はフフフッと牙をチラッと見せつけた。
「吸血鬼を前にして、恐れを感じないのか。…いや、震えているな?子犬め」
バレていたけど、僕は睨むのを止めない。
ここで怯んではいけない。どうせ死ぬとしても、泣き叫んで死んだら、彼女に情けないと余計に嫌われてしまう。
少しでも抵抗したと言うことを彼女が知ったら、少しは見直してくれると思うから。
「男にしては珍しい血種だ。よく私の慢性的な鼻炎にも通用しない匂いを晒しておいて、狙われなかったものだ。お前をワインにして父の元に持ち帰れば…勘当も取り消してくれることだろう」
「何の話か知らないけど、僕を殺さない方がいい」
「Pregare Dio《神に祈れ》」
男の形相が、吸血鬼としてのおぞましい造形に変化し、牙が四本生え揃った。そして僕の首筋にガッ!!と突き立てられる。
脳裏に浮かんだのは、自分の死でも痛みでもなく、彼女の…シェリルの顔。
その時だった。
______「ロサンチーノッッッ!!!!!!!!」
怒号と共に、すぐ側にあったステンドグラスが粉々に砕け散り、僕に噛みついた男を、高速で何かが横切って突き飛ばした。
その瞬間、僕の体はみるみる軽くなり、自由になった。
ステンドグラスの破片が散らばる中、男が突き飛ばされた方を見ると、部屋の隅で激しく唸る何かに揉みくちゃにされ、争っていた。
「我がシェラミア・マナナンガルの所有物に、何をするっっっ!!!!」
「シェ………シェリル?」
抵抗する男を一方的にひっぱたいている正体が、可愛い僕の彼女であることにすぐ気づいた。
華奢な体で、見た目は凄く非力だけど、僕よりも遥かに力が強い彼女は、同じ吸血鬼の男を圧倒するほど、もう一方的に殴る蹴るを容赦なく繰り返す。
男も抵抗はしているものの、激昂した彼女の力には当然、及ばなかった。
「マ、マナナンガルだと…!?どうしてマナナンガル家のご令嬢がここに!!」
「誰が貴様程度の者に教えるか!!私の男に手を出すとなれば、相応の覚悟を持っての事であろうな!!!!?」
牙をむき出し、血管が浮き出るほどに激昂した彼女は、ズバッと男に言い放った。
……あれ?シェリル、今、「私の男」って言った?
シェリルの事を知り、僕が彼女の所有物であるということを知った男は、何故か態度を一転して異様に焦り始めた。
「う、美しき『エウメニデスの淑女』マナナンガル卿。大変申し訳ございません、貴方の所有物であるとは知らず……」
「知らなかっただと!?我が匂いが染み付いている事も分からなかったと言い訳するのか!?」
「私は生まれつき慢性的な鼻炎でございまして、鼻が悪く………」
「知るか!!愚か者め!!!!!!ロサンチーノから破門されたバカ息子が!!!!ここで今すぐ灰にしてくれるっ!!!!」
地面に膝をついて必死に謝罪する男の顔面を、頭を引っ付かんだ上で膝蹴りを食らわしたシェリル。
彼女が一度怒ると、周りが引くレベルで容赦がない。悠斗が怒られていた時は、本当に手加減していたものだったと今改めて知った。
「お、お許しを…お許しをぉぉぉ!!!!」
「死ね愚か者!!!!聖也に手を出したバカたれに容赦などしない!!!!!!」
「シェ、シェリル!!シェリル!!もういいよ!!僕は無事だ!!」
僕は男が徹底的にボコボコにされていく姿を見て、あのままだと本当に死ぬと思い、咄嗟に彼女に駆け寄って後ろから抱き止めた。
あっという間に顔が腫れ上がり、爪で引っ掻いた跡もあったりでボロクソになって地に伏せている男をまだ足で痛め続ける彼女の体をぎゅっと強く力を込めて抱き締めながら、もうやめてと止め続けていた時、彼女の顔がクルッとこっちに振り返る。
後ろ姿で見えなかった顔は………一言で言うなら鬼神。
あの男の吸血鬼よりも数倍恐ろしく迫力があり、何処か妖艶さを漂わせる怪物の形相。彼女の吸血鬼として変貌した顔は一度、雪山で助けてもらったときに見たけど、相変わらず、控えめにいって怖い。
自分から回した腕を離しそうになったのが一瞬で良かった。
というより、即座に振り払われて、顔にビンタが飛んできたから、離すまでもなかった。
「こんのっバカ!!!!」
「痛っっ!?殴ることないじゃないか!!」
「主人の手を煩わせる下僕が何処にいるかっっ!!」
「下僕って……やっぱり君はそういう認識で…」
「口答えするな!!!!!!26になったばかりの小僧が!!!!174年早い!!!!」
勢いのあるビンタに倒れた僕の上に馬乗りになった彼女は、今度は僕の襟を掴む。そして手を振り上げてまた殴ろうと…………………………………は、しなかった。
目を瞑って衝撃に備えていた僕の顔と首に、彼女のクリクリしてさわり心地のいい髪と、良い香りが当たって、体にぐっと体重がかかる。
「……待っててと言ったのに」
………え。僕、今、抱き締められてる?誰に?シェリルに……?
今まで僕からはあっても、彼女からはなかったことが、今この場で起きている。今までずっと求めてたはずなのに、何でだろう?固まってる。これもあの男の能力のせい??それとも、いざ手に入ると動けなくなる現象?なのかな。
シェリルの顔は、元のシェリルに戻っていた。髪と僕の肩の隙間から覗く薄紅色の瞳が、艶やかに潤んでいた。
「バカ…………」
「………ごめん」
正直………信じられない。
普段無関心な彼女が、まるで…凄く心配してきてくれたって感じで……って、本当にこれ、心配してくれて……るんだよね、本当に??
彼女の顔を見ても、すがられるように寄り添われても、まだ疑い続ける自分が恥ずかしい。それとも、これは夢で、本当の自分は吸血鬼に血を吸われて死んでるんじゃないか?
いや、ビンタはかなり痛かったからその可能性は、ないな。これは、現実だ。
僕は華奢な彼女の体に手を回して、落ち着かせるようになだめた。
「ごめん、シェリル…次は気を付けるから。ごめんね」
「当たり前だ!もう誘拐されても、探さないからっ…!!」
「分かった、分かったよ。もうしない」
チュッと彼女の髪と額に口付ける。彼女は何も言わなかった。むしろ、逃げ出さずにじっと受け入れてる。
愛おしく、彼女の頭を撫でてあげた。可愛い僕の彼女が、こんな風に寂しがってくれる日がくるなんて。
………ところで、どうやって僕の居場所が分かったんだろう?
それを聞こうとしたところ、シェリルの追撃からボロボロの体を引きずりながら立ち去ろうとする男吸血鬼の姿に目が行った。
「………まだ話は終わってないぞロサンチーノ」
彼女が僕を離さないまま、低い声でそう告げた時、ビクッ!!とあからさまに分かるほど体が震え、腹を抑えながらこちらに蒼白い顔が振り向いた。
「ハンターに追われているそうだな?何をしでかしたか知らないが、さっさとこの国より立ち去れ!二度と、現れるな!!」
シェリルはキッと鋭い目と牙を剥き出しにして、怯えている男吸血鬼の名前を呼んで、言い放つと、男吸血鬼はその怒声に謝り続けながらようやくその場を立ち去っていく。
「あの人って……知り合い?」
「知り合いのバカ息子だ、面識はない。…噛まれてないか?噛まれてるのなら追いかけて殺すけど?」
「噛まれてない噛まれてない!!殺さなくていいから!!」
牙は突き立てられたけど、噛まれるとまでは行ってないというと、彼女はそうかと一言呟き、顔を伏せた。
「ねぇ、どうしてここが分かったの?」
「お前の匂いを辿って来た。他と違って分かりやすいから」
「匂い?そういえば、あの人から僕の匂いは香ばしいとかなんとかって言われたけど…」
他と違って分かりやすいってことなんだろうか?そんなに他と違う体臭でもない気がするんだけど。
「吸血鬼にも、好みと言うものはある。気にするな。まさか、新エリアの宮殿の中に潜伏してるとは。他にも、血の匂いがしたから簡単に分かった」
え、ここ新エリアの建物の中なの?
シェリルは部屋の隅に放置されている死体の山を一瞬見ると、ここから出ようと言って、近くに落ちていた僕のパンダの帽子を拾いにいく。
「ここから出るぞ。折角来たんだから、まだ楽しむんだろう?」
「あ……あぁ、うん。でも……」
「死体は気にするな。ガラスを割ったから、すぐに見つかる」
「それも、あるんだけど…さ」
君はいいの?このまま僕と一緒に……。
聞こうとしたその前に、僕の表情を見て、何が言いたいのか、彼女も察したらしい。
彼女は何処か気まずそうな様子で帽子を指で弄びながら目線を落とし、少しした後、再び僕の方を向いた。
「誰もつまらないと言ってない。迷惑とも思ってない。つまり、その………」
「つまり?」
「私は…………お前の、したいことがしたい。そう、言っただろう」
「あぁ、言ったね?」
「だから!!迷惑も何もない!!!!そういうことだ!!」
「そういうことって?僕も言ったけど、頭のいい方じゃない。もっと、分かりやすく言ってよ。ちゃんと聞くから」
自分の中で意地悪な好奇心が芽生えた。彼女は濁しているけれど、このままもっと、はっきりと聞きたい言葉があるはず。だからわざとすっとぼけた。
「だ………だからお前………」
「うん」
彼女は想像していた通り、悔しそうに唇を噛み締め、僕を睨み付けて言い放った。
「ここまでさせておいて分からないのか!!!!迷惑も退屈もなければ、お前の事が好きに決まってるだろっっっ!!!!」
「…………シェリル」
誰もいない空間の中に反響する。
空気を突き破るほどの宣言からしばらくして、何も答えない僕を見て彼女は、はっとしたように目を見開く。
そして、ぐっと僕の帽子を握りしめながら体温のないはずの彼女の顔は、今まで見たことがないぐらい、真っ赤になっていた。
「っあ…………う…」
口をパクパクさせて、慌てている姿も愛おしい。彼女の顔に手を近づけると、真っ赤な顔は逃げようとしたが、捕まえる。
「逃げないで」
真っ赤になった頬はひんやりと冷たかった。彼女の柔らかい肌が心地いい。シェリルは恥らう甘くなった表情で、僕を誘っている。
ずっと求めてた言葉。今日はなんて、最高なんだろう。
「好きだよ、僕も」
赤く染まっている唇を親指でゆっくりなぞる。隙間から見える前歯の牙が陶器のように白く輝いていて、ちろっと薄紅の舌が見えた。
「好きになってくれて嬉しい」
「う、うるさい………バカ…」
「大好き、大好きだよ」
この時の事を深く、胸に刻み込むように、彼女と唇を重ねた。紅茶の優しい味わいと、ほのかな辛さを感じるキスだった。
_____***
マナナンガル家末代までの恥………先祖にも知れたら恥だと、破門されてもおかしくない。
私は人間に、情を持った。絶対に持たないと誓ったのに、こうも簡単にほだされて。
それでも、後悔がない。むしろ………なんだか、スッキリしてる。それに安心も。変な、感じ。
…やっぱり、好きなんだ。私。こんな、人間を……。
聖也に連れられて少しあちこち回った後、最後に中心部にあるツンデレラ城へ連れていって貰った。
内部は、他では見ない明るい色彩が使われたハッピーエンドの物語の中だけに登場しそうな内装だった。
ピンク色が多い、家具も高価なものと見られるが、現実の貴族が使うには安物だ。
中にあった王座の間には、小さな王座と、パンダが髭とカツラをつけた肖像画が飾られている。
「どんな城主かと思えば、またパンダなのか」
「そりゃパンダランドだから……って、まさか、本当のお城だと思ってた…?」
「流石に思ってない。ただ、懐かしくなって」
子供の頃は、こんな感じの城に住んでいた事を言うと、相変わらずオーバーな反応で、凄い凄いと騒がれる。
はぁ、殺されかけたというのに、呑気な奴。あちこち撮ってはインスタに載せてるし。よくやる。
「シェリルの故郷に行ってみたいな。どんな所?」
「私の?何もないぞ。住んでた城に行きたいっていうなら、もうないし」
「そうなの?残念だなー。子供の時の事、もっと知りたいなって思ったんだけど」
「500年だぞ」
流石に当時のものはもう跡形もない。そう言うと、聖也はまるで私が吸血鬼であることを忘れてたように「あ、そっか?」とスマホでパシャパシャと撮りながら言った。
500年。
その数字を提示しても、なにげにスルーした奴の頭に、この意味が分かっているのか…………いや、絶対、分かってない。
さっきの事を思い出したくもないのに、また思い出しては心の中で早く消し去ろうと旗を扇ぐ自分がいる。
…………まさか、結婚とまでいかないよね?
「シェリルが写真にうつってくれたら、皆に僕の彼女だって自慢できるのにー…………どうしたの?」
いつの間にか固まっていたらしい。聖也がまた私の方を見て首をかしげている。バレたらまた白状するまで問い詰めて来そうだ!
「こ、こういう城に住みたいのか?」
咄嗟に思い付いた話題を口にすると、聖也はスマホを横向きに持ったまま、目を丸くし、私の質問について考える素振りを見せた。
「んー………住みたいって言うより、泊まってみたいって感じかな。住むとなると掃除とか大変そうじゃん」
「あ、あぁ………掃除」
掃除なんて召し使いを雇ってやらせればいいだけの話なのに、現代にはもうそんな概念はないようだ。めったに聞かなくなったしな、うちのメイドがどうのと愚痴をたれる貴婦人もいない。
「こういうお城だとさぁ、規模も考えてルンバ100個くらい買わないと回らなそう」
「人間を雇う発想はないのか」
ルンバに棚の上とかの掃除が出来るならまだしも、床だけが綺麗になるぞそれ。
「人間はほら……人件費があるし。第一、僕とシェリルだけで住むのに広すぎでしょ~」
「……まぁ、それもそうか」
ん?今僕とシェリルで住むって言ったか?
「おい………なんで私まで一緒に城に住むって話になってる?」
「え?そういう話じゃないの?」
「は?」
あれ?また噛み合わなくなってきたぞ?
お互いじっと見つめ合うが、ハッとして目を逸らす。聖也はまた私の髪を触って、頬をなぞるように撫でた。
「もっとこじんまりした所が、いいかな。毎日顔を合わせたいから」
と言った。
またこいつは、そういう話に持っていく気か!辱しめようと思っても、そうはいかない!
「毎日顔を合わせていたら、好きなものも飽きるんじゃない?」
そう偏屈な返事をあえて返すが、本当に何も考えていない聖也は何言ってるんだと笑って即答してきた。
「飽きるわけない。むしろ、増してる」
「……は?なにが?」
「愛情が!」
………我ながら、こんな頭がお花畑の人間を好きになってしまったのかと思う。
でも抱き締められるのも、悪い気はしない。棺以外で安心できる場所が、こんなにも近くにあると、今まで目を反らして来た私は今、改めて自覚した。
さっき私が口走った言葉のせいで、余計に聖也も歯止めが効かなくなっているらしい。
もう仕事を辞めてずっと一緒に居たいとまで言い始めてる。バカかと返すが、ヘラヘラと笑うところも…なんか、ムカつく。
「お土産買いにいこうか。好きなもの買ってあげる」
抱き締めていた私を離して手をとった聖也に連れられて、私は城を後にした。
外では、閉園前のファイナルパレードがあり、騒がしい音楽とシーズンであるクリスマスを題材にしたパレードが道で行われていた。
聖也はこのイルミネーションパレードを見てはしゃいでいる。人間の歳ではもう随分な大人なのに、子供のよう。というか、子供がそのままでかくなったみたいだ。能力を使われたとはいえ、誘拐はされるし。
___シュポンッ!シュポンッ!
「……?なんだ、この音」
「あぁ!あれじゃない?パンダさんのクリスマスバズーカ」
腕を組んで歩いている私達の頭上、パレードで使われている台車の上のパンダを聖也が指差した。
パンダが竹筒のバズーカを片手に、集まった群衆に向かって何か発射している。あの中には、バズーカでしか手に入らない珍しいグッズが入っているらしく、主に子供を見つけてはそこに発射している。
プレゼント専用とはいえバズーカ。子供に向けて危なくないのか……。
「なんとも、粋なパフォーマンスだな」
「結局、新エリアはなんか見る気なくなっちゃったけど、楽しかったね」
「ぶっちゃけお前の誘拐より、クレイジーマウンテンの方がインパクトありすぎてもう乗りたくない」
あんな成す術もなく追いかけられる無限の恐怖はもう味わいたくない。前に見た呪怨の怨霊の呪いレベルで関わりたくないあの追跡。
今もなんだか、あのパレードのパンダを見てると寒気がする。
「ハハッ、あれ、子供とお年寄り禁止だしね」
「っ!!なんだと?」
「いや…ごめん。そういう意味で言ったんじゃ」
「私がお年寄りと言いたいのか?そうだろうな!!お前の歳からすれば!!私はシニアどころか化石だものな!!」
「ち、違うってば!!怒らないでって!!」
全く、すぐこれだ。無神経にもほどがある!!
フンッと聖也からそっぽを向いたとき、何か妙な視線を感じ、頭上へ向いた。
「………………………………」
「………?」
いつの間にか自分と平行線で進んでたパンダのいる台車。ワラワラと集まっている群衆の中にいる私達を、あのパンダがじっと見つめていた。
な、何なんだ、あの視線は?さっきからこっちを見ているような………
「モフッ」
鳴いた。パンダがおもむろに竹筒バズーカを構えた。……は?ちょっと待て。何故こっちに向けた?
___パシュンッ!!
「うげっ!!」
パンダから発射された何かが、私達の前にいた学生を引率している大人の頭に当たり、宙に四回転ぐらいして私の手に落ちてきた。
「いっいてぇっ!!なんだ今の!!今パンダ俺の事狙ったよな!!」
「事故だよ、事故」
「せんせー、そんな怒んないでよ。夢の国なんだし」
「いやだけどよ……ってあー!!見ろ!!あのパンダ!!口元抑えて笑ってやがる!!」
「パンダに目くじらを立て過ぎ」
学生達に笑われながら、男がパンダに向かって野次を飛ばす後ろで、私は何故か流れ弾で飛んできた包みと、聖也の視線を集めた。
「シェリル!良かったね!パンダのクリスマスプレゼントだよ」
「プレゼント…?」
私は顔を上げて今一度、過ぎ去っていくパンダを見る。バズーカを片手に、こっちに向かって手を振っていた。
………なんか、見たことがあるようなないような………。
何故パンダが子供でもない私達に打ってきたのか分からないが、とりあえず包みを開けてみると、中身は、パンダの人形が2つ。首もとの布が赤と白、ペアルックの着せ替え人形だった。
「………可愛い」
「2つも入ってるって、僕達にって事かな?さすがパンダさん!」
私は包みの中の赤の方を聖也に渡し、白の方を私が貰った。この歳になってぬいぐるみとは、じいが知ったら呆れるだろうが、聖也はそんなことは気にしてない様子で、抱き抱えた。
楽しかったねと、ぬいぐるみを持っていない手で私に再び差し出す。
「来年も来よう。いい?」
「…………あぁ……」
……こんな夜を過ごしたのは、いつぶりだったのか。もしかして、今日が初めて?
月の光だけが支配していた闇は、時代が経つにつれて人工の光によって昼も変わらず明るくなった。
ずっと長い間、光を拒んできた私には………この人間は、眩しすぎる。
スッと伸びた私の手をそっと取り、指先で軽く撫でた聖也は、おいでと私の冷たい手を自分のジャケットのポケットに突っ込んだ。
中で彼の体温とジャケットの中の暖かさが、冷えきった体の中に染み渡った。
人間は、暖かい。暖かな血の巡りを感じる。思わず食欲が増してしまいそうになるほど……私を刺激する。
でもこれは違う。
別の欲求。欲求不満。
元々冷たいものを暖めようとする体温を……もっと欲しいと思う、禁断の感情。
「さっ、お土産買って帰ろうね!欲しいものは言って。ね?」
「分かってる」
物欲なんて、この時の私の頭にはなかった。
_____***
沢山お土産を買い、帰路についた後もずっと、体温をくれた聖也の手は、家の玄関を開けるときにようやく離れた。
細い体つきのくせに、大きい手。お土産の荷物を開けた玄関先に置き去りにして、外寒かったけど楽しかった!とヘラヘラ笑っている。……人の気も、知らないで。
お前がいなくなったとき、どんだけ焦ったと思ってるのか。
「寒いし、お風呂でも入ろうかな」
「掃除しておいたから、すぐ沸かす」
「え?ほんと!助かるよ」
「スイッチ、入れてくるから」
リビングで再びジャケットと鞄を散らかす聖也に背を向け、風呂場へ向かう。行く前に洗ったばかりの浴槽の栓を閉じ、傍のスイッチを操作して設定をし、蓋を閉じた。
………沸くのに、30分は掛かるだろう。
…………………。
「シェリルー」
間延びした聖也の声に振り向いて、履いていたタイツをその場で脱いで脱衣場の籠に放り込み、向かった。
「何?」
廊下へ出ると、部屋に入ろうとしていた聖也に声をかけた。
「待ってる間ちょっと寝ようかなって」
「なんだ、疲れたのか」
「仕事の後だから、ちょっとだけね。先入ってていいよ、君が出たら起こしてくれればいいから」
…………………。
冷えた足元が、熱を欲してうずいている。どうしても手に入らないものを、奪ってでも、何をしても欲しいという誘惑。
純血種族として義務づけられた誇りを、またしても、捨て去ろうとしていた。
「……?」
部屋に入ろうとした聖也の服の袖をそっと掴み、無言で止めた。気づいた聖也は、目を丸くしてこちらを向いた。
「…シェリル?どうかした?」
「…………」
私は無言を貫いた。
言わなきゃ分からないと言う聖也も、そんな私を見て眉を寄せていたが、次第に、私が何を求めているのか、徐々に分かったようで、あいつの耳が真っ赤に染まっていく。
「なっ………えっ……えっと………あったかな…あれ…」
落ち着かない様子で誰もいないと分かっているはずの部屋の中の様子まで見始めた聖也は、首の後ろをかきながら、私にこう聞いてきた。
「…………いいの?本当に……」
赤面した彼に、私は頷いた。
あいつはここまで想定していなかっただろう。私の口を割らせるだけと思っていただろうが、ここまで踏み込んでくるとは予想してなかったはず。
バカな男、そして、可愛い私の下僕。
狩りの時、よく社交界のケダモノ相手に使っていた手を、下僕相手に使うことになるとは。私も堕ちたもの。
ここまで来たら、どんどん、堕ちるしかない。
聖也は私のおねだりには敵わない。どのみち、私と彼は、こうなる日が来たと思う。
「………わかった。ほら……」
聖也は私の腰を抱き寄せる。私は風呂場から聞こえる水の音を聞きながら、部屋に入った。
血よりも甘く激しい渇望を満たした夜になった。
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