第70話 ボランティア内の確執と翡翠書房の評判
まず草間吟司刑事が口火をきる。
「ボランティア代表の善財亜希子と恭一郎母子を探りました。情報元は副代表の兵藤文恵です。兵藤によりますと、金銭が絡まないだけボランティア活動には気苦労が付きもので、分けても善財亜希子との確執は修復不可能な状態まで来ていたようです」
そこから中島祥吾刑事が引き取る。
「息子の恭一郎は、ネット株投資家の引き籠り同然でいながら、どういうわけか映画製作には熱心でして、しつこく追いかけまわしていたのが林美智佳だったそうです。ストーカー行為を働いていたと
そこで再び草間刑事にバトンタッチする。
「つぎに、翡翠書房営業部長の香山ですが、市内でも老舗の天馬堂書店の大屋寛治に面談しました。県下にいくつかかある出版社の内でも、翡翠書房はとりわけ良心的な出版社として、地元の書店業界でも大事にしているそうです。香山は誠実一辺倒で、自分の店でも引き抜きたいほど優秀な青年だと言ってべた褒めでした。『あいにく、宝月諒子社長に心酔しているから、誘ってもなびかねえがね』と笑っていました」
またしても座がどっと湧く。
貫太郎は面白くなかった。
――香山部長が心酔しているのは諒子社長ではなく、文花編集長ではないのか?
なにかにつけ文花の面影がちらつく。
そんな自分が情けなくて仕方がない。
「ほかにも数軒の書店をまわりましたが、どこでも同じ評価で、翡翠書房および香山についてのわるい話は聞きませんでした」中島刑事が締め、第3班の報告に移った。
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