第三話
3:
「ふぅ……」
ようやく落ち着いた。ようやくだ。
お風呂から上がって、寝巻きに着替えて自室に戻る。
ここもまた、新品同様の真新しい部屋で――私の部屋だ。
私がお風呂に入るということで、秦太郎さんと番太さんと源之助さんが帰っていった。
しかしまた朝に様子を伺いに来るそうな。
しばらくはそうなるらしい……。
「さて、と」
受験勉強だ。
三月で卒業式も終わり、とっくに高校の入試試験は終わっていたが、私は定員割れした高校の、二次募集している入試試験を受ける事になっていた。
本来ならば私は、高校へ行かずに中学校卒業から働き口を探す事になっていた。
奨学金とかの学資ローンを組むよりも、一度働きに出て貯めたお金で、夜間の定時制に通うか通信で高校卒業の資格を、と考えていたからだ。
しかし卒業の手前二月頭に、あの兄が現れて……引き取ると言ってくれて、私は半ば諦めていた高校入学という希望を手に入れることができた。
高校入試の事で二次募集になら、まだ間に合うと。あのお兄さんが早回しでここまでやってくれた。
とにかく二次試験一発勝負だ。これに落ちたら浪人かまたは、諦めるかもしれない。
勉強机……といってもデスクではなく、ちゃぶ台のテーブルなのだが、あと三日で二次募集の試験になる。
中学での成績の具合は、中~中の上のあたりをふらふらしていた。
本当だったら学校の成績と模試の具合とそれから、自分との長期的な相談で、自分に合った高校を選ぶものだが……自分にとっては行けるだけでありがたいものだ。諦めていただけに。
施設を離れる際、学校の担任曰く「柴田だったらこの高校は楽勝だ。これだったらもっと上のも(以下省略)」らしい。
楽だといっても周りがそう言うだけで、決して気を抜いてはいけない!
ぐっと、両手にこぶしを握る。
昼間の事や先ほどのてんやわんやがあったが、気疲れに根負けしていられない。
まだ、あともう少しだけ学校に行けるんだ。
正直、クラスメイトが嫌な顔をしてやっている試験勉強が羨ましかった。
周りは新しい学校へ行くのに、自分だけが学校へ行けず、社会へ出て働くことが、孤立したようで寂しかった。
(よし、がんばろう!)
部屋の明かりを消して、準備万端!
スタンドライトが照らすテーブルの上に、ノートと参考書を広げる。
ついでに言うと、勉強を始めてしばらくたってから、隣の部屋から龍之介のいびき声が聞こえてきて苦笑した。
お兄さん、ありがとうございます。
平穏な三日を経て――
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