作家絵師事件桜川しづね先生編

「はよざいまぁす。『後輩電波』イラスト担当、桜川しづねですぅ」

「おはようございます。インタビュアーの斉藤本太郎です。本日はよろしくお願いいたします」

「はぁい」


 僕が再び会議室に戻って3分もしない内に、桜川先生はやって来た。那々帆先生と同じ制服を着崩さず綺麗に身に纏っていて、セミロングの髪を三つ編みにしており、すらっとした体格も相まって典型的で古典的な文学少女のような、秋の静かな清流の如き雰囲気が全身から醸し出されていた。ただし口調や態度はギャルっぽい。


「春香先生はどうでしたかぁ? 上手く喋れてましたぁ?」


 桜川先生は僕の真正面にある椅子に座りながら、尋ねてきた。


「まあ……応答自体は出来ていたので、大丈夫だと思いますよ……多分」

「間違って本名口走ったりとかしませんでしたぁ?」

「しました! 星野七香って!」

「あちゃー……」

「あと(学校名)とか、FからGになったとかどうとかも全部自分から言っちゃってました」

「あらららら」


 桜川先生はそれを聞いてため息をつきながら額を抑えた。


「七香先輩にはおしおきしないとだめですねぇ。なので斉藤先生、わたしのインタビューもちゃちゃっと始めちゃってくーださい」

「は、はい。わかりました」

「わたしはどんな質問にも完璧に答えるので安心してくださいねぇ」


 おしおきって一体何をするつもりなんだろうと思いながら、僕はインタビューを始めた。桜川先生は僕よりも年下であるはずなのに凄まじい殺気のようなものを放っており、自然と敬語になってしまった。


 ――本作のイラストを制作している際、意識されていることはありますか。


「やはり主人公である奈穂美が一番可愛く見えるようにすることを念頭に置いて制作しています。特に第3巻の水着のときの胸はとにかく読者様に喜んでいただけるように、ということでいつもより気合を入れて描いた記憶があります(笑)。それと、今回の表紙は自分で言うのも何なのですが、かなり出来が良いのではないかと自負しております。というのも今回は今までよりも少し大きく描いてみたんです。那々帆先生に怒られないか不安でしたが「わああああ!」と喜びのお言葉を頂きました(笑)。ちなみにカバーを外すとさらに大きくしたバージョンが現れますのでそれも楽しみにしていただけたらと(笑)」


 ――真涼については?


「最初は『この子なんなの?』って思っていたんですけれど、今では奈穂美のことをすごく想っていることがわかったので大好きになっています。普段は掴みどころのない不思議な子なのだけれども、奈穂美と2人きりになるとちょっぴりツンデレな女の子になってしまう。そのギャップがたまりませんね。そんな内面をイラストで表現できるように常に頑張っております。あと、個人的には「先輩のえっち」という口癖が好きです。大好きです(笑)」


 ――那々帆先生とは最近どんな話をされましたか。


「お仕事に関することや、お互いの作品の話、あとは好きなアニメなどについて語り合いました。話をすると、本当に真面目で努力家な方なんだなと毎回思います。お仕事をする上でもきちんと計画を立ててやっていらっしゃるようですし、インプットも怠らない勉強家でもいらっしゃいます。そういう姿勢を私も見習わなければと思いますね。ただその一方でプライベートでは天然ボケな部分もあるのかな、と(笑)。ですがそのギャップもまた魅力的だと思っています」


 ――那々帆先生は普段はどのような方なのでしょうか。


「大人しい方ですね。ただその分感情表現が豊かだなと感じています。嬉しいときは素直に喜びを表現してくれて可愛いんですよ。昔からの大切な親友です」


 ――イラストレーターの立場から見る本作の魅力について教えてください。


「やはり那々帆先生の描くキャラクターはとても魅力的ですね。どのキャラもしっかりと作りこまれていて、まるで生き写しのように描かれています。また、毎回キャラクターの私服の描写が変わっているのですが、那々帆先生が毎回考えているのかなと思っていたところ『しづねちゃん……服装どうしよう……』と相談を受けたことがありました。どうやら担当編集さんのアドバイスがあったようですが、そのときは『そういうことだったんだ』と思ったと同時にとても萌えました。毎回違う服を描くのは大変ですが(笑)、面白いなと思ってやっています」


 ――本作を通して一番印象に残っているシーンを教えてください。


「第1巻の最後の七香と真涼がバレンタインデーの日にお互いに本音を言い合うシーンはグッときましたね。これは挿絵も本気で描かねばと思いながら筆を進めていました」


 ――最後にファンのみなさんへ向けてメッセージをお願いします。


「みなさんのおかげで『私の後輩が電波なイラストレーターだった件』はここまで来ることができました。今後もより良い作品にするために、関係者として精一杯頑張っていきますので応援よろしくお願いいたします」


 ――ありがとうございました!


 「ありがとうございました。これからも頑張ります!」


 こうして、桜川先生へのインタビューはこちらがびっくりするほどにスムーズに進み、あっさりと終わったのだった。

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