第27話
「なぁ…」
サクラを教室の隅に連れて行って,
小声で話そうとしたら,
「接近禁止令.」
とサクラが言った…
「おい!お前もさぁっ…
さっき手ぇ引っ張って走ってたよなぁ!」
「おいでも,お前でもないわ.
私は黙って走ったし.」
サクラが言う.
「…悪い.
サクラ.
楽器は出来ねぇよ.
ほんと無理だから.
もう,この繰り返し面倒.
帰るわ.」
「っお礼を言うって事は私に恩があるでしょ?」
背中からサクラの声がとんでくる.
何ぃ?
「確かに,感謝はしたけど,それとこれとは別.」
振り向いて言った.
「わずか1か月ほど力を貸してくれるだけでいいの.
難しい事はお願いしないわ.
だって,出来そうにないもの.」
サクラが言う.
何か,そこまで言われると腹立つな.
出来ないって俺が言ったんだけどさぁ.
「ユウくん,辛そうな時に私何もできなかった.
ゲームを誘えるわけでもないし,
可愛い訳でもない.
周りが見られるようになったなら,
新しい事始めてみるといいと思うよ.」
サクラの目が優しく笑った.
「サクラ…
有難う.
そこまで言ってくれて…
帰るわ.」
「…今,やってみるって言う所でしょ!」
サクラがジリジリしてる.
「あっ.
コノハ部長とクルミちゃん.」
サクラが入り口を見た.
何気に見たら,
どこかで見た事ある顔…?
どこだった?
もう,どいつもこいつもマスクだから,
目もとだけクイズってのは難しいんだよ…
女子は髪型で,だいぶ印象が違うから,
それこそ…難題…
小さい方が,
「変態!」
指さしてきた…
今日は,俺の指差しパーティなのか.
変態って…だいたい大なり小なり癖くらいあるよな.
「コノハちゃん.
この人,私のスカートの中身見て残念って言った!」
あぁ…
中庭の…エンジのハーフパンツか.
キャンキャン言う隣の方の視線も痛いし…
サクラも,どんな顔して見てるんだろう.
はぁ.
「違う.
残念だけどとは言ったよ.
残念だけど見えてないっていう意味だよ.
その後の強風で,ハーフパンツが見えるのは知らないよ.
俺がスカートめくった訳じゃないんだから.
エンジだから,1年だろ.」
予想外に1年,何も言い返さなかった.
この子もルカみたいに,
髪がふわふわしてるなぁと思いながら眺めてると,
隣の女子が手話をしてた.
「クルミちゃん,口元見えてたら口元を読んで分かるけど…
今みたいに,ユウくんもマスクしてたら難しいのよ.」
サクラが後ろから話した.
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