第13話

「声掛けられなくて悪かったな.気が付いて無かった.」

と言うと,

「えっそこ?」

とリョウが不思議がった.


「ハヤトがお小遣い制で.

あいつゲームにさ,何も言わなかったらつぎ込んじゃうのに,

バス代とタピオカ代は,きちんと分けてた.

俺らは申告制だったから.

そう,月何度も行けないけど,テストで50位以内だったら,

再度行ってもいいよって.でも,どんどん厳しくなるんだよ.

じゃあ40位以内,30位以内って…

そして,行きたいって言う奴もいなくなったから,行かなくなった.」


「飲みに行く?」

ってリョウが言うけれど,

「今日は,いいや.第一,甘いのもタピオカ苦手だし.」

と言うと,残念そうな顔をした.


「急ぐ?ちょっと寄るとこ寄っていい?」

と聞くと,リョウは少し考えて,

「1時間位なら.」

と言った.


「駅前のお弁当屋さんで母さん働いてて.

ちょっとだけ寄って顔出したい.」

リョウは両手でOKマークを出した.

「それなっ…」

言いかけてやめた.


初めてだけれど,聞いた場所は,あそこだ.

『スマイルランチ』


今,お客さんいないし話しかけてみよう.

「突然すみません.こちらにお世話になっている麻木の息子です.

母はいますか?」

「あら~,麻木さんとこの!

今,ちょうど休憩に出ているのよ.

もうすぐ戻ってくるはずだけど~.

いつも,お世話になっているのは,こっちよ~.

母1人子1人って聞いて,お願いしているから,

夕方19時であがるよう話しているのだけれど,

お客さん並んでいるとひと段落つくまで一緒にさばいてくれて…

ユウくんが御飯も用意して待っていてくれていますからって,

話す時のお母さん良い顔するのよ~.

いつもお母さんに助けて貰っています.ユウくんも有難う.」

お母さんよりも年上の女の人は,フワッと笑ってペコっとしてくれた.

店長と入ったネームプレートの女性は,佐藤さんだった.


「いえ,そんな.母をよろしくお願いします.」

深々お辞儀をした.




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