第86話 褒め過ぎの功罪とドイツ人の鼻
「それぞれのメンバーの特徴をつかんだ動物を、よくぞ見つけ出したわねえ。DTPアーティストの腕だけじゃなく、そっち方面の閃きも天才的だよねえ、草薙くんは」
――おおっと、いけない、いけない。
叱るに勝る褒め過ぎの弊害は、何度も手痛く経験済みなのに、率直な感動をつい口にせずにいられないのが、わたしの一番わるい癖だよね。上司失格かも……。(~_~)
集まって来た香山部長と植村部長も、しげしげと草薙Macを覗きこむ。
「さすがだね、草薙くん。これだけ見栄えがする本を作ってもらうと、営業としても販促甲斐があるよ」
「やだわ、わたしったら、見ているだけで動悸が高まって来ている。これなら芸能や事件、うわさ好きなおじちゃん、おばちゃんたちにも、大いに受けるわよ、きっと」
全員に褒められ、ドイツ人のような草薙隼太郎の鼻はいちだんと高くなった。
「そうっすか? おれ的にはこの程度のテク、どうってことないっすけど。っていうかあ、みなさんが遅れてるんとちゃいまっかぁ? 仮にも出版社社員の身で、敢えてアナログ派を標榜するのって、やめてもらえまっか? 頼んますわ、ほんまにい」
「こらこら、そんなにふんぞり返ったら、椅子の背もたれが折れちゃうわよ。あなたの体重を支えてくれているパソコン・チェアも会社の大事な備品なのよ。不可抗力でなく壊した場合は、それこそ弁償ものですからね。給料差し引きの覚悟できてる?」
軽口で茶化し、息子のような若輩をやんわりと諌めたのは諒子社長だった。
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