第28話 襲来!
「東奈くん!なんか大人しそうな子が校門で待ってるよ!」
クラスメイトの女子がわざわざ俺のところまで教えてきてくれた。
俺は何となく心当たりがあった。
江波さんが1番の有力候補だが、江波さんじゃない気がする。
いい人そうな皮を被った小悪魔という可能性も…。
校門に行くとあんまり見なれない制服の女の子が青色の傘をさして後ろを向いていた。
背格好からして江波さんだった。
最近連絡は取り合ってたが、特待の話詳しい話をするのと、うちの室内練習場で高校に入るまでに基礎をしっかりとして固めてもらう為に、俺の住んでいる地域に来れる時に来てと連絡は前にしておいた。
予報が雨だから練習も休みでスカウトも出来ないと踏んで来たのだろう。
流石は周りがよく見てる俺のスカウト第1号選手だと、自分のことも江波さんのことも心の中で褒めちぎった。
「江波さん!こんにちは!」
「あ!こんにちはっ!」
いつものように元気よく挨拶してくれた。
会うのは3週間ぶりだった。
いや、もう4週間ぶりかな?
「ししょーーー!!!」
ん?ししょー?
「かのちゃんがなんでここに…。」
まさかの待っているのはかのちゃんだった…?
本当に心の底から何故こんな所にいるのかと思ってしまった。
ん?何かおかしいぞ?
「ししょーーーー!!!」
目の前には俺のスカウト第1号の江波夏実ちゃんがいる。
この声は後ろから聞こえた。
「江波さんとかのちゃんがいるやんけ!!!」
真後ろから傘をさしている俺になんの躊躇もなく飛びついてきた。
「あ、あの…。東奈くん。後ろに抱きついてるのは彼女さんですか?」
多分ピュアであろう江波さんは後ろにくっついているかのちゃんに驚いている。
というよりもショックを受けているのか?
「ん?あなたは誰ー?かのんはかのん!ししょーはししょー!」
江波さんは必死に頭を回転させている。
多分訳が分からないんだろう、俺も今どうなってるかよく分からなかった。
「江波さんが思ってるような関係じゃないよ。だから、とりあえず落ち着こう。俺もよく分かってないし。」
俺は笑ってそう答えた。
俺が笑ったのか江波さんも釣られて笑って少しは落ち着いたようだ。
そんなことより俺の後ろに爆弾が引っ付いている。
「かのちゃん…ちょっと一旦降りてくれないかな?」
「はーいっ!」
元気よくそのまま飛ぶように降りた。
「その傘と帽子はなに!?」
どこから持ってか分からないが和傘をさして、頭に麦わら帽子を被っている。
しかも、私服じゃなく制服にこれはヤバいくないか?
俺は思ってもいないような事がどんどん起きるのでこの30分くらいで一日の脳の機能が終わった。
俺は引率の先生のようにとりあえず、俺の家に女の子2人を連れていくことにした。
周りの目が少し痛かったが、いち早く家に帰ってかのちゃんが何故ここにいるか聞かないといけない。
まず間違いなく桔梗と同じ学校というのを知っていたからここまで辿り着けたんだろうが、桔梗に会いに学校に遊びに来たという訳でもないだろう。
結構学校まで近いが、今日に限ってはかのちゃんの質問攻めなどで家までがやたら遠く感じた。
「ふぅ。とりあえず2人とも家に上がって。」
「はい。お邪魔します。」
「お邪魔しますー!」
かのちゃんは靴を脱ぎ捨てて家の中に入るかと思ったら、靴はちゃんと整えてから家に入った。
「あの東奈くん。彼女は一体…。」
「はっきり言って俺もまじでよく分からない。分かってることはおてんば娘で滅茶苦茶足が早いってことくらい。」
「ねぇ、ししょー?野球しようよー。桔梗が言ってたんだ。ししょーの家には雨でもたくさん練習出来るって。」
「桔梗ちゃんのせいかよ…。いや、桔梗ちゃんのせいではないよな。」
かのちゃんの話をまとめると最近雨で練習できず、昨日も練習の途中で雨が降って野球がほとんど出来なかった。
それで桔梗が俺のところなら何時でも練習出来るという話を聞いて飛んできたらしい。
「江波さんは来るの早かったけど、学校は?」
「今日中間テストだったんだ。何時もより1時間早く終わったからちょっと驚かせようと学校まで来てみたんだ!」
なんていい子なんだ。
ちゃんと今日も指導をしてあげないと。
早くも俺はコーチとして江波さんを立派な選手にすると意気込んでいた。
「それで、かのちゃんは学校は…?」
「え?途中で帰った!野球したかったし!」
「まぁ、そうだよね…。」
俺は当たり前のことを聞いたと思ってしまった。
そんなに気が利くような子ではないと思ったし、学校を途中で居なくなってるなんて普通に有り得そうだ。
「2人とも練習場に行くけど、ちゃんと着替えは持ってきたよね?」
「「はーい!」」
俺は室内練習場に案内し、着替えをそこでさせた。
俺は自分の着替えのために部屋まで戻った。
着替えの途中で乱入しないように結構時間を空けて室内練習に行くことにした。
流石に15分くらい経っていけば大丈夫だった。
2人は仲良さそうに二人一組のストレッチを早々とやっていた。
「し、ししょー!なつみちゃんね、お胸がね…。」
「こら!そんなことを言っちゃダメ!」
何かいいことを聞けそうだったが、江波さんの鉄壁の守備で自分の恥ずかしいところを阻止することに成功していた。
2人は結構仲良くじゃれあっているようだった。
最初は困惑していた江波さんだったが、変わった子ではあるが決して悪い子ではないかのちゃんのことをあっさりと受け入れていた。
俺は少しだけかのちゃんに期待をしていた。
走塁、盗塁面はキャッチャー視点でしか教えられないからそこら辺はかのちゃんが江波さんに教えてもらえたらいいんだが…。
「江波さん、ちょっと来て。」
「はーい!どうしたの?」
「かのちゃんのプレーはよく見ておいた方がいいよ。彼女この前の大会のMVP選手で実力は確かで、盗塁と走塁技術は凄いから、今日は走塁、盗塁練習出来るかどうか分からないけど教えて貰えるなら教えてもらった方がいいよ。」
「うん!わかった!」
そういうとかのちゃんの元に戻り、談笑しながらストレッチを続けていた。
そして、その後2人はキャッチボールをしていた。
横でその姿を見ていたが、一応投手である江波さんよりも速い球をかのちゃんが投げていて少し悲しい気持ちになった。
「江波さんちょっと投げ方教えるから、こっちにきて! かのちゃんはバッティングマシンセットしておいたからちょっとそれで打撃練習しててー!」
江波さんは投球フォームは結構大きなフォームで躍動感のあるフォームに見えるし、下半身の使い方も悪くなかった。
「んー。どうしよう。」
俺はちょっとした葛藤と戦っていた。
「ん?どうしたの?難しい顔して。」
「ちょっとだけ身体触らせて貰えない?セクハラとかじゃなくてちょっとどれくらい身体かどうか確認したくて。」
どれくらいの身体が確認したくてって言い方がもう普通にアウトだろう。
それ以外になんて言えばよかったかも分からなかったので誠意を見せれば大丈夫だろう。
「え?エッチなことするんじゃないよね…?」
俺の事を信じてくれてるためか、嫌がらないところがなぜか逆にエロさを感じる。
「そんな事ないない!これも一流選手になる為に必要なんだ!」
そういうと身体を触らせてくれたが、ガチガチに緊張してるのか全然何も分からない。
「流石に緊張しすぎでこれじゃ何も分からないよ…。」
「流石に恥ずかしい!どうにかならないの!?」
「困っているようだねぇ。ここでかのん様が助けてあげましょー!」
俺は素直に力を借りることにした。
1回1回指示を出してあらゆる角度から身体を押して可動域を見たり、身体の柔軟など全身くまなく調べあげた。
「次は、ここにある筋トレの器具を使ってどれくらいどこの筋力があるのかを調べるね。」
かのちゃんは体を調べるといつの間にかいなくなっていて、バッティングマシンで快音を室内練習に響かせていた。
相変わらず綺麗な1本足のフォームだ。
「うーん…。江波さんちゃんと筋トレしたりしてる?」
「えっーと…。筋トレ凄く苦手で全然やってない…。」
筋力測定しようとしたが、あまりにも筋力が足りておらず測定どころじゃなかったので質問してみた。
唯一まともなのは走り込みで鍛えた下半身はしっかりとしていた。
「とりあえず、今から教える筋トレ方法8つ位あるからそれを決まった日にやろうか。これは小学生でも出来る体に負担がかかりづらくて、筋力量が少ない人でも出来るように作ってあるからそれをまず覚えよう。」
「わかった!頑張る!」
俺は江波さんをマンツーマンで指導していた。
普通にかのちゃんのことを忘れていた。
「ししょーーー!!野球やろーよー!」
おてんば娘を放置するには流石に時間の限界だった。
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