第27話 昔のチームメイト!




あの合同練習からもう3週間が経過し、6月に突入にした。



毎年6月半ばから梅雨の季節に入るため、なかなか練習を見に行くのが大変になる。



ここからはとりあえず少し遠征することに決めた。


練習を毎日遠くまで見に行くのは難しいので、遠くに行く場合は自分で精査したリストの中から更に絞って、気になる選手を見に行くことにした。


試合を見る為に遠征する場合は、両チームどちらも見た事がないチーム優先にした。




学校でも色々とスカウトの内容を見直したり、使える時間はそっちに力を入れた。




「うーん。次はどの選手を見に行こうか…。」





「よぉ。龍、結構頑張ってるな。」




そう言って俺の隣にやってきたのやっぱりアイツだった。




「蓮司か。頑張ってはいるんだけど、中々上手くいかないもんだよ。」




「あはは。いつも野球の事に関しては苦労したところ見た事なかったから、ちょっとくらい苦労してもバチは当たらねぇと思うけどな。」




「もう少し応援しろよ。てか、お前勉強大丈夫か?無理なら他のところ行っても大丈夫だぞ?」




「ふん!俺は学校1度も休んだことがない!内申点もいいはず!推薦してもらっていくぜ!」





俺はまぁそれならまだ行けるかと思ったが、やっぱり勉強する気はないみたいだ。



今週はほとんど雨らしく、室内練習でいつも通りに練習するしか無かった。



もうそろそろ学校が終わって家に帰ろうとしていた時、結構強い雨が降り始めた。



雨が降るとスカウトどころの話じゃないので、野球をやっていた時はすごく嬉しかったが今はこんなに忌々しく思っている。



そんなこと言っても仕方ないと思いつつ、帰る用意をしていた。





「なぁ、りゅーちゃん。ちょっといいか?」



そう呼ぶのは小学生時代一緒に全国制覇した仲間の1人で、部活動の軟式野球部のキャプテンの河野浩一だった。




「お、こーちゃん。どうかした?」




「ちょっとだけ相談があるんだけど、時間あるか?」




俺はいつもの直感が発動した。

これは嫌な相談をされる時の雰囲気だ。



だが、小学生の時の仲間の話を無下にすることは出来なかったから仕方なく話を聞くことにした。




「野球を辞めたお前に頼むことじゃないのは分かってるけど、俺たちの最後の夏の大会の監督をやってくれないか?」





俺は思ったよりも無理難題が降り掛かってきて頭が痛くなってきた。




そういう話じゃないかと俺は分かっていた。

こーちゃんも俺が薄々気がついてると分かってて話してきているはずだ。



去年の冬に野球部の監督が不祥事を起こした。


小学生のチームメイトはほとんどが硬式クラブチームに行き、こーちゃんだけは軟式野球部に入部した。



残念ながら黄金世代と言われた俺たちは学校の部活に貢献できなかった。


野球部はそのせいかこの地区でも弱小と呼ばれていた。



野球顧問の先生は自分達の教え子たちは全然ダメで、野球部じゃない生徒たちは結構華々しい活躍をしていた。



野球部の練習は練習じゃなくただのしごきだと少しずつ噂が広まっていった。



野球部は新チームになってから約半年間暴力やしごきが繰り返されたのが分かり、顧問2人が学校を解雇されて部員も30人いたが、10人になってしまった。




顧問をやってくれる人がおらず、掛け持ちで女の先生が顧問になってくれたらしい。



まともな指導者もおらず、部員もほとんどいない野球部には1年生達は入ってこなかった。




現在部員12人で、何とか野球部をやってるがこのままだと野球部自体がなくなってしまうとこーちゃんは悲しそうにしていた。




「りゅーちゃんのこと知らない人は野球部にはいないし、監督頼んでみるって言ったら物凄く喜んでた!だから、1試合でいいから監督やってくれないか?」




「わかったよ。こんな事言うのもあれだけど、すぐ負けるだろうからやるよ。」



俺は冗談っぽく笑いながら、こーちゃんが手に持っていた入部届けにささっと名前を書いてそのまま手渡した。



「時間があれば、野球部にも顔出すようにするよ。」




「ありがとう!俺に手伝えることあれば言ってくれ!」



こういう大変なときはお互い様だ。

俺は気にするなという仕草をして立ち去ろうした。




だが俺はふとあることを思いつき、恩は早めに返してもらおうと思った。




「ちょっと教えてもらいたいことがあるんやけど。軟式でこーちゃんが知ってる女子選手で、この子は結構上手いよって選手いる?」




俺は軟式野球部の女子選手まではさすがに情報を集められなかった。


だからこそプレイヤーに聞くのが1番だと思ったし、こーちゃんは野球部のキャプテンで実力も小学生時代の話だが上手かったし、見る目はあるだろう。




「女子選手?そうだなぁ…。」



こーちゃんは近くの椅子に座り、かなりじっくりと考えていた。


女子硬式クラブが盛んになってからはわざわざ男子ばかりの軟式野球部に入る子は少ないが、経済的理由や身体がしっかりと出来上がるまでは硬式をやらせないという方針の親もいるので、少数ではあるが軟式の女子選手もいる。




「男子基準で考えると流石にいないけど、女子選手として考えるなら上手いんじゃないかって選手は2人はいるな。」




「お、まじで?ちょっと名前とか出身中学とか分からないか?」



俺の食いつきに少し疑問を持っていたようだが、この質問くらいで有り難がられるなら儲けもんと思ったのか笑顔になって答えてくれた。




「1人は同じ地区の福岡南中学の外野手の王寺凛(おうじりん)さん。確か、去年の練習試合では7番レフトを守ってたはず。男子に混ざってたけど、下手とも上手いとも思わなかったってことは女子としては上手いんじゃないかな?」




「なるほどな。」




「もう1人は、城南中央中学の名前は…。覚えてないわ。サード守ってた気がする。彼女も同じであんまり覚えてないけど男子に混じっても劣ってなかった気がする。」




俺は思わぬ所からいい情報を得た。

今は硬式クラブチームが出来たおかげで、強豪校は流石に軟式野球部までには目が届いてないと思った。



いい選手ならスカウト出来れば成功率は他のクラブチームの選手よりも勝算はある。




「どうしてそんなこと聞くんだ?」




「まぁ、時が来たら教えるわ!けどこの情報は助かる!」




俺はいい情報を得てウキウキ気分で帰宅しようとしていた。




「あ、東奈くん!なんか大人しそうな感じの女の子が校門で待ってるよ!」





俺の事を誰かが待っているらしい。





とりあえず待たせるのも悪いので慌てて校門に向かうことにした。





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