第29話

授業もシッカリ聞いたけど,

昼休みが待ち遠しかった.


サッカー部のボール申請が通って借りられる事になった.

申請出した時,他にもいるって言ってたから,

そいつらに混ぜてもらったらいいかなって言ったけど,

俺にボールが回ってこなくなるってハヤトがごねた.


たださぁ…

声かけ過ぎだろ…

誰だよ,あいつら…

同じクラスなのか…

そもそも同じ学年なのか…

名前の刺繍の色が違うぞ…


結構な人数で遊ぶことになって,

結局,ボールが回ってこない…


花壇に座って見てたら,

ハヤトが気が付いて隣に座った.


「なぁ,結局ボールが回ってこねぇ…」


ハヤトが笑って,

「んだな.」

って言った.


「あれ…見た?」


「何なに?」

ハヤトが顔を寄せる.


「親ガチャ.」


「あぁ,見た見た.

子ガチャでもあるよな.」


「だな.

そら~いいのひきたいわな.

でも,ひけない奴もいるはずだから…

ひけるだけいいと思わん?」


「う~ん.

EX,LR,UR辺り出したいけど…

出たのを進化させてもいいんじゃない?

色々あるじゃん.

アイテム滅茶苦茶使って,鍛えて凄いのにするの.


ほら,家族のイベントで強くなる.

お互いに.」

ハヤトが大真面目に言う.


ちょっと間があって,

「…ごめん.」

ハヤトが言う.


「いいよ.

ありがと.

メソメソ泣かないだけ俺も強くなったのかも.」


リョウは,何て言うだろう.

サッカー誘ったら,

読みたい本があるから,僕は遠慮するよって言ってた.

あとで,聞いてみようかな.

どんな本だったのか,リョウはどう思うのか.


「サクラと話せた~?」

ハヤトが聞く.


「おぉ.

話せたけど…」


「話せたけど,何?

ドキドキしちゃう事?」

ハヤトがマスクの上から口を押える.


「何だかややこしい事になって…」


「聞く?」

ハヤトが自分の鼻を指さす.


「いや…もうちょっと考える.」


「んじゃあ,そん時に.」


「なぁ,ハヤト.

あれさぁ,同じクラスのやつら?」


「あぁ,どっから来たかだろ?

多分,1年や3年も全部ごちゃ混ぜ.

何か嬉しくて朝来てから合う奴合う奴に,

昼サッカー靴箱集合って言いまくったら,

たくさん集まった.」

ハヤトが言うもんで,堪え切らなくなって笑った.


ひとしきり笑った後,

「責任もあるから,ちょっと混じってくる.」

ってハヤトが行った.


1人でぽけ~っとしてると,

3階から音が降ってきた.

いくら嗜みは無いとはいえ,これはフルートだなって分かる.

音楽室の下なのか.


もう1個の音なんだろうなぁ.

綺麗なハーモニーだった.

サッカー熱も収まったし,

明日,音楽室に顔出してみようかなぁと思えた.






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