第32話
「うん。」
顔を見て言うと、リョウも聞いてるんだという顔をした。
「学校行くでしょ。
僕が勉強できないと、教師の子どもなのにって言われるんだよね。
塾行かないと、母だけ選んだみたいになるから、
塾にも行き始めると、塾長の子どもなのにって言われる。
僕が勉強必死になってするでしょ。
成績上がったら、どうなると思う?」
リョウが見る。
「凄いね。じゃないの?」
「それもあったけど…
なのにが、だからに変わるだけなんだよ。
結局、周りの評価を基準にしてても駄目だなって思った。」
「恵まれてると思ってたわ。
何か悪かったな。」
「いや、初めて話したし。
通り過ぎてくだけの人は分かり合えない。
僕は僕の人生を生きてる。
ユウが苦しい思いをしてきた事、
僕も気が付けなかったよ。」
リョウが言った。
「ゲームしないって、趣味は?
勉強?」
「趣味が勉強って…
趣味が勉強な位やってるけど…
読書と音楽かな。」
「この間お邪魔した時に、本棚…
どんな本読むんだろうと思ったんだけどさ。
勝手に見ちゃ悪いかなって。
遠慮した。」
「見てよかったのに。
やばいの置いてないよ。ユウと違って。」
「俺も見えるとこには置いて無いよ…」
あん時、見ときゃ良かったなぁなんて、
前髪触りながら思った。
「音楽は~?何聴く?」
「聴く?」
スマホ電源入れて、片耳イヤホンくれた。
「すぐには立ち上がらないから待って。」
「ん、分かる。」
返事しといた。
「えっとね、これ。
聴こえる?最近、よく聴いてる。」
イヤホンから流れてくる音が、
全身を駆け巡って、
心臓がはねた。
何か…
やばい。
やばい。
やばい。
「っ誰?」
「ロクさん。
ちょっと前ドラマの主題歌歌ってた。
見てないけど…」
リョウが答えた。
「あっ…
見てない。
聴いてていいの?これ。」
イヤホン指差す。
「嫌じゃなければ。
バス停まで、いいよ。」
「ありがと。
昨日さぁ、サクラにお礼言えたんだ。
そしたら、
付き合ってって言われて、
音楽室まで手を引っ張られて、走り込みさせられた。」
「ぶはっ。
何それ。
昨日は、塾だったから、
急いで帰ったんだよね。
そんな面白い事あってたなら、
目撃すれば良かったよ~。」
リョウが笑う。
「手掴まれて、思い出したらドキドキして。」
「それは、どっちだろうねぇ。
微妙判定。
フォークダンスで誰が回ってきても、
ドキドキするやつなんじゃない?」
まぁ、確かにね…
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