第2話 今日のおやつは、ビスケットとクッキー

 森のカフェ店には、今日もリスくんとウサギちゃんが遊びに来ていました。


「トラさんの文具店で新しい鉛筆を買って来たんだよ」リスくんはうれしそう。

「わたしも、ノート買ったの。トラさんから、なんでもおやつサービス券をもらっちゃった。これ使えますか」ウサギさんも楽しそう。


「トラくんは元気にしていましたか。おやつも好きなの頼んでね。

はい、今日は何にしましょうか」パンダのかんちゃんが注文を聞きました。

ちなみに、文具店をしているトラくんは、パンダのかんちゃんの息子さんなのです。


「いつものコーヒー牛乳くださ~い」リスは言いました。

「わたしも。それと、クッキーも食べたいなぁ」ウサギも注文しました。

「じゃ、僕もなにかお菓子~、うーん、僕はビスケット」リスも追加します。

「はい、ちょっと待っていてね」


 かんちゃんはスプーンで豆を量って粉々に砕くと、コーヒーを立て始めました。

このお店では、コーヒー牛乳を作るのにもこだわりがあるようです。牛乳もお店の裏で飼っている牛からしぼっています。

なんと、その牛も、かんちゃんが仔牛から育てたのでした。まさに、こだわりの一杯を淹れるために。


「リスくんのビスケットより、わたしのクッキーのほうがおしゃれだわ」

「そんなことないよ。ビスケットのほうがおいしいし。あっ、そういえば、ビスケットとクッキーはどうちがうのだろ?」


「はははっ、ビスケットもクッキーも同じだよ」とかんちゃんは微笑みながら答えます。

「えっ、うそだあ」リスもウサギも不思議そう。


「ヨーロッパでは、ビスケットはね、日持ちのするパンだったんだよ。日本でも乾パンってあるね、防災用に君たちのお家にもおいてあったりするんじゃないかな、それに近いものだったと思うよ。そのビスケットが海を渡ってアメリカへ行くと、クッキーと呼ばれたんだ。クッキーという言葉は、小さなケーキの意味なんだって」


「ふーん」ふたりは興味深げに聞いています。


「もしかしたら、それを区別しているのは日本という国かな。日本には、ヨーロッパからはビスケットという名前で、またアメリカからはクッキーという名前で、そのお菓子は入って来たものだから、こんがらがっちゃって……。

 そこで、全国ビスケット協会というところが基準を作ったんだ。糖分・脂肪分が四十パーセント以上あって、手作り風の見た目をしているものをクッキーとして、そのほかのものをビスケットとするって」


「あっ、それで、クッキーは高級な感じがするのね」

「だからか、庶民的な雰囲気なのはビスケットかも」


「そうだね。ほかにも、サブレやクラッカーというのもあるから、ますます、複雑だね」

「サブレ、知ってる~。鳩の形とかしてるのをサブレっていうのかな?」


「はははっ、鳩サブレは有名だね。でも形で決まるわけでもないよ、サブレはフランス語のサブル、砂っていう意味からきていてサクサクとした食感がするっていうことから、そう呼ばれている。

クラッカーは、ほぼ無糖で脂肪分少なくて、塩味の焼き菓子ってところかな」


「うーん、どれも大好き。いろいろと並べて食べ比べしたいなぁ……、

ぜんぶください~」


パリパリ、ポリポリ、サクサクサクッ……

カフェ店では、いつの間にか、焼き菓子の食べ比べパーティがはじまりました。


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