第67話 分析!


氷が打撃で非凡な才能を見せて1週間。



部の中でも氷の噂はすぐに広まって、これまで不思議な鈍臭い女の子と思われてたらしいが、バットコントロールの仕方を上級生までもが聞きにいってるみたいだ。



先週の練習試合では、梨花と桔梗が結果を残せた。かのんと七瀬は結果が振るわなかった。



西梨花

2回1/3、被安打1、四死球0、失点0、奪三振2



七瀬皐月

2回、被安打3、四死球1、失点0、奪三振1



橘桔梗

4打数2安打1本塁打2打点。



四条かのん

3打数0安打1四球1盗塁0打点。




梨花は6.7回で登板予定だったが、期待の表れか5回ツーアウト2.3塁のピンチで緊急登板させられ、しっかりと三振に抑えてナイスリリーフを見せた。



七瀬はイマイチだったみたいで、6回は3人で抑えたが7回に1番からの攻撃で連打と四球で2失点したが、後続をどうにか抑えたようだ。



桔梗は高校初打席で初本塁打を放ったみたいだ。

その後もツーベースを打ってバットでもしっかりとアピールを出来たようだ。



かのんはいい所があんまりなく、四球を1つ取ってすぐに2塁への盗塁を成功させたくらいだったみたいでやや不機嫌なご様子だった。



4月最後の土、日曜日で4試合の練習試合がある。

投手が結構必要になるが、3年と2年で投手6人もいて梨花と七瀬もいるから良い悪い別として投手は沢山いる。



今回は美咲と氷も一軍帯同することになった。


氷は代打で打てるかが肝になるだろうが、相手もそんなに強くないみたいなので代打で3試合出れれば1本はまず打ってくるだろう。


美咲が選ばれたのはよく分からないが、使うとしたらピッチャーとしてか、守備固め要員かどちらかだろう。




5月には春季地区大会があるが、4月のレクリエーションに行く前の春季県大会はあまりにもあっさりと負けていたことを言うのを忘れていた。




ということで春季地区大会出場はならず、シードももちろん取れなかった。





1番重要な全国高等学校女子野球選手権大会。

夏の甲子園大会の予選というやつだ。



6月第3土曜日から大会の予選が開始して、7月2週には全国全ての甲子園出場校が決まって、7月3週から7月4週の2週間かからずに全国制覇するチームが決まる。



男子は予選出場する高校が4000校くらいあるらしいが、女子は地域差が結構あり全国で約800校。



福岡は特に女子野球が盛んで、東京、大阪に次ぐ40校ある為、一昨年から福岡沖縄京都は2校甲子園出場が出来る。



福岡は盛んで他県からも多く選手が来るし、最近だとかなりレベルが上がってきている。



福岡には4校強豪校と呼ばれている高校がある。




城西高校。


姉が甲子園で準優勝し、天見監督も3年時に甲子園出場してそれから監督と変わらず11年目になる監督率いるチームで、福岡の中では全国的に知名度が高い高校だ。



福岡国際高校。


柳生の姉の結衣、入るはずだった多賀谷さんが入学したチーム。

福岡の中でもマンモス校でとてもお金があるらしく、いい選手はどんどん集める高校で、女子野球部は一般的に1年から3年合わせて40人前後と言われてる中で、ここは80人前後の選手たちが在籍している。




唯一の県立校の福岡商業高校。



地域密着型の高校で、優秀な監督とコーチが先生としても働いており福岡で野球をしていて、公立に行きたい女の子達にかなり人気のある高校。

もちろん優秀な選手は推薦で入学しているみだいた。




天神女学院高校。



ここ5年で4度の甲子園出場の福岡の現最強高校。


どちらかというと福岡県内の選手よりも九州圏内の各地域の有名な選手を取っているイメージ。


今年の春の甲子園も出場して、ベスト8でスタメンの7人が福岡県内の選手ではなかった。





因みに島根と鳥取は2県合わせても13校しかないらしい。



女子野球は予選のメンバーが20人で男子と違い甲子園でも20人までベンチ入りできる。


試合は1回から7回までで、延長戦は即タイブレークでノーアウトランナー1.2塁からの攻撃となる。



他には甲子園のフェンスが両翼、センターが10m短いくらいでそれ以外は普通の野球と同じだ。




白星高校は現在3年生8人、2年生11人、1年生16人。



3年生も元々は14人くらいいたらしいが、少しずつ数が減って8人になったらしい。


2年生も特待生が5人で、一般生6人で一般生で野球部に残った人は全員野球経験者だったのが救いだったみたいだ。


そう考えると、今年の1年16人プラスマネージャーはかなり多い気もする。



ここ最近5試合の今のところのレギュラーを紹介しておこう。



1番ショート 2年 大湊聖(おおみなとひじり)。


去年練習を見に行った時のピッチャーの特待生の1人だったが、監督に野手としての才能を見出されて1年でレギュラーを取った実力者だ。



2番セカンド 3年 高橋二三。


俺に対する意地の悪さは一流だ。

選手としてはまぁまぁと言った感じか。

打撃の調子を戻してきてレギュラーに復帰してきた。



3番サード 3年 末松澪。


キャプテン。

他は前説明した通りだ。

チームで1番のバッターは彼女で間違いないだろう。



4番レフト 3年 逢坂音々。


右のエースの逢坂先輩は海崎先輩にエースの座を取られて以来、先発しない時は4番でレフトで出場している。

長打力があるようなタイプではないが、チーム打率2位で得点圏打率も良い。右投手を滅法得意にしているが左投手には滅法弱い。



それか、2年生の遠山苺(とおやまいちご)。



登板している時は2年の遠山先輩が代わりに試合に出ることが多い。


足がとても速く、盗塁の技術が高いため試合に出る時は1.2番で試合に出ることが多いが少しだけ打撃に難があるため確実性を増さないと上位打線では使いずらいかもしれない。



5番キャッチャー 3年 三本木創。



パワーはあるが確実性がもうちょっとあると打線も安定するのだが…。

他は前に説明した通り。



6番ファースト 2年 進藤桜(しんどうさくら)。



最近は桔梗が試合に出ることが多く、レギュラーの中で1番立場が怪しいかもしれない。


タイプも桔梗と少し似ており、長打力が売りのバッターでストレートを打つのが上手いが変化球の対応が良くない。


ファーストとして守備範囲などはそこまで変わらないが、桔梗のハンドリングと比べるとノックでも弾いたり逸らしたりするのが目立ってしまう。


本職はサードらしいがキャプテンがいるのでファーストをしている可能性もある。



7番ライト 2年 瀧上舞。


この前内野の特守を行ったが、内野守備も中堅校のレギュラークラスはありそうだった。


外野守備はどこを守らせてもチームで1番上手いだろう。

弱点はあんまり強くない肩だが、それを感じさせない守備範囲と取ってから投げるまでのスピードと正確なコントロールで補っている。



打撃がとても不安定で、1打席目いい感じにヒット打ったと思えば2.3打席目三球三振してくるようなバッターだ。

スイングスピードも速くパワーもあるがとにかく打席で何考えて打っているかが分からない。




8番センター 3年 北上沙羅。


とにかくワガママで気に入らないことは全て押し付けてくる。

センターの守備だけは上手く、外野をまとめるリーダーシップもあるらしい。

打撃はお察しだが。



9番ピッチャー 2年 海崎詩音。


珍しい左のアンダースロー。

去年よりもストレートのスピードが速くなってコントロールも良くなっている。

身長が低いのは少し弱点になるが、お尻から足までがかなり鍛えられているのがわかる。

アンダースロー特有の打たせてとるピッチングではなくガンガン三振を狙いに行く強気の投手だ。






俺はスタメンをノートに書いて、残りのベンチ入りのメンバーを考えていた。


2年3年を全員スタメンベンチにしても1人だけは1年からベンチ入りできる。



そのレベルにない2年生もいるからもっと実際はレギュラーにくい込んでくるとは思うが。



俺はみんなの打撃練習を見ながら夏の大会のことを考えていた。

まだ俺は試合に行ったこともなければ、試合も見た事もない。


目の前にいる練習を頑張っている1年生と数少ない2年生をしっかりと指導してあげるだけだ。




「全然ボールがバットに当たらないッス!」





元気よく空振りしている雪山を冷ややかな目でみながら、今年の夏の大会をとても楽しみにしていた。



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