第32話 アルマフィー戦記

魔王が合図を出す。

するとスイを拘束する為に魔族が動く。

完全に俺から意識が外れた。


・「チェンジ、『フェンサー』

『スパインドライバー』装着!」



*スパインドライバー

単発の刃物付きハンマー。

どちらかと言うと槍のような武器

連射は効かないが発射速度が速い

即時に打てて高威力。

この場面ではこの武器が良いと判断

一撃、約6000ダメージ



俺はスラスターで一気に加速。

ゼロから瞬時にトップスピードになり、ライを拘束している魔族の頭を吹き飛ばす。


・「よし、いいぞスイ。」


俺はライを受け止めてその場を離れる。

スラスター移動後にもう一度チェンジ。


・「チェンジ、レイダー

『パーソナルシェルター』展開!」


俺はライの周りにシェルターを展開。

魔王の魔法攻撃からライを守る。



*パーソナルシェルター

簡単に言えば盾

種類も豊富で形も様々

物によってはかなり広範囲にもなる

このシェルターは一人専用の物

範囲が狭く一人を守る時に使いやすい

防御力は18000

魔王の魔法など屁でもない



・バルキュラス

「貴様!死んでいなかったのか。」


驚きと共にライに魔法をかける魔王。

でも残念、既に対応はしてあります。


・バルキュラス

「くそ、何故死なん!」


混乱中の魔王は魔法を放ってしまった。

バカだなぁ、、、


・バルキュラス

「はぁはぁはぁ、、、、」


ほら、言わんこっちゃない。

自力で立てなくなってるやん。


・バルキュラス

「くそ、、、こいつを殺せ。」


・「誰に命令してるんだ?」


・バルキュラス

「そんなの決まっておろう!

貴様らさっさと、、、」


魔王の言葉はここで止まった。


・スイ

「何?何か言った?」


6体の魔族が息絶えていた。


・バルキュラス

「ばかな、、、魔将軍たちが。」


魔将軍だったのか。

しかし、スイさん。

相変わらず恐ろしい強さですな。


・スイ

「万策尽きたわね、、、魔王。

両親の仇、取らせてもらうわ。」


スイのランスが魔王を貫く。

断末魔さえ出せないまま崩れ落ちる。

魔王の頭部はこの世から消滅した。


・スイ

「お母様、、、お父様。」


スイは静かに目を閉じる。

俺はその光景を眺めていた。


・「おっと、弟君を助けなきゃな。

チェンジ、レンジャー。」


俺はリバーサーで弟を回復させる。

ライは一気に回復した。

相変わらず凄い性能だ。


・ライ

「ねぇちゃん?」


・スイ

「ライッ!」


スイはライに抱き着いた。

もう死んだと思っていた弟。

無事に取り戻せた事に感謝しながら。


・スイ

「ライ、、、、」


・ライ

「ねぇちゃん。」


強く抱きしめ合う姉弟。

お互いの存在を確かめ合う。


俺は二人だけにしてあげた。

さて、外の状況はどうなったかな?



・「エリシャ、そっちはどうなった?」


・エリシャ

「こっちは終わったよ。」


・「こっちも魔王を倒した。

後始末してからそっちに戻る。」


これで終わったな。

後はスイ達がどうするか次第だ。


俺は暫く待つことにした。

遠くから声がする。

勝どきってやつかな?

ここまで聞こえるなんて凄いな。


・スイ

「浩二、ありがとう。

全ては貴方のおかげよ。」


とても綺麗な笑顔を見せてくれた。

隣には弟のライが居る。

しっかりと手を繋ぎながら。


・ライ

「兄ちゃんが俺を助けてくれたのか?

人間なのに?」


・「人間も魔族も関係ないよ。

スイが君を助けたいと願った。

だから答えたまでだ。」


俺の答えにライが驚きの表情を浮かべる。


・ライ

「あんた、母ちゃんみたいだな。」


魔族に恋した母親。

人間を愛した魔族。

俺は素敵な話だと思う。


・スイ

「さぁ、城を離れましょう。

転送が始まってしまう。」


そう、それが聞きたかった。


・「スイ達はどうするんだ?

この城と共に元の世界に帰るのか?」


スイは即答する。


・スイ

「いいえ、この世界に残るわ。

魔王は死んだ。

もうこの世界を脅かすものは居ない。

私も疲れたわ。

弟と静かに暮らしたいの。」


そうか、なら実行に移すか。

俺達は魔王城を後にした。


・「エリシャ、ちょっとこっちに来てくれ」


・エリシャ

「お?良いよ、すぐに行くからね。」


俺はエリシャを呼んだ。

最後の仕上げをする為だ。


・「最後にもう一度だけ聞くぞ。

元の世界に戻らなくていいんだな?」


・スイ

「ええ、私はこの世界で生きていく。

ここにはエミリアが居る。

それにあなたも居るしね。」


・ライ

「ねぇちゃん?」


スイがじっと見つめてくる。

この世界に居れば俺の能力が使えるしね。

この能力で弟さんを守ってあげてくれ。


・エリシャ

「浩二ぃ~、来たよ~。」


エリシャが到着した。

到着するなり俺に抱き着くエリシャ。


・エリシャ

「遂にやったね、ご褒美ご褒美。」


スリスリしてくるエリシャ。

美女にスリスリされてご満悦の俺。

そんな俺達をスイは一緒に投げ飛ばす。


・スイ

「まだ終わってないんじゃないの?

後始末とやらは?」


何か怒ってませんか?

確かに城が残ってますからね。

仕事はしっかりやります。

本当にすみませんでした。

でも、もう少し堪能したかった。


・エリシャ

「にゃに?妬いてるの?

ふっふふ~、スイも浩二が好き?」


挑発的なエリシャ。

スイは何も答えない。


・エリシャ

「ほれほれ、本音をいいにゃさい。」


スイを弄るエリシャ。

辞めておきなさい。

スイが怒ると怖いんだから。

それにスイは俺の事など、、


・スイ

「愛しているわ。

何か文句あるかしら?」


スイが爆弾を投下した。

それにより俺の思考が停止する。


・エリシャ

「ありゃ、言っちゃった。」


・ライ

「ねぇちゃん!こいつ人間だぞ?」


只今思考停止中。

そんな雰囲気をぶち壊す奴がいた。


・ヤマト

「池田ぁぁぁぁ、残念だったなぁ」


やまもと?、、、いやヤマト?

どっちでも良いか。


・バルキュラス

「やってくれたな、半魔の女。」


おいおい、何で生きてるんだ?

頭を吹き飛ばしたはずだぞ?


・スイ

「そんな、確かに私が殺したはず。」


俺も見ていた。

だがそれよりも気になる事がある。


何故この距離で話が出来る?

俺の疑問をよそに話は進む。


・バルキュラス

「魔界に戻り力を蓄える。

そして貴様ら全員を殺しに来てやる。

その時には人間のお前は居ないがな。」


・ヤマト

「寿命で死ぬなんて残念だな。

お前は俺が殺してやりたかったがな。」


なんて負け犬感が似合う奴ら何だろう。


・エリシャ

「あいつら、、、」


魔王城が膜に包まれる。

防御魔法か何かか?


・エリシャ

「あれは、、、魔族が使ってた魔法。

サリウスの攻撃を何発も防いでた。」


防御魔法で間違いなさそうだな。

『ファング』で13500程だ。

何発も防いでいたのなら結構固いな。


・スイ

「もう一度、殺さなければ。

この世界を2度と蹂躙させはしない。」


スイが魔王城に向かおうとした。


・「ここは俺に任せてくれ。」


俺はスイを止める。

そして一番気になる事を聞いた。


・「なぁ、なんでこの距離で話せるの?

教えて魔王様。」


俺は問い掛けてみた。

聞こえてるのかな?


・バルキュラス

「音声拡張魔法で全世界に聞こえている。

そして超耳魔法だ。

わざわざ貴様らの声を拾ってるんだ。

感謝しろ!」


成る程ね。

てか超耳魔法ってなんだ?

もっと良いネーミングなかったのか?


・「あれで良く生きてたね?

死んだと思ってたよ。」


・ヤマト

「っは!俺と魔王は特別だ。

核が生きてりゃ再生するのさ。

どうだ?ビビったか?」


弱点をさらけ出してどうする。

やっぱりあいつはアホだわ。

要は核ごと消し去ればいいんだろう?


・バルキュラス

「それでは帝国の巫女、、、

いや半魔の女よ、また会おう。

束の間の平和を楽しむが良い。

半魔がこの世界でどう生きるれるか。

会った時にでも聞かせてくれ。

魔族を裏切ったお前がどう生きたか。

どの様な迫害にあったかをな。」


わざわざ顔を出した意味が解った。

スイの正体をばらす為だ。

拡張魔法で全世界に帝国の巫女が半魔だと知らせる事で、この世界での迫害を受ける様に仕向けた。

何とも器の小さい事で。


・ライ

「ねぇちゃん、、、」


しかし効果は絶大だ。

弟のライ君が怯えている。

恐らく昔を思い出したのだろう。

人種差別による迫害は凄まじい。

自分達が正義と信じているから質が悪い。


スイはライをしっかりと抱きしめる。

スイも昔の事を思い出したのだろうか。

歯を食いしばって耐えている様だ。


・「安心しろ、全て俺に任せれば良い。

約束しただろ?

全部、、、ぶっ壊してやる。」


俺は出来るだけの言葉を伝える。

多くは語らない。

出来る事をやるまでだ。


・スイ

「浩二、、、」


やまもと、、、お前が生きていた事。

その事に感謝しよう。


・「エリシャ、俺を連れて飛んでくれ。

遥か上空まで。

スイたちはエミリアの元へ。」


・エリシャ

「任せて!」


エリシャは俺を掴んで飛んだ。

スイはライを連れて飛ぶ。


・ライ

「ねぇちゃんって飛べたの?」


・スイ

「ふふふ、これは浩二の力よ。」


・ライ

「あいつ、、、強いの?」


・スイ

「ええ、とても強いわ。

今から全てを破壊してくれる。

きっと私達を守ってくれるわ。」


スイは浩二を信じる事にした。

ここまで導いてくれた恩人。

この人を信じなくて何を信じられる?


・スイ

「浩二、、、信じてるわ。」


思わず漏れた言葉。

スイの心からの願望でもあった。


・エリシャ

「この辺で良い?」


俺はエリシャに連れられて空に居る。

魔王城の遥か上空だ。

これはゲームでは出来ない芸当。

何故なら飛行にはエネルギーが必要となる。

そしてエネルギーコアには限界がある。


しかしこれはゲームではない。


ゲージが無くなりそうなら入れ替える。

コアを変えれば無限で飛び続けられるのだ。


・「さて、全てをお終わりにしよう。」


魔王からの声はすでに消えていた。

転送の準備でもしているのか?

テラスにはやまもとが居る。

今はヤマトか、、、

そんな事はどうでもいい。


・「父さん、母さん。」


俺は両親を思い出す。

優しかった思い出。

全てを奪った元凶。


・「今こそ、、、、」


俺は一つの武器を選ぶ。

今までナンバリング5の武器を使った。

だが、武器はまだまだある。

これはこのゲームの最初の物語。

最高難易度をすべてクリアする。

その条件下で得られる最終兵器。


・「『ジェノサイド砲』発射!」


それは大きな光の球体。

美しく輝く大きな弾。

ゆっくりと、ゆっくりと落ちていく。


長かった、、、苦しかった。


それも今、、、全てが終わる。


浩二の放った光の弾は魔王城に落ちる。

そして、、、


全てを消し飛ばした。



*ジェノサイド砲

地球を侵略に来た宇宙船の主砲

着弾した周囲の敵を蹂躙する

弾速は非常に遅い

人類の英知を遥かに凌駕する超兵器

それを人の手で扱える大きさにした

ロケットランチャーとして登録

しかしその威力は規格外

人類が手にしてはいけない最終兵器

爆破範囲70m

攻撃力1000000(100万)



魔王城は消滅。

戦いは終わった。

後にアマルフィー防衛戦と呼ばれたこの戦いは伝説として歴史に残る。



『アマルフィー戦記・神の章』


人類が絶望し

希望を失いし時

異世界より勇者現わる


勇者は神となり

光の祝福で全てを無に帰す


人々は喜びに溢れ

神は人へと帰る


彼は告げる

命は皆同じ

流るる血と痛みも皆同じ


汝隣人を愛せ

疑う事なき様


誰彼皆同じ

共に今を生きる仲間なり

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