五日目 クラスの人気者に質問をしてみた。

 しばらくすると、白華はリビングに戻ってきた。

 そういえば今さっきまでの出来事のせいで、俺は白華に質問するということを忘れていた。


「白華」

「なんでしょうか朱兎くん」

「とりあえずそこ座ってくれ。質問したいことがある」

「わかりました」

 俺は向かい側を指差しながら言ったのだが、白華はわかりましたといいつつ俺の隣に座ってくる。なにがわかりましただ。しかし満点の笑顔だからどうしても許せてしまう。かわいいってやっぱり武器じゃないか。

「白華さん?」

「なんでしょうか?」

「なぜ俺の隣に...?」

「そりゃあ...ね?」


 どうしても俺はこの笑顔には勝てないようで、これを見てしまうとどうしても許せてしまう。一日すら経過してないのに攻略されてしまった俺はチョロインよりもちょろい可能性も否定できない。


 それにしても女子がゼロ距離で隣に座ってくるというこの状況には恋愛初心者の俺としてはかなり心臓に悪いので即刻やめていただきたい。

 移動しよう。そう決意しこの席から立ち上がろうとした。


 そうしようとしたその瞬間。

 白華は俺が席を立って反対側へ移動しようとしたのを察知したのか俺の膝の上に座ってきた。

 その後、こっちを向いて、「えへへ」と溶けたような笑顔で笑う。

 この笑顔はやはり兵器である。絶対に条約で禁止するべきだ。ここまで来たら詰みだ。勝ち目はない。ゲームセット。


「で、質問とは?」

「いくつかある。まずひとつ目、どうやって家に入った?」

「んー。面白くないので今度話しましょう。今は乙女の秘密ってことで」


 乙女の秘密。

 これについて深堀りしていくと本当によくないことになることは周知の事実である。やっぱ女子って怖い。

 黙秘権を使われた以上どうせ深堀りしようとしたところで無駄なものは無駄である。次だ次。


「はぁ、まぁいいや。次の質問。いつから俺の事を知っていた?」

「乙女の秘密ってことで」

 またかよ。黙秘権を出された所だが深堀りしようとしたところで無駄なものは無駄である。次いこ、次。


「次、許嫁の事を知ったのはいつ?」

「乙女の「全部黙秘権かよ!!ちゃんと答え―――


 ぐぅぅぅ。

 荒れる予兆がしていた空間に可愛らしげなお腹が空いた音が響く。


先程の白熱した空間とはうってかわって、静寂な空間の中の時はまるで動かないように遅く感じる。


「朱兎くん?お腹が空いたのですか?そろそろ夕飯にしましょうか?」

「いや、今のは白「朱兎くんですよね?恥ずかしいからといって隠してもだめですよ?」「いや今の「あ・か・と・く・ん?」「はい」


一つ学んだことがある。

 嫁の尻に敷かれる夫についての気持ちが分かってしまった。説明はし難いが、これは勝てない。圧倒的に相手が強すぎるのだ。


「私が作ります。朱兎くんはそこで待っててくださいな。すぐ作りますから」

 せっかくだ。せっかく白華が作ってくれるのだから楽しみに待っているとしよう。




 こうして、今日の夕飯は許嫁が作ってくれることになった。

 ラブコメの主人公になったつもりなどないのだが、基本的にこういうのってダークマターが出てくるか、めちゃくちゃ上手な料理が出てくるかのどっちかである。

 だから少し心配ではあるが白華の手料理ということなので、期待を膨らませつつ俺はリビングの机で勉強し、白華の手料理を待つのであった。


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