第68話 捜査会議での報告スタート


 

 午後9時――。

 高砂警察署2階の刑事課で「映画女優殺人事件」の捜査会議が始まった。

 刑事席と対峙する雛壇に矢崎刑事課長、百瀬署長、吉澤副署長の3人がいる。


「では、矢崎くん。聞きこみの成果を報告させてくれ」

 百瀬署長の前に太い首を突き出すようにして吉澤副署長が矢崎刑事課長に命じた。


「承知しました。まず第1班の有賀係長、ポイントを抑え過不足のない報告を頼む」

 やや緊張した面持ちの有賀太一警部補が立ち上がる。


「われわれは東京へ飛んで、清田哲司、竹山俊司、佐々木豪、倉科徹の身辺を洗いました。配給会社・シネマビレッジの経営は、相当に苦しいようです。銀行から軒並み融資を断られ、町金にも手を出して、二進にっち三進さっちも行かない状況になっています。足許を見た監督の竹岡は、さっそくつぎの金蔓探しに飛びまわっているようです」


 花を持たせるつもりか、有賀警部補に顎をしゃくられた折井刑事が補足する。

「俳優の佐々木豪についてはまったくボロが出ませんでした。若いうちからちやほやされて己惚れがちな仕事のわりには、なかなか練れた男と見受けられました。一方、六本木の全信の応接室にふんぞり返った倉科徹は、当初、田舎刑事がなにしに来たと言わんばかりの横柄な態度でしたが、協力の如何によっては、場所を高砂署に移してもいいんですよと耳打ちしたら、急におとなしくなりました」最後はにやりとした。


「おいおい、たいがいにしとけよ。相手が相手だから、マスコミに焚き付けられたら厄介だぞ」勇み足に釘を刺した矢崎刑事課長は、苦い顔をそのまま貫太郎に向ける。


「東京ついでだ。つづいて、第5班の乾刑事と曽山刑事、成果を報告してくれ」

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