第31話 魔王バルキュラス

~魔王城~ 


・スイ

「捕虜の救出は終わりね。

次はどうするの?」


・「少しこの城を探索するよ。

どこかに残ってる人がいるかもだし。」


一応、確認はしておかないとね。

俺とスイは城の中を歩き始めた。


捕虜の人が居なくなって気付いたんだ。

マップに白い点が残ってるんだよね。

この点が城のどこに居るのかが解らない。

下の階なのか、上の階なのか。

だから歩き回るしかない。


・スイ

「何処にいるのかしらね?」


スイも気付いていたようだ。


・「ん~、無駄に広いからな。」


スイと俺の探索は続いた。



~戦場最前線~


・コーン

「皆、さがれぇぇぇ。

魔族が来たぞ!」


コーンの指示で兵士達が撤退していく。

事前に通達してあった為、迅速な行動だ。


・オリテウス

「見事な統率ですね。

指揮官が良いのかな。」


上空では魔将軍オリテウスが褒めている。


・オリテウス

「さぁ、行きなさい。

一人残らず殺すのです。」


魔王バルキュラスは怒っていた。

人間に罰を与える為、兵士は皆殺し。

そう命令していたのだ。


魔王城に居た魔族は全部で68体。

この戦場に48名の魔族が投入された。

飛行できる魔族を全て投入したのだ。

飛べない地上戦特化型は魔王城に待機。


・魔族

「好きに殺して良いってよ。」


・魔族

「魔王様バンザイ!」


・魔族

「腹いっぱい食ってやる!」


それぞれの思惑が入り混じる。

そして兵士に襲い掛かる。

筈だった。


・魔族

「ピギャ!」


一体の魔族の頭が飛び散った。


・オリテウス

「む?何が起こった?」


一体、また一体と撃ち抜かれていく。

このままだとまずい。


・オリテウス

「地上に降りて隠れろ!」


すぐに行動に移る。

しかしその間も一体ずつ殺される。


・オリテウス

「あそこか、あんなに遠くから?

一体どんな魔法なんだ?」


何かが飛んできている。

恐ろしいスピードだ。

風魔法の一種か?

間違いない、あそこに勇者が居る。

だが、強すぎるのではないか?


・オリテウス

「なるほど、我が魔獣がやられるわけだ。」


オリテウスは詠唱を行う。

自身が編み出した究極防御魔法。


・オリテウス

「防護壁展開!」


ドーム状に展開された防御魔法。

見事に勇者の射撃を止める事に成功。


・オリテウス

「これで攻撃できまい。

さて、どうする勇者。」


防御魔法を展開しオリテウスは考える。

撤退して体制を整えるか?


勇者からの魔法攻撃が5発入った。

すると防御魔法に亀裂が入る。


・オリテウス

「バカな!考えられん。

撤退だ、一時引くぞ。」


オリテウスは決断した。

魔王様に報告しなければ。

この勇者は危険すぎる。

直ちにこの世界から逃げるべきだと。


・???

「あれあれ?もう帰っちゃうの?」


撤退行動に移った魔族の前に何者かが現れる。


・エリシャ

「ずっと待ってたんだよ?

私と遊んでいかにゃい?」


エリシャは魔族に手を振っている。

緊張感のかけらもない一言。

この言動が魔族の逆鱗に触れた。


・魔族

「人間風情がぁぁぁぁ!」


一斉に飛び掛かる魔族達。


・オリテウス

「待て、撤退を優先しろ。」


しかし怒りに我を忘れた魔族には届かない。

エリシャは空に逃げる。

魔族はそれを追ってしまった。

そしてついに防護壁が破られる。


・オリテウス

「しまった!戻れ!」


時すでに遅し。


・サリウス

「流石エリシャ殿。

僕の思った通りに誘導してくれるね。

『ターミガン』装備。」


サリウスは連射の利く武器に切り替えた。



*ターミガン

高い連射速度のスナイパーライフル

威力は低めの2000ちょい。

しかしこの世界では異常な威力。

魔族を1~2発で撃ち落とせる。



サリウスの遠距離射撃。

外すことなく撃ち落とす。

エリシャも近くの魔族から貫いている。


その戦いは僅か数分で決着がついた。


・コーン

「す、、、すごい、、、」


コーンたちは途中から逃げる事を忘れた。

見入ってしまったのだ。


・エリシャ

「逃げて!」


・オリテウス

「もう遅い!」


オリテウスは兵士に向かって魔法を放つ。

この勇者は異常だ。

隙をついて逃げなければ。

空はダメだ。

ならば近場の兵士を殺して逃げる。


オリテウスなりの戦術である。

しかしその戦術が功を成す。


兵士を狙ったオリテウスの魔法。

それは魔族ですら消し飛ぶ一撃だ。

そんな自慢の魔法だった。


その魔法に女の勇者が突っ込んだのだ。


・オリテウス

「バカめ!」


オリテウスは胸をなでおろした。

これで撤退が出来る。


・エリシャ

「攻撃力7200か、、、

凄い威力だね。」


オリテウス渾身の魔法。

自身の魔法力を半分以上使う超魔法。

直撃したはずだ。

何故、無傷で立っている?


・オリテウス

「ありえない、これは悪夢だ。」


思わずこぼれた一言。


・エリシャ

「あんたらに私達は倒せにゃい。

絶望を感じにゃがら死んでいけ!」


エリシャがオリテウスに向かっていく。

オリテウスは動けない。

理解が追い付いていないのだ。


そして遂に、、、


・エリシャ

「この世界をにゃめるな!」


エリシャのドラグーンランスが貫いた。


・オリテウス

「バル、、、キュラス、、、様。」


オリテウスは一撃の内に絶命した。


・エリシャ

「サリウス、サンキュ~。」


・サリウス

「ナイスです、エリシャ殿。」


エリシャはサリウスと通信で話す。

二人の連携が勝利をもたらした。


・コーン

「皆の物!見たか?

世界の勇者が魔族を討ち取ったぞ!

勝利は目前だ!

残りの魔物を殲滅しろぉぉぉぉ。」


再びアルマフィー防衛軍が動き出す。

残りの魔物は少ない。

既に魔王城からの増援もない。

一気にたたみ掛ける時だ。


・エリシャ

「いくぞぉぉぉぉぉ」


ここからはエリシャも参戦する。

流石に範囲攻撃は使えない。

仲間に当たる危険性があるからだ。

お気に入りのランスで一体ずつ葬る。

まさに無双と言って良い活躍だ。


・リーム

「もう、エリシャったら。

これは兵士達の戦いだって言ったのに。」


ボルテージの上がったエリシャは止まらない。


・エミリア

「良いんじゃないかな?

今は勝つことだけを考えれば。」


エミリアがリームを諭す。


・サリウス

「皆が無事に帰って来るならそれでいい。

さあ、魔物を殲滅しよう。」



~魔王城~


・「向こうに魔族が現れた。

その数48、全て撃退したそうだ。」


浩二に通信が入る。


・スイ

「そう、じゃあ残りは少ないわね。

早く白い点を見つけましょう。

長居は無用よ。」


さっきから白い点が移動している。

複数の赤い点と一緒なのが気になる。

多分、この先の部屋に居るだろう。

、、、この階だったらね。


・スイ

「この部屋で当たりだと良いわね。」


すでに2回ほど外している。

この城、無駄に階層が多いんだよ。


・「行くぞ!」


俺は扉をあけ放つ。


・バルキュラス

「何だ?貴様らは。」


ついに見つけた。

複数の赤い点と白い点。


・スイ

「そんな、、、、ライ、、?」


・「知り合いか?」


かなり弱っているであろう魔族。

いや、、人間か?

ん?魔族のような人間?


・「弟か?」


スイは無言で頷いた。


・バルキュラス

「貴様がエルデンの勇者か。

半魔の女、やはり裏切ったか。」


半分魔族で半分人間。

ハーフの事を半魔と呼んでるのね。


さて、この状況。

どうしたもんかね。


敵は6体。

ついでに偉そうな奴。

だから計7体か、、、

そしてスイの弟。


弟は魔族に拘束されている。

下手すると一瞬で殺されるって感じかな。


・バルキュラス

「折角だ、楽しませてもらおう。」


魔王の合図で二人の魔族が動き出す。


・「スイ、苦戦するように見せかけろ」


俺は通信でスイに指示を出す。

まずは油断させなきゃな。


・スイ

「ライ、、、、」


彼女には弟しか見えていない。

死んだと思ってた弟が生きてたんだ。

仕方ないよな。

よし、俺だけでやるか。


・「おりゃぁぁぁ」


俺が一人で突っ込む。

強すぎず、弱すぎず、、、


・魔族

「おらぁぁぁ」


・魔族

「しねぇぇぇ」


2体の魔族が俺に襲い掛かる。

攻撃を受けてはならない。

攻撃を受けて無傷だとバレるかもだし。


俺は魔族の攻撃を避ける。

避ける、躱す、受け流す。

完全に防御に徹した。


・バルキュラス

「ほう、、、人間にしてはやるな。」


その攻防を楽しそうに眺める魔王。


・スイ

「浩二、今助ける。」


スイが動こうとした。


・「まて、そのままでいい。

無力な巫女を演じてろ。」


バレない様にスイに指示を飛ばす。

個人通信て便利だよね。

その間も攻撃を避け続ける。


・バルキュラス

「どうした?避けるだけでは勝てぬぞ?」


んな事わかってるよ。


・「くそ、聖剣さえあれば。」


とりあえず叫んでおく。

喰い付くかな?


・バルキュラス

「聖剣?それが貴様の武器か。」


よし喰い付いた。


・「くそぉぉぉぉ」


この辺りで良いかな?

俺はわざと攻撃を食らう。


・「ぐふ、、、、」


壁までぶっ飛ばされた。

ふむ、攻撃力760か、、、

リームの魔法と同程度。

物理で叩き出せるんだから凄いな。


・バルキュラス

「そこまでだ。」


魔王の言葉で魔族が止まる。

こいつが親玉で間違いなさそうだな。

俺は何とか立ち上がる、フリをする。


・バルキュラス

「あの攻撃で生きているとはな。

流石は勇者と言った所か、だがな。

エルデンを崩壊に追いやった罪は重い。」


魔王が俺を睨んできた。

何だ?APが減った。

何をした?


・スイ

「浩二、それ魔王の魔法攻撃。」


スイが通信で教えてくれる。

くそ、解りにくいんだよ。


・「ぐあぁぁ」


再び倒れる俺。

タイミングズレてたけど大丈夫かな?


・バルキュラス

「ほう、弾け飛ばぬとはな。」


無茶なこと言うな。

しかし、流石は魔王って所かな?

睨んだだけで8000ダメージ。

すげぇな。

普通ならね。

今の俺はAP制限を付けていない。

この俺の努力の結晶。

AP値678453は伊達じゃない。

こんなダメージ屁でもないぜ。


・バルキュラス

「死ね!」


・「ぐあ」


・バルキュラス

「死ぬのだ!」


・「うわぁ」


・バルキュラス

「これでもか!」


・「やられたぁ」


ちょっと魔王さん。

マジで辞めて。

演技するこっちの身にもなってよ。

やられたって言ってるでしょうが!


・バルキュラス

「これでどうだ!」


・「マジかんべん。」


ダメだ、もう適当になって来た。

ほら、魔王も肩で息してるじゃない。

そろそろ辞めませんかね?


俺は地面に倒れて動かなくなった。

もう攻撃されても何も言わない。

死んだふり作戦だ。


・バルキュラス

「はぁはぁ、恐ろしい生命力だった。」


恐ろしくダサい攻防だぞ?

睨む、倒れる、睨む、倒れる。

ただそれだけだし。

途中でチラッと見たスイは笑ってるし。

プルプルしてたの見てたからね?


・「スイ、、、笑ってたろ?」


・スイ

「べ、、、、別に、、、」


くそ、後で覚えてろよ。


・バルキュラス

「さて、次は半魔だ。

可哀そうにそんなに震えて、、、

安心しろ貴様が死ぬのはこいつの後だ。

弟を目の前で殺してから貴様を殺す。

そいつを拘束しろ。」


既に良き絶え絶えの魔王さん。

どうやら魔法を使い過ぎたな。

では、そろそろ反撃と行きますか。

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