遊戯事件
遊戯事件
西小村上さんが家に来たその日の夜、僕はリビングのソファーの上でつばめさんと肩を並べていた。パジャマ姿のつばめさんは胸元とかが危うくてちょっと、いやかなりエロかった。詳しく書くのはレイティング的にアレなので控えるけど、元々セクシーだけど更にセクシーさがマシマシである。ちなみにエビ子はもう寝ている。魔王とはいえ子どもは子どもなので眠気がすぐに来るらしい。
「これからポンくんには、あたしと真実か挑戦かゲームをやってもらいまーす。ぱちぱちー」
そしてそんなつばめさんは唐突にそんなことを言い放った。
真実か挑戦かゲーム。これを題材にしたり物語の中でやったりしている映画なんかもあるから有名になってはきているけど、一応ルールを説明しておく。
まず最初に質問する人をじゃんけんだったりトランプだったりをやって決める。それで質問する人を決めたらその人は「真実か挑戦か」ともう片方の人に問う。質問された人は「真実」か「挑戦」どちらかを選んで答える。「真実」の場合、質問された内容の真実を答えなければならない。例えば「好きな人は?」と訊かれたらそれを素直に答える、といったものだ。一方「挑戦」の場合、指示されたことに挑戦しなければならない。例えば「私にキスをしろ」と指示されたらキスしなければならない。そういうゲームだ。至ってシンプルなルールだけども、まあ実際やっているのを見てもらった方が早いだろう。
そんな訳で、話を戻す。つばめさんはしょぼい拍手をしながら頬を膨らませて僕を見ている。明らかに不機嫌である。ちゃんと説明したんだけどな。流石にちょっとヤバい雰囲気になってきたときには真面目にエビ子もフォローしてくれたし。
「事情はわかったし許したけど、でもなんかちょっと許せないからやってもらいまーす」
「やらないという選択肢は」
「ないよ!」
「ないんだ……」
即答だった。「真実」か「挑戦」、どちらも選ばないのは基本的にルール違反であるため、逃げるのであれば今しかないと思ったのだが、退路はもうなさそうだった。腹を括るしかないのか。いや待てよ、全部僕が質問する側になればいいのだ。それならむしろ逆につばめさんにあんなことやこんなことを聞きたい放題やりたい放題である。これはピンチであり、チャンスである。だったらもう答えは一つだ。
「じゃあやろう。質問する側はどうやって決める?」
「ゲームで勝負しよ!」
そう言ってつばめさんはテレビゲームのコントローラーを僕に手渡すと、もう片方の手でテレビのリモコンを手に取りテレビ画面を人気があるのかないのかよくわからないアザラシの恋愛映画からゲームの画面へと切り替えた。
「まずはこれで!」
彼女はそう言って僕が昔やっていたレースゲームを立ち上げた。
「これで僕に勝とうって?」
「そう! もしかして舐めてる?」
「なっめなめだよ。これなら結構やりこんでたし」
「もう! 甘く見ないでよ!」
結論から言えば、負けました。しかも僅差ではなく大差で。なんでこうなった。
「真実か挑戦か?」
満面の笑みで尋ねてくるつばめさん。仕方ない。とりあえず真実って言っておけば真実しか言わなくて済むし、それでいいか。
「真実」
僕がそう言うと、つばめさんはしばらく逡巡した後、こう訊いてきた。
「今でも好きな人は、好き?」
「……と言うと?」
「今まで出会ってきた女の子で、好きになった人は今でも好きかってこと」
「なるほど……」
いきなり困る質問が来た。でもそういうルールだし答えるしかないか。僕はええいままよと思いながら、素直に答えた。
「好きだった人を簡単に嫌いになったり、忘れられる訳は無いよ。でも、今はつばめさんが一番好きだよ」
「そっか……そっかぁ……へへへへ」
表情がトロトロに蕩けるつばめさん。よし、これで許してもらえるだ
「よし! もう一回!」
ろうと思っていたらつばめさんがまたそんなことを言ってきた。まあいい、今度は勝つぞと格闘ゲームで戦ったらまた負けた。つばめさんが本気で勝ちにきてるのか、僕が弱いのかは判断しかねるけど、惨敗だった。
「真実か挑戦か?」
冷静に考えて、ここで挑戦って言ったら18禁のことを挑戦させられかねない。エッチしよとか言ってくるんだもん。その描写をするかしないかはともかく、命令されてのエッチは僕の趣味ではない。興味はあるけど。
「真実」
だけども僕は真実と答えるのだった。こういったことが出来てしまうのがこのゲームの難点なのである。つまり、日和って真実としか答えなければ毛が生えた質疑応答みたいなものになってしまうのである。これではつまらないからと真実と答えられる回数制限とかを設けたりとかもするけど、つばめさんにその気はなさそうだった。そんなつばめさんは、口をしばらくパクパクさせた。
「あの……ご、ごめん。やっぱり……ダメだよね。こんなの……こうやって無理矢理聞き出すのって……」
「いいよ別に。僕だってそれを承知で引き受けたんだし、遠慮されるとむしろ困る」
「そ、そっか……なら……言うね」
表情からして、明らかによろしくない質問をしようとしているのは想像がついた。正直、僕には迂闊に訊けないようなとんでもない過去があまりにも多すぎる。それは僕のエッセイを読んでいる彼女もわかっていることだろう。でも、こうやって気を遣わせるのも彼女に対して失礼だと感じる。だから僕は、あえてああいう言い方をした。上手く察してくれているとありがたいけど。
「幼馴染さん――
つばめさんが一体何を言いたかったのか、簡潔に書く。
「僕と彼女の2
「本当だよ」
「そっか……ご、ごめんね……卑怯な手、使っちゃって……」
つばめさんは、本当に申し訳なさそうに、頭を下げっぱなしにした。僕はそんなつばめさんの頭を撫でながら、独り言のように、呟いた。
「だから異世界から来たっていうエビ子と一緒に居たいって思ったのかも。もちろんつばめさんみたいな子と一緒に暮らせるようになるっていうのもあったけど」
「そう……だったんだ……」
「だからつばめさん、僕と一緒にいて欲しいんだ。これからも、ずっと」
「うん……うん……!」
その後、僕とつばめさんの間に何があったのかは、あえて書き記さないでおく。ただ、この言い回しで一体何があったのかは察して欲しい。エロかった。真面目な話の後で何言ってんだと思うかもしれないが、本当にそうなのだったから仕方ない。
だからこそ、僕は彼女を幸せにしてあげたいと、心からそう願っている。
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