第20話 テンペスト

魔将軍と対峙するサリウス。

しかしそこに始まりの魔獣が現れる。

俺はサリウスから無理な注文を受けた。


んじゃこちらからも注文しておくか。


・「魔獣は俺が塵にしてやる。

そのまま進ませればいい。

魔将軍は任せたからな。」


・サリウス

「了解、こっちは任せて。」


サリウスはザインから目を離さない。

魔獣はゆっくりと進んで行く。


・ザイン

「ふははは、国を見捨てるのか?。」


・サリウス

「黙って見ていればいい。

直ぐに魔獣が塵と化す。

それまで僕はお前から目を離さない。」


サリウスは浩二を信じている。

きっと倒してくれるはずだ。


一方で浩二は少し悩んでいた。


・「さてと、どうするかな。

スプライトフォールでは倒すだけになる。

塵にするって言っちゃったしなぁ。

一撃であのデカさを包み込むような攻撃。」


うん、アレを使うか。

幸い魔獣の動きは遅いしな。


・「モデル『レイダー』

『テンペスト』装備。」



*テンペスト

レーザー照射式、超大型ミサイル。

見た目は殆ど宇宙ロケットである。

とにかく巨大なミサイル兵器。

要請中はレーザーを対象に当て続ける必要があり、ミサイル発射後はレーザーが着弾地点を決める指針となる。

その巨体が超低速で飛ぶ姿、指針をずらすと物理法則を無視した方向転換を行う、その姿は異様としか言い表せない。

見た目のインパクトも凄いが威力も凄い。

ダメージは47000超えであり。

攻撃範囲は驚異の半径100m。



・「まずは足元にレーザー照射。

そして発射されるまで暫く待つ。」


足元にレーザーを当てる理由としては、レーザー照射中に対象から外れるとやり直しになるからだ。


・「ミサイル発射確認。

目標『始まりの魔獣』、ロックオン!」


ピンクのレーザーを魔獣にセット。

そして暫く待つ。

結構時間が掛かるのです。


・ザイン

「何だ?ピンクの光が魔獣に?

あれは攻撃か?

だがダメージは無さそうだ。

一体何をしているんだ?」


ザインがレーザーに気付く。


・サリウス

「浩二、、、信じてるよ。」


思わず呟くサリウス。


・ザイン

「あれが貴様のお友達の攻撃か?

あんな細い攻撃で何が出来る!

見ろ!魔獣は気にせずに進んでるぞ。

あんな攻撃をでどうやって塵にするんだ?」


妙に楽しそうなザイン。

ゲラゲラ笑いながら話している。


・ザイン

「人間とは何とも愚かな生き物だな。

折角だ、貴様の仲間が無力だと知れ。

兵士達が、国が蹂躙されるのを見届けよう。

その後、貴様も殺してやる。」


ザインが纏っていた殺気が消えた。

この攻防を見守る事にしたらしい。


・サリウス

「光の矢が降ってこない。

あの光、最初に放った攻撃ではないのか?

あの時は何発も撃っていた。

もう放つ事が出来ないのか?」


サリウスも少し心配になって来た。

何故ならずっと光を当て続けているからだ。

ただそれだけ、時間だけが過ぎる。


・ザイン

「後5分もすれば兵士達に届いてしまうぞ?

このままで良いのか?」


どうする、戻って僕が攻撃するか?

でも浩二は言った。

魔獣は倒すと。

ならば、僕に出来る事は信じるのみ。


・ザイン

「そうか、見殺しにするか。

このまま見ていても結果は同じ。

やはり貴様から殺してやろう。」


ザインは再び臨戦態勢を取る。

想像以上に遅い魔獣の進行。

変わる事のない光の攻撃。

ザインは飽き始めていたのだ。


・サリウス

「返り討ちにしてやる!」


サリウスも銃を構えた。


その時、空がピンク色に染まっていった。


・ザイン

「何だ?何が起こった?」


さっきまで快晴だった。

真っ青な空だった筈だ。

なのにピンクに染まる。


・サリウス

「一体何が起こった?」


急激な変化に恐怖すら感じる。


・ザイン

「な、、、何だあれは?」


ザインが見つめる方向をサリウスも見てしまう。

普通ならザインはこの隙を見逃さないだろう。

しかしザインは目が離せなかった。

あの異様な光景を見てしまったから。


・「よし、来たな。

この武器の難点はやたらと遅い事にある。

だがようやく到着した。

後は魔獣に落とすだけ。」


いつの間にか表れた巨大な物体。

ゆっくりと飛びながら魔獣を目指す。

時々、左右に揺れながら飛んでいく。

見た事のない動き。

あんな動きが可能なのか?

これ程大きな物が空を飛ぶなど信じられない。


・ザイン

「あれは一体何なのだ?」


ザインには解らない。


・サリウス

「一体何なんだ?」


サリウスにも解る訳がない。

そんな二人の疑問を無視しながら飛んでいく。


・ザイン

「あの大きさ、かなりの質量だろう。

だが残念ながら速度が無い。

あれでは魔獣にダメージを与えられない。

流石に驚きはしたがな。」


冷静に分析するザイン。

しかし彼は知らない。

ミサイルと言う物を見たことが無いから。

あの物体は爆発するのだ。


・「よし、計算通りだ。

爆発範囲には魔獣しかいない。

では魔獣君、おさらばです。」


俺の言葉と共に着弾。

半径100mを巻き込む大爆発。

爆炎と爆風が周囲を襲う。

ここだけはゲームと違うんだよな。


・「おっほ~、流石に現実の爆発はヤバいぜ。」


吹き荒れる爆風。

爆炎に包まれる魔獣。

巻きあがる砂煙。


・ザイン

「うおおおおおおお」


・サリウス

「うあぁぁぁぁぁ」


あまりの衝撃に叫ぶ二人。

爆風をもろに浴びつつ耐える。


暫くして、、、


・サリウス

「凄い、、、、」


サリウスはそれしか言えなかった。

あれ程の爆発なのに何故か大地は無傷。

そして、そこに居たはずの魔獣の姿はない。

本当に塵と化したのだ。


・「聞こえるか?サリウス。

約束通り塵にしてやったぜ?」


浩二から通信が入った。

信じられない事をやってくれた。

やはり浩二は規格外だ。


・ザイン

「なんだ、あの魔法は、、、

あんな強力な炎魔法が存在するのか?」


放心状態のザイン。

気付けば体が震えている。

恐怖で思考が鈍くなる。

怖い、、、怖い、、、

ザインは堪らず一目散に逃げ出した。


・サリウス

「逃がすか!」


サリウスはすかさず銃を構える。


・サリウス

「『ファング』装填。

いっけぇぇぇ!」


サリウスの持つ『ファング』が火を噴いた。

放った弾は真っ直ぐに飛んでいく。

空中を飛んで逃げていたザインに追いつく。

そして、、、


ザン


その瞬間、ザインの頭部が消え去った。


・サリウス

「どんな獲物も逃さない。

フーバは僕が守る!」


渾身の決めゼリフを言い放つサリウス。


・「狙撃の腕は超一流だが。

その決めゼリフはどうかと思うぞ?」


全て通信で聞こえていた浩二。

とりあえず突っ込んでおいた。


兵士達を見ると陣形がかなり崩れている。

先程の爆風にやられたかな?

ちょこっと申し訳ない気持ちになる。


・「まあ、勝てたので良しとしますか。」


・サリウス

「ありがとう浩二。

君のお陰でこの国は救われた。

僕もリンネも酷い目に合わずに済んだ。

本当にありがとう。」


サリウスから感謝の通信が入る。

だがまだ終わってないぞ?


・「礼を言うのはまだ早い。

これからが本番だぞ?」


・サリウス

「え?でも厄災はこれで終わりだよね?」


・「厄災はな。

だが、メインディッシュはこれからだ。

とりあえず城に戻ろう、その時説明する。

あと、この手柄はお前が貰ってくれ。

俺は何もしなかったという事で宜しく。」


俺はサリウスにお願いする。

まだ俺の情報は隠しておきたい。


・サリウス

「でも、魔獣を倒したのは浩二だよ。

魔物も殆ど浩二が倒したじゃないか。

何で内緒にするの?」


・「俺にはやるべき事があるからな。

今はそれしか言えない。

協力してほしい、頼む。」


言いくるめるより頼んだ方が良いと見た。

サリウスの性格を考えるとね。


・サリウス

「う~、解ったよ。

でも王様とリンネには話していい?

リンネには嘘をつきたくないから。」


・「そうだな、その二人なら話して良いよ。

ただし、口止めもしっかり頼むぞ?」


・サリウス

「解った、じゃあ国民や兵士達には僕がやった事にするよ。何か僕で力になれる事があったら教えてね、いつでも力になるから。」


サリウスも協力してくれる。

順調に準備が整いつつあります。

あいつが来るのはいつになるかなぁ。


こうして、フーバの厄災は終わりを告げた。

魔将軍と魔獣を同時撃破するという前代未聞の偉業を達成しながら。これにより魔族の動きが活発になる事となる。


厄災終了後、俺は人知れず宿に戻った。

城に戻ると面倒な事になりかねないしね。

今日はゆっくり休もう。


・「さて、後はあいつの到着を待つばかり。

出来ればその前にサリウスと話したいな。

明日にでも通信すればいいか。」


多分、今日はめちゃめちゃ忙しいだろうな。

頑張れサリウス君。


暫くすると街に兵士達が戻ってくる。

魔物の遺体処理が終わったのだろう。

素材になりそうな物があると良いね。


厄災を見事退けた兵士達。

たった一人でこの偉業を成し遂げた勇者。

勝利の凱旋はもの凄く派手だった。

兵士達の体力は有り余ってたしな。


俺は遠くからその光景を眺めていた。

勇者サリウス。

行動、言動、そして心の強さ。


・「お前は紛れもなく、勇者だよ。」


そんな一言を呟いて宿に戻った。



~次の日~


俺は昼過ぎに目を覚ます。

昨夜は少しエリシャと話しをした。

思ったほど緊張していなかったのには驚いた。

流石、一人で魔将軍を討ち取った勇者だ。


・エリシャ

「そっちは終わったんだね。

エルデンの方は任せて。

あたしが守るから。」


何とも頼もしい事である。

お陰でぐっすりと眠れました。


・「さて、そろそろサリウスと通信するか。

サリウス、聞こえるか?」


・サリウス

「浩二?昨日はどこに行っちゃったの?

浩二はどこだって大変な騒ぎになってたよ。

今はどこに居るの?」


あ~、これは行かない方が良いか?

でも計画の為に頼みたい事もあるし。

ん~~、行くしかないか。


・「今は宿に居る。

今から城に言っても良いか?」


・サリウス

「なるべく早く来てくれると嬉しい。

と言うか、なるべく早く来た方が良いと思う。」


サリウスの言葉に逃げ出したくなった。

嫌な予感しかしない。

だが行かないと計画が進めれない。


俺は諦めて城に向かった。


城に着くとあの時の門番が出迎えてくれる。

少し雑談をしてから謁見の間に向かった。

「今夜はお楽しみですかね?」

とか言っていたのは謎だった。


『謁見の間』の扉には2名の兵士が居る。


・「えっと、入っても良いですか~?」


俺は恐る恐る兵士に声を掛けた。

この人たち俺のこと知ってるかな?


・近衛兵

「やや、貴方様はエルデンの勇者浩二様?

我が国の勇者を鍛えて下さってありがとうございます。直ぐに手配をしますのでここでお待ちください。」


近衛兵の一人が部屋に入っていった。

良かった、知られてた。

すると近衛兵は直ぐに出てきた。


・近衛兵

「許可が下りました、どうぞお入りください。」


えらく簡単に入れたな。

俺は謁見の間に入っていく。

そこには国の重鎮や巫女リンネの姿がある。

更にサリウスや兵士長の姿まで。


・フーバ王

「エルデンの勇者、浩二よ。

この度の活躍、誠に見事であった。

よくぞここまでサリウスを鍛え上げた。

礼を言うぞ。」


王の言葉で全ての人が頭を下げる。

うはぁ~、こういうの苦手だ。

しかし王は真実を知ってるんだよな?

サリウスは上手く口止めしてくれたらしい。


・フーバ王

「其方には大きな借りが出来た。

褒美を取らせたいと思う。

この有り様だ出来る事は限られてくるが。

何なりと言って欲しい。」


奥から綺麗なお姉さんが多数現れる。

報酬限定してますやん。

お姉さんを渡しますよって言ってるよね?

門番が言っていたのはこの事か。


・「ありがたき幸せ。

では私の願いを聞いてください。」


お姉さん方がアピールしてきた。

いや、違いますからね?

ちょっと惜しいとか思ってないですからね。


・「サリウスとリンネに頼みたい事があります。

それを聞いてくれるなら他に何もいりません。」


頭を下げつつ進言する。


・フーバ

「そんな事で良いのか?

この美女達と屋敷で暮らす事も出来るのだぞ?

毎日浩二殿の好きにしていいのだぞ?」


おいおい王様、そんなに俺を惑わすなや。

この美味しい話を断るのは惜しい。

実に惜しい、、、

だが、俺にはやらなければならない事がある。


・「お心使い感謝いたします。

しかし、私には成すべき事があります。

気持ちだけ頂いておきましょう。」


本当は王様の言う事だから受けた方が良いのだろう、王様のメンツもあるしね。でもフーバ王なら気にしないでいてくれそうだと感じた。


・フーバ王

「そうか、解った。

ならば全力で浩二殿の成すべき事をサポートしよう。そして成すべき事が成った暁には、彼女らと好きに住む事を許そう。」


いや、だからそれは頂けませんって。

エミリアに殺される。


俺はこの後、王の申し出を断る事となる。

断るのに結構苦労しました。

良い話なんだけどね。

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