十六日目の午前 クラスの人気者と屋上へ行った。
午前の授業も終わり、昼休みを告げるチャイムが校内へ響き渡る。
授業の終わりの挨拶を終え、連続的に勢いのいい扉の音が鳴り響くと同時に複数人が廊下へと飛び出す。いつ見ても異様な光景には思わず苦笑いしてしまう。
「なーに見てるんですか?」
異様な光景にすら調和しない一人の少女がこちらを見やる。
「いつ見ても異様な光景だよなぁ。購買パン競争って」
「高校生だからできることですよ。若さっていいですねぇ」
「同い年だろ」
「ところで、朱兎くんってお昼ごはんはどうしているんですか?」
「学食か適当に買ってきたパン」
「ですよね。そんな朱兎くんのためにお弁当を作ってきちゃいました!」
高らかに宣言する白華。
クラスの人気者の彼女にクラスメイトからの視線は釘付け―――ということはなく、異様な様子だった。
全ての人間がこちらを見ていない。まるで普通の友達同士がただ普通の会話をしているかの如く、誰も興味を示していないかのように。
帰ってきてからもずっとこんな調子だ。帰ってきてからも騒がれることもなく、逆に疎遠になっているわけでもない。話しかけたら返事はちゃんと帰ってくる。
まるで何もなかったかのようだ。
「さぁ、一緒に食べましょ!」
そう言って彼女は腕を引っ張り、包袋を持って教室を後にした。
当たり前のように机のバリケードをくぐり、たどり着いた場所は先程までいた場所。屋上への階段だ。
「さてさて...」
そう言って出してきたのは鍵。考えるまでもなかった。
白華はその鍵を屋上へのドアに挿す。そして解錠し、ドアを開ける。
太陽の光が俺を襲い、目を閉じると手をまた引っ張られた。
目を開けると一面に青いインクが塗られている広い空のキャンバスが広がる。
「初めて来ましたが、いいところですね」
そう言うと鮮やかな笑顔で彼女は振り向いた。
「さぁ、一緒に食べましょう」
帰宅したらクラスの人気者が許嫁になっていた。 しらゆき。 @Angel_HymKyu__
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