第85話 DTPクリエイター・草薙隼太郎の真骨頂
4月11日(水)午前9時。
「編集長。こんなもんで、どうっすか?」
文花は向かいの席の草薙隼太郎から声をかけられた。
尖った顎を
――あのねえ、モノは言いようなんだよ。
デスクトップ型のパソコンだから、移動できないのは仕方ないけど……。
相変わらずの態度のデカさに、文花は「ったくもう!」と舌打ちしたくなったが、すぐにカッとなる相手への正攻法ほど、無意味なものはないことは重々承知なので、かすかな皮肉をこめたジョークで、自らの矛を納める戦法を採ることにする。
「どれどれ……名うてのIllustrator遣い、草薙隼太郎クリエイターのお手並み拝見とまいりますか。さぞかし卓抜なDTPテクニックにお目にかかれることでしょうね。ああ、役得、役得。なんだかワクワクするわ」
そして、闘鶏の
「わ~おぉ! すごいね、草薙くん。さすがは翡翠書房編集部のエース(と言っても若干2名だが(笑))だわ。センセーショナルな訴求力がムンムンに満ちているね。よし、ゲテモノ好きな読者の覗き心を掴むこと間違いなし。ほぼ完璧な仕上がりよ」
財政復興を期した
男女共に強烈に個性的な登場人物たちが、思い思いに笑ったり吠えたり、怒ったり訝しんだり、拗ねたり取り澄ましたり、デレデレしたり、こそこそしたり……。
顔や身体の一部をアップにする。
シャドーを付ける。
きり抜く。
モノクロームにする。
InDesignにPhotoshopやIllustratorを組ませた加工が随所に精緻に施されていた。
結果的に、人間という不可解全開の素の貌が余すところなく曝け出されている。
似顔絵は、清田社長がシマウマ、竹山監督がビーバー、百目鬼肇がアライグマ、佐々木豪がサラブレッド、林美智佳がラマ、倉科徹がセイウチ、佐藤プロデューサーがサギになっている。
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