第33話 エミリア・パージ・エルデン
魔王城攻略戦は終わった。
戦いは見事に人間が勝利を掴んだ。
人々は歓喜した。
勝利の宴は何日も続き。
そして皆、国に帰っていった。
これはその後の話である。
~あれから一年~
俺は今、エルデンに住んでいる。
厄災2波が来たあの平原だ。
ここには小さな村が出来ていた。
・エリシャ
「浩二、今日はにゃにする?」
朝早くからエリシャがやって来る。
玄関をノックしてから入りなさい。
・リーム
「今日はあの大戦から丁度一年です。
ちゃんと弔わなきゃダメでしょ。」
リームもやって来た。
あの大戦で無くなった人達が居る。
兵士として魔物に突撃した者。
捕虜となる事を拒み死を選んだ者。
最後まで戦ったアキナの勇者。
厄災で犠牲となった多くの魂。
戦いの後グランデ王は提案した。
毎年この日は喪に服す事を決めた。
そして騒いで悲しみを乗り越えようと。
・リンネ
「こんにちわ。」
・サリウス
「久しぶりだね、浩二。」
リンネ達もやって来た。
大戦後、彼らは夫婦となった。
サリウスはフーバ王となる。
二人で国を再建するつもりだ。
リンネとサリウス。
二人なら大丈夫だろう、その証拠に。
彼女のお腹には新しい命が宿っている。
・「久しぶりだな。
王妃様と王様と呼んだ方が良いか?」
茶化してやった。
・サリウス
「冗談はやめてよ。」
照れるサリウス。
・リンネ
「まだ王と呼ぶには早いです。
サリウスはまだまだ未熟。
これから習う事が沢山あります。
今は形だけの王。
もっと王らしくして欲しいものです。」
凹むサリウス。
・リンネ
「でも、いつかは世界一の王となる。
私はそう信じています。」
二人は見つめ合う。
そして二人の世界に入った。
ノロケは来る前に済ませて置いて下さい。
ダメだ、ほっとこう。
・ライ
「兄ちゃん!来たぞぉ~」
元気な声が聞こえた。
・スイ
「ライ、お行儀が悪いわよ。」
この村には数名の元兵士が住んでいる。
他にはスイとライ。
そしてエリシャとリームが移住した。
もうすぐエミリアも来る予定だ。
そして、、、
・???
「浩二さん。
これ良かったら食べて下さい。」
とても美しい女性が入って来た。
・???
「今日が厄災終戦日だったね。」
一人の魔族も入ってくる。
・スイ
「お母さん、浩二は食べないわよ?
この人、野菜苦手だもの。」
スイの両親だ。
能力『想像力』『妄想力』『具現化』
俺はそのすべてを理解した。
『想像力』ではなかったのだ。
それを理解してはっきり解ったんだ。
俺は勘違いしてた。
エミリアに教えられてからずっと。
・『妄想力』
思い描いた事を頭の中に構築する
・『具現化』
構築された思考に質量を与えられる
・『創造力』
万物を創造する
そう俺の力とは。
『思い描いた願いを叶える』
そんな力だった。
・スイ
「ねぇ浩二、お母さんの野菜料理食べる?」
スイはあれから印象がかなり変化した。
俺が両親を創造してからね。
何だろう子供っぽくなったというか。
良く甘えて来るようになった。
エリシャもスイも大人っぽかったのに。
よく解らん。
・「もちろん頂くよ。
フローリアさん、ありがとうございます。」
スイのお母さんはフローリアさんと言う。
そしてお父さんはアスチャートさんだ。
俺はアスさんと呼んでるけどね。
・フローリア
「良かった、、、スイがね。
浩二もお野菜好きになってほしいなんて言うから、お母さん頑張っちゃおうって思って作ったの、ちなみにスイも一緒に作ったのよ。」
・スイ
「ちょっと、お母さん。」
・アスチャート
「照れるな照れるな。
良いじゃないか、なぁ母さん。」
・フローリア
「ねぇ、あなた」
こちらも仲の良いご夫婦で。
只今、我が家で2組がイチャついてます。
余所でやりなさい。
・スイ
「えっと、美味しくなかったら捨ててね。」
スイが恥ずかしそうにしている。
ちょっと可愛い。
・エリシャ
「にゃかにゃか美味しいよ?」
俺の手にある皿からエリシャが摘まむ。
いつの間に、、、
・エリシャ
「スイは料理が上手だね。
これにゃらいくらでも入る。」
そんな事を言いながらムシャムシャ食べる。
そんな姿を見たスイがキレた。
・スイ
「エリシャ、、、ちょっと表に出な。」
スイさんが怖い、、、
エリシャも怖がっとる、、、
俺に隠れるな、お前が蒔いた種だろ?
・リーム
「もう、エリシャが悪いんだよ!
しっかり謝りなさい。」
リームに言われて謝るエリシャ。
実に賑やかだ。
・フローリア
「後はエミリアちゃんが来たら全員かな?」
・スイ
「そうね、エミリアまだかしら?」
・アスチャート
「迎えに行こうか?」
アスさんは魔族だ。
しかし今では魔族を差別する人は居ない。
もちろんゼロとは言わないさ。
だがここエルデンではゼロだと断言できる。
なあエミリア。
全ては君のお陰だよ。
・???
「終戦記念日の儀が始まるわよ。
みんなこっちに来て。」
奥から優しい声が聞こえる。
・???
「遠方からありがとうございます。
聞く所によれば王様と王妃様だとか。
こんな狭い我が家で申し訳ない。」
腰の低そうな男性も現れる。
・サリウス
「初めまして、サリウスと申します。」
・リンネ
「妻のリンネです。
浩二さんは私達の恩人です。
何も気になさらずにお願いします。」
二人が挨拶をする。
そう言えばこの二人は初めてか。
・「紹介するよ。
母の京子と、父の幸三です。」
俺は両親も創造した。
この美しい世界を見て欲しかったから。
素晴らしい仲間も。
・エミリア
「遅くなってごめんね。」
エミリアが登場した。
・コーン
「いやはや、遅れて申し訳ない。」
ついでにコーンも。
・幸三
「これで全員ですね。
ではこちらへ。」
俺達は庭に移動する
今日は実にいい天気だ。
・幸三
「では記念の儀を取り行います。
エミリアさん、宜しく。」
エミリアはよくこの家に来ている。
両親とは仲が良いのだ。
・コーン
「幸三殿!今日は私が勝ちますぞ。」
コーンと父さんはいつも飲み比べをしている、いつもコーンが負けるけどね。
・エミリア
「みんな、集まってくれてありがとう。
こうして皆が一緒に居るのも久しぶりね。
一年前、私達は絶望の淵に居ました。
でも、私達はこうして生きています。
全ては浩二のお陰で。」
違うよ、エミリア。
あの時、絶望の淵にいたのは俺だ。
孤独と言う地獄の中に居た。
それを助け出したのは君だ。
俺はただ、恩を返しただけだ。
・エミリア
「多くの者が亡くなりました。
多くの血が流れ、散って行った。
ですが悲しんではいけません。
彼らのお陰で繋いだ命。
顔を上げて進むのです。
彼らに感謝の意を。
そして全ての命に祝福を。」
エミリアの祈りが始まる。
みんなも目を瞑って祈る。
平和な時代がやって来た。
もう100年の厄災に怯える必要はない。
ここからは新しい時代だ。
どう進むかはそこに生きる人次第。
俺は今日一日をかみしめて生きよう。
愛する家族と共に、、、
・コーン
「して、浩二殿。
どなたを嫁に娶るか決めましたかな?
それとも全員ですかな?
浩二殿なら大丈夫でしょう!」
貴様、既に酔ってるな?
勝手に爆弾落とすんじゃないよ。
大丈夫ってなんだよ。
・ロドルフ
「エミリアを推薦する。
そういう約束だ。」
エルデン王よ、いつの間に来ていた?
王様なんだからもっと存在感出せや。
・アスチャート
「王よ、それは譲れねぇ。
浩二はスイのモンだって決まってる。」
アスさんも酔ってるよね?
あんたら祈りの時に飲んでたな?
・フローリア
「困ったわぁ、スイちゃんは自分より強い人しか嫌だって言ってるのよ、スイちゃんより強いのって浩二さんしかいないのに。」
・ロドルフ
「いやいや、それでもエミリアだ。
浩二殿をここに呼んだのはうちの子だ。」
当事者を無視して繰り広げられる争い。
勝手に熱くなるのは辞めなさい。
・エリシャ
「にゃに言ってるの?
浩二は既にあたしの夫だよ?」
ムシャムシャ食べながら言い放つ。
エリシャの言葉で場が凍る。
・リーム
「いつの間に?また抜け駆け?」
・スイ
「聞いてないけど、、、、」
・ライ
「兄ちゃんマジか?
俺の兄ちゃんになるって言ったじゃん。」
落ち着きなさい。
まずはライ君、俺は君のお兄さんのような存在になるって言っただけだからね?
・「えっと、、、」
何とか弁解しなくては。
・エミリア
「浩二は私と一緒になります。
そして共にエルデンを豊かな国にするの。
そうよね?」
エミリアまで何言ってるの?
・京子
「あらら、モテモテね。」
・幸三
「息子が大人気だ、羨ましい」
嬉しそうな母。
悔しそうな父。
・エリシャ
「浩二は私の王子様にゃの。
ピンチの時に救ってくれた。
カッコよかったんだから!」
・リーム
「それは私も同じよ。」
・スイ
「右に同じ。」
・エミリア
「みんな同じなのね。」
・エリシャ
「ん~、これは決定事項にゃの。
だって浩二に婚約のキスしたし。」
そう言えばテラスでされたな。
あれってそういう意味なの?
感謝の意じゃなかったっけ?
・サリウス
「浩二もすみに置けないね。」
ぶっ飛ばすぞ?黙ってろ。
・コーン
「良いではないか。
みんなで仲良く嫁入りで。」
・幸三
「そうだそうだ!」
ベロベロになったコーンが提案する。
何故か親父も賛同。
後で覚えてろ。
・フローリア
「賑やかで良いわね。」
・アスチャート
「一夫多妻でも問題ないだろうよ。
なぁ母さん。」
・フローリア
「ねぇあなた。」
無責任な事言って二人の世界に逃げないで。
・リンネ
「良いんじゃない?
浩二の規格外は元々だし。」
・サリウス
「浩二もすみに置けないね。」
黙ってろ、ぶっ飛ばすぞ。
て言うかサリウス同じ事しか言ってねえぞ。
酔っぱらってんじゃねえか。
・ロドルフ
「ぬぅぅ、エリシャ殿とリーム殿。
約束はどうしたのだ。
そもそもスイ殿は浩二殿の何処が良い?」
ロドルフ、それ俺の悪口だからね?
どさくさに紛れて酒飲んでるんじゃねぇ。
あんたも酔っぱらってるだろ。
・スイ
「優秀な遺伝子を欲するのは女の本能。
何か問題でもある?」
はっきりと王に言い放つスイ。
思わずカッコいいと思ってしまった。
・ロドルフ
「そ、、、そうか、、、仕方ないな」
一言で撃沈したロドルフ。
スイの攻撃力が凄まじい。
・コーン
「では決まりですな!
いやぁ~めでたい。」
コーンの発言で丸く収まった。
収まったのか?
コーンはドンドン酒を飲む。
こいつ、飲みたいだけだな。
この後も楽しい宴は続いた。
その日の夜
俺は一人で平原に居た。
今までの事を思い出していたんだ。
色々あったな。
厄災で魔獣を倒した。
グランデの救援。
魔族の襲来。
フーバの攻防。
そして魔王城攻略
全てを消し飛ばしたあの日。
この世界で生きると決めた。
この世界に来る前は、、、
・「いまさら向こうには戻りたくない。」
・エミリア
「浩二はこの世界が嫌い?」
いつの間にか後ろに居たエミリア。
気付かない程考え事をしていたらしい。
・「いや、そんな事ないさ。
自分が今を生きてる事。
生きたいと思える事が不思議でね。」
そう、向こうに居た時は死にたかった。
生きているのが辛かったんだ。
何も考えない様にゲームの没頭した。
それなのに今は沢山の仲間がいる。
幸せな日々が続いている、、、
・エミリア
「浩二は一人じゃないよ。」
優しく抱きしめてくれるエミリア。
俺は知らない間に涙が溢れていた。
・「俺は、、、やっと取り戻せた。
もう失いたくない。」
本当は怖かったんだ。
両親を創造した時も、
一年間、楽しく過ごした日々も、
また、失うんじゃないかと。
・「俺は、、、俺は、、、」
怖くて仕方がない、、、
・エミリア
「大丈夫、もう誰も居なくならない。
浩二は私達が守るから。
安心して、、、」
俺はこの子に助けられた。
全てはそこから始まったんだ。
この子を守りたいと思った。
だから戦えたんだ。
そうだ、今はみんなが居る。
信頼できる仲間が、
心から愛するみんなが居る。
・エミリア
「みんなと一緒に生きて行こう。」
彼女は、、、
エミリアは俺にとっての救世主だった。
場違いで何が悪い?(ホントの無双をお見せしよう) アナザー @sigunet3939
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