十三日目 クラスの人気者と突然の帰宅をした。
「おかえりなさい」
「うおっ、びっくりした」
最初の場所へ到着するやいなや、背後から突然白華が呼びかけてきた。
意識外からいきなり声をかけられると少し驚いてしまう。心臓に悪い。
「それでどうしたんだ?いきなりここに来るように言って」
「今日は一旦帰りましょう」
突然のことにおもわずえっ、と言葉が漏れ出す。おそらく原因はさっきのアレなのだろう。
「さぁ迎えが来ましたよ?朱兎くんも乗ってください」
迎えの車らしき黒塗りの高級車が自分たちの前に駐車してきた。
流石にリムジンではなく4ドアのものであったのだが、それでも十分に高級車の部類に入るほどのそれであった。ご丁寧に運転手までついていて、寧ろリムジンだったら周囲の目が怖いため憧れよりも恐怖のほうが勝る。
(それにしても空気が重い...)
やがて車は先程まで居た場所を離れ、お互い話を切り出せないまま、帰路へつく。
「...」
「...」
話は一向に切り出すことができず、いつ話を切りだそうか模索していたら部屋についてしまった。
このままではまずい。そう思って俺は話を切り出す。
「...白華さん?」
「むぅー」
「白華さん?」
「私はとても悲しいです」
「...お聞きしても?」
「車のなかで朱兎くんが何一つ話しかけてくれないからです」
もっと別の話で静かに怒っていたのかと思っていた俺は、すっかり安堵した。
どうやらうちのお嬢様が構ってくれなくて不機嫌なご様子。
白華側から話しかけてくれたら良かったのにと思ったがそれを指摘すると話がややこしくなる。言いたいことを堪えなければこの状況から抜け出せないのだ。
「それより朱兎くん」
「はいなんでしょう」
「なぜ中断したのか気になりませんか...?」
気にならないかといえば嘘になる。ここは正直に行こう。このまま知らずじまいでは後味がよろしくない。
「まぁ...気になるかな?」
「これは朱兎くんにも関係ある話なんですが...」
一瞬の間が空いてから、言葉を紡ぐ。
「おそらくあの二人、クラスメイトです。おそらくバレてはいないでしょうが...」
驚きを隠せなかった。
まさかかなり離れた場所のショッピングモールにクラスメイトがいたとは。
もし白華がバレていたら。
男と一緒に居たと噂になって彼女に迷惑をかけることとなるだろう。
―――その時俺はどうすればいいんだ?
そのことが頭から離れず、そのままその日は終わった。
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