第15話 豊穣の国フーバ

~ロドルフの屋敷~


現在、目の前には王様が居ます。

リームとエミリアも一緒です。

王からは書状を受け取りました。


今から『フーバ』にお出かけなのです。


・「んじゃ言って来るよ。」


・ロドルフ

「うむ、宜しく頼む。

エリシャ殿も気を付けてな。

あの契約はしっかり守ってね。」


ロドルフがエリシャに声を掛けている。

若干下からなのは気のせいだろうか?


・エリシャ

「解ってる、安心して。

私は一緒に居られればそれで良い。」


エリシャの言葉に頷くロドルフ。

一体どんな契約なのだろう。


・リーム

「気を付けてね。」


エリシャとリームが抱き合う。

本当に仲が良いな。


・エミリア

「浩二、、、無理はしないでね。

無事に帰って来て。」


心配してくれるエミリア。


・「大丈夫だよ、エリシャもいるし。

安心して待っててくれ。」


・エミリア

「そこもちょっと心配、、、」


なんとも複雑そうな顔のエミリア。

こうして俺達はエルデンを後にする。

まだ昼にもなっていない朝早くの事だった。

目指すは豊穣の国『フーバ』。



~フーバへ向かう道すがら~


今回の旅は歩きにした。

歩きと言うより飛行だね。

馬車で行くように言われたが断ったのだ。

だって、飛べなくなるじゃん。


飛行中はエリシャとお喋りタイムだ。

主にエリシャの武勇伝を聞いていた。

魔将軍の事も気になったしね。


・エリシャ

「それでね、魔将軍は一撃だったよ。

『ドラグーン・ランス』で貫けた。」


そりゃそうでしょうね。



*ドラグーン・ランス

『ダイバー』の超高威力近接武器。

射程は短いが威力が桁違い。

某ゲームでは大量の敵に囲まれたり遠距離から攻撃される事が多いので場面を選ぶ武器。最高難易度ではAPが10000あっても一瞬で溶けたりする。しかし全体的に攻撃力の低いこの世界なら唯一無二の超兵器と化す。

距離によって攻撃力が変化する。

射程ギリギリでは4000ちょい。

ゼロ距離射程では脅威の4万超え。

まさにチート武器と言えるだろう。



・エリシャ

「他にも色々使ってみたよ。

ライトニング・ボウとか。

でもやっぱりドラグーン・ランスが好き。

めちゃめちゃ気持ちいもん」


エリシャお気に入りの武器らしい。

そうかライトニング・ボウも使ったか。

雷光の勇者と呼ばれる訳が解ったよ。



*ライトニング・ボウ

文字通り電撃を発射する中距離武器。

範囲は広いがゲーム内では威力が低め。

しかしこの世界では高威力となる。

壁に当たると反射する。

しかし種類によっては反射後に当たり判定が消えると言う、謎の仕様を持つ武器。



・エリシャ

「こうして空を飛ぶのって気持ち良い。

浩二と一緒だから楽しいし。」


空を飛べるのは俺とエリシャだけだしね。

景色は良いが一人だと確かに寂しい。


・エリシャ

「でも残念、もう見えてきちゃった。」


暗闇に移る赤い光。

お城を照らす火の光だ。

エルデンを出て約12時間。

飛行と充電、休憩を繰り返して飛び続けた。

結果、通常なら4日掛かる筈の道のりを半日で着いてしまった。

下道は山道が多いから尚更早く着くよね。


辺りは既に真っ暗になっていた。

俺達は『フーバ』から少し離れて降りる。

あまり飛んでいる所を見られたくない。

魔族と間違われても嫌だし。

いちいち説明するのも面倒だ。

と言う訳で今日はここで野宿です。

明日になったらお城目指していきますか。



~豊穣の国『フーバ』~


この国は主に農業が盛んである。

食料となる獣も多く生息する。

城を中心に城下町が広がり、さらに周辺には多くの農村が存在している。


・「豊かな土地が多いのかな?

土壌に恵まれているって所か。」


・エリシャ

「グランデとは全然違う。

あそこの土地は痩せているからにゃ。

にゃかにゃか農作物が育たないと言ってた。」


エルデンは森林がやたらと多い。

国が違えば特徴も変わるか。

豊穣の国と名付けたくらいだからなぁ。


・「さて、早速お城に向かいますか。」


エリシャと共に城に向かう。

急いでいるのには訳がある。

明るくなって分かった事だ。

既にゲートが出現していたのだ。


急いで王と話がしたい。

しかし案の定城の手前で止められた。


・門番

「またれよ、お主たちは何者だ?

この先は許可なく進むことはできない。

通行書の提示が必要だ。」


やっぱりそうなるよね。


・エリシャ

「私はグランデの勇者エリシャ。

こちらはエルデンの勇者浩二。

急ぎ伝えねばにゃらぬ事がある。

『フーバ』の巫女と勇者にお伝えください。」


エリシャがとても頼りになる。

俺は何も言えないでいた。


・門番

「勇者と示すものはあるか?」


・エリシャ

「グランデの巫女リームの書。

エルデンの巫女エミリアの書。

更にエルデン王の書状を預かっている。」


エリシャが3通の手紙を出した。

いつの間に預かってたの?


・門番

「内容を拝見する。」


・エリシャ

「機密事項の為、開封出来るのは王だけだ。」


・門番

「中身を見ずして本物と判断は出来ん。」


・エリシャ

「しかし機密事項と言われている。

にゃかみを見せる事は出来にゃい。」


そんなやり取りが続き、、、


・門番

「内容が確認できねば通す事は不可能。

現在この国は厳戒態勢なのだ。」


・エリシャ

「しかし、これは非常事態にゃのだ。

にゃんとか話を通してくれ。」


・門番

「駄目だ、怪しげな人物の話など」


こりゃ駄目だな。

仕方ない、俺が何とかしてみるか。


・「エリシャ、ここは俺に任せてくれ。」


・エリシャ

「浩二?」


・門番

「何だ貴様は?」


俺は門番に耳打ちをする。

最初は嫌がっていた。

しかし話を聞く内に兵士の態度が一変する。

そして、、、


・門番

「わ、、解った、巫女様に話してみよう。

悪いが指定する酒場で待っててくれ。」


門番は走って城の中に入っていった。


・エリシャ

「どんにゃ魔法を使ったの?」


・「簡単だよ、纏めるとこの話を門番が独自の判断で断った時の未来の話しただけさ。仮に本当の話だったらどうする?ってね。

後はゲートを使用させてもらった。」


エリシャは少し頭をひねっていたが何となく納得した様子だった。


・「んじゃ、酒場で飯でも食っておこうか。」


・エリシャ

「そうだね、おにゃかペコペコだし。」


二人は酒場に向かった。


豊穣の国と言うだけあって豪華な、、

豪華な食事?

あれ?

基本的に量がかなり少ない。


・エリシャ

「にゃんか量がすくにゃいね。

お代わりすればいいかにゃ?」


だが、今はお代わり禁止らしい。

お題を払えば良いと言う事でもなかった。


・「これは、、、まさか。」


何となく考えてることがある。

もしも帝国の魔道兵器を借りていたら。

払う報酬は想像を絶するのでは?と。


元々魔族が収穫しているだけの事。

その国の民の事など考えないだろう。

最悪国が滅んだとしよう。

その時は帝国から人を送って作り直せばいい。


・エリシャ

「酷いはにゃしだ、、、

でも浩二が居にゃかったら、私は今頃奴隷としてにゃにをされていたか解らにゃい。」


奴隷になるとかそんな事を言われたの?


・エリシャ

「考えただけでも恐ろしい。」


嫌な事を思い出したのだろう。

エリシャがちょこっと不機嫌そうだ。

俺達は食事を済ませこの国の巫女を待つ。

あの門番、しっかりやってるかなぁ。


それ程待つことなく巫女は現れた。


・リンネ

「お久しぶりね。」


酒場に現れた巫女。

あれ?随分とやつれてない?


・エリシャ

「召喚儀以来だにゃ、しかし大丈夫か?

かにゃり疲れている様に見えるが。」


・リンネ

「まあね、、、それで、要件は?」


・「厄災について話し合いに来た。

王と勇者に伝えたい事もある。

何とか取り繕ってもらえないか?」


とりあえず軽く説明してみる。


・リンネ

「無理な話ね。」


しかし一蹴された。


・エリシャ

「頼む、一大事にゃんだ。

どうしても『フーバ』と協力したい。

ここに書状も持って来てある。」


エリシャが手紙を取り出す。

しかしリンネは受け取らない。


・リンネ

「悪いね、受け取る事は出来ないわ。」


ふむ、何か事情がありそうだな。

この国の状態と関係あるのか?

探ってみない事には何とも言えないな。


・「なぁ、話は変わるが。

豊穣の国と言う割には国が疲弊してないか?」


リンネが睨んでくる。

ふむ、これはひょっとすると。

俺はあえて続ける。


・「食事の量も少ない、お代わりも出来ない。

これで豊穣の国とはよく言ったもんだ。」


俺の言葉にリンネがブチ切れる。


・リンネ

「あんたに何が解るのよ!

厄災が来る度に全てが持って行かれる。

魔導兵器を導入してから地獄でしかない。

何度も何度も持って行かれるのよ。

もうこの国には備蓄すら無い。

何にもないのよ!」


キレながら泣いている。


・リンネ

「何が勇者よ、何が救世主よ。

あの人はもう戦えない。

なのに厄災が来れば戦場に向かって行く。

私が止めても皆の為だって、、、

私の気持ちも知らないで。」


泣き崩れてしまった。


・リンネ

「もうこの国は終わりよ。

厄災で潰されるか、、、

帝国に食いつぶされるか、、、

どちらもさして変わらないわ。」


リンネが泣きながら話している。

そんなリンネをエリシャが抱きしめる。

優しく撫でて慰める。

少し話が見えてきたな。


・「なら次の厄災は俺達が防ぐ。

これで話を聞いてくれないか?」


リンネが反応する。


・リンネ

「厄災は魔道兵器でしか払えない。」


・エリシャ

「そんにゃ事にゃい。

実際に私達は厄災に打ち勝ってきた。」


リンネが顔を上げる。

そして訪ねてきた。


・リンネ

「だって、協力したいって言ったじゃない。

貴方たちの国も危ないんでしょ?」


・「ここでは詳しく話せない。

だがリンネの考えてる協力とは違うと思う。」


リンネが首をかしげている。


・「とりあえず聞いてくれ。

エルデンは3波まで終わった。

グランデは魔将軍も倒して厄災を終えた。」


リンネの目が開かれる。

信じられない事を聞いている。


・エリシャ

「本当は王に読ませる物にゃんだけど。

リンネに先に読ませるよ。」


そう言って3通の書状を渡す。

リンネは直ぐに読みだした。

読み終わるまでは大人しく待ってよう。


・「よかったのか?」


・エリシャ

「うん、これが最善の手だと思う。

エルデン王は私に全権を任せてくれたしね。」


そうだったのか、、、

ロドルフに相当信頼されているらしい。

俺よりもエリシャの方がしっかりしてるしな、ちょこっと寂しい気もするが仕方ない事さ。


何となく寂しいがな、、、


・リンネ

「この内容、、、本当なの?」


・エリシャ

「機密だからにゃ。

正直内容は知らにゃい。」


・リンネ

「では厄災の事だけ聞くわ。

本当に厄災を終えたの?

魔道兵器無しで倒せるの?」


・エリシャ

「終わったよ、私が倒した。

そして一つだけ言える事がある。

魔道兵器で魔族は倒せない。」


愕然とするリンネ。

それでは話が違う。

ずっと帝国に騙されていたのか?


・リンネ

「信じ、、、られない、、、」


そりゃそうだよな。

話から推測すると帝国に結構な支払いを済ませている感じだったし。恐らく魔導兵器を使う度に食料関係を持って行かれたんだろう。


・「あのゲートはいつ出現した?」


・リンネ

「3日前よ。」


・エリシャ

「あと4日か、、、」


リンネが下を向く。

そして顔を上げて嘆願してくる。


・リンネ

「お願い、私達を救って。

もう帝国に持って行かれるのは嫌なの。

この国の民も限界よ。

あの人も、もう限界なの、、、」


再び泣き出してしまったリンネ。

俺の中で沸々と湧き上がる何かがあった。


・エリシャ

「任せておいて。

この国は私と浩二が救うから。」


エリシャはリンネを慰めつつ言い放つ。

その姿はまさに勇者そのものだった。


エリシャさんカッコいいっす!


俺は次の行動を考えていた。

まずはこの国の勇者を救いますかね。

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