第51話 司法解剖の結果報告&鑑識の説明
吉澤副署長が緊迫した声を発したので、貫太郎はわれに返る。
「司法解剖の結果が出たようだ。矢崎刑事課長、発表してくれ」
A4判の紙片を渡された矢崎刑事課長は朗々と読み上げる。
「老鶯大学法医学研究室が老鶯病院において神頭達也外科医長による司法解剖を行った結果、死因は刃渡り20センチ、刃幅3センチの鋭利な刃物による刺殺と判明。心臓をひと突き。手等に防御傷は見られない。脇腹の下の背中側に、縦15センチ、横6センチの不定形の青痣あり。死亡推定時間は午後4時前後30分。以上です」
「つづいて鑑識から報告してくれ。和田くん、頼む」
鑑識係の和田巡査部長が立ち上がり淡々と述べる。
「凶器は三徳包丁と断定しました。いわゆる文化包丁です。演台の下から発見された被害者のバッグの中身は、携帯電話、財布、システム手帳、ハンカチ、化粧ポーチ、ポケットティッシュ。以上です。パーティ用の小ぶりなバッグに、ぎゅうぎゅうに詰めこんでありました」
となりの百瀬署長と小声で相談していた吉澤副署長が、居並ぶ刑事たちに向き直り
「それでは捜査方針を告げる。痴情のもつれ、金銭トラブル、ストーカーなどの被害等々、いまのところ動機は不明だが、いずれにしても映画製作にまつわるトラブルと見てよいだろう。手分けして映画関係者の身辺を当たってくれ。高砂警察署の面子にかけ、丹念にして慎重な初動捜査を頼むぞ。みんな、いいな?」決然と申し渡すと、
――はいっ!
他の刑事たちと一緒に、貫太郎も気合いの入った返事を響かせた。
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