第16話 リンネの涙
~フーバ城~
リンネのお陰で城に入る事が出来た。
さっきの門番が必死に謝ってくる。
・門番
「先程は失礼しました。」
・「いやいや、あれが門番の仕事だしね。
立派に仕事を熟していたと思うよ。
しっかりした門番が居るから安心だよね。
羨ましいくらいだ。」
とりあえず褒めちぎっておいた。
そう感じたから正直に言っただけだ。
・門番
「あ、、、ありがとうございます。」
門番は喜んでくれたようだ。
・リンネ
「浩二だっけ?
貴方も中々いい男ね。」
・エリシャ
「違うよ、浩二は最高の男だ。」
あまり持ち上げないで欲しい。
ちょこっと恥ずかしい。
暫く城の中を歩いて行く。
立派な城なのにあまり人を見かけない。
大きいからそう感じるだけか?
・リンネ
「この先よ、負傷兵が居るのは。」
俺はまず負傷兵が居ないか聞いていた。
勇者も負傷している筈だ。
酒場の話から推測した。
だけどこの光景は想像していなかった。
・エリシャ
「こ、、、、これは、、、」
・リンネ
「欲張った罰、、、
とでも言えばいいのかしら。
前回の厄災でこうなってしまった。
帝国に支払う事を渋った結果よ。
自国の兵力で対抗しようとたの。
多くの死者が出たわ。
その後、魔道兵器で厄災を止めた。
結局使う事になるなら早く使うべきだったと言う人が多く居た、でも仕方ない事なのよ。この国にはもう支払いができる程の余力がなかったのだから。
お陰で国中の備蓄を使う事になったわ。
次が来たらもうおしまい。
そして、ゲートが現れた。
王も過労で倒れてしまった。
この国は終わってしまったの。」
顔を伏せるリンネ。
意を決したようにリンネは続けた。
・リンネ
「簡単な話だったのよ。
私が夢を諦めれば良いだけ。
帝国の勇者は要求を出してきた。
私が彼の奴隷になれば助けてくれると。」
エリシャがこの言葉に反応する。
・エリシャ
「あんの野郎、、、」
・リンネ
「不思議よね、ここから帝国まで2日かかる。
なのに奴らはゲートが出現して直ぐに来た。
帝国勇者もやって来て私を見ていたわ。
不愉快しか感じなかった。
少し考えればわかる事なのに。
全部、あいつらがやっていた事だって。」
また、涙が流される。
・エリシャ
「そんな事はさせにゃい。
私が、浩二がにゃんとかしてくれる。
だって、私もリームも同じだったから。
浩二に救って貰ったんだから。」
辛い思いをしていたのだろう。
この国の王も辛かったよな。
・「帝国、思った以上に腐ってんな。」
まずはやれる事から始めよう。
・「リンネ、負傷者はこれで全てか?」
・リンネ
「重傷者が奥に居るわ。
奥に見える布で区切ってある所に居る。
別室に居るのは王と勇者だけね。」
んじゃま、パパっと済ませますか。
まずは負傷者の回復からだ。
っと、その前に。
・「悪いんだけどさ、今からやる事。
エリシャがやった事にして貰って良い?
ちょこっと考えてることがあるからさ。」
全力で「ざまぁ」と言ってやりたい。
帝国の勇者、あいつはやり過ぎた。
・エリシャ
「私は良いけど、浩二は良いの?
ずっと不思議だったんだけどさ。
英雄ににゃりたくにゃいのかにゃ?」
・「ん~、あんまり興味ないかな。
元々引き籠りだったしね。
あまり人を信用できないってのが本音かな。」
・エリシャ
「浩二の過去?何かあったの?」
・「まぁ、色々とね。
とりあえず今はやれる事をやろう。
リンネも話を合わせてくれるかな?」
・リンネ
「ええ、あなたの言う通りにするわ。」
・「では始めるか、モデル『レンジャー』」
俺は想像する。
この地獄を一気に反転させる武器。
・「『リバースシューター』」
*リバースシューター
前回説明したリバーサーの範囲武器。
ナノマシンを散布して回復させる。
効果範囲は驚異の半径54m。
本来はAPの回復用。
浩二もそこまで考えていない。
回復だからいけるんじゃね?程度である。
しかし浩二の想像通りに作用するのは『想像力』『妄想力』『具現化』のスキルのお陰かもしれない。
俺の一撃で部屋中が緑の霧に包まれる。
一応、奥の方にも放つか、、
・「どんどん行きます、『リバボーン』」
*リバースボンバー
下位のリバースシューターと上位のリバースシューターの間に位置する回復武器。
先程、浩二が使った物より劣る。
一時期「リバボーン」と言いながら放つ事に作者がハマっていた為、今回はこの回復武器を採用。
・「リバボーン、リバボーン。」
調子に乗って4,5発程発射。
離れた所にも放てるところが良いよね。
お陰で部屋中が緑の霧で包まれる。
何も見えなくなるほどに、、、
・「やべ、やりすぎちゃった。」
ついつい無駄に撃ちたくなります。
・兵士
「何だ?敵か?
敵襲!敵襲!」
お陰で部屋は大混乱。
驚きで傷が治ってる事に気付いてない様だ。
仕方がないので大きな音でも出すか?
・「危ない、伏せろぉぉぉ!
と言っておいて『レイヴン』装備。」
*レイヴン
連射力がエグいアサルトライフル。
使い方では中々の強さを誇る。
それなりに使いやすい武器。
俺は天井に向けて撃ちまくる。
ゲームではさほどだったが実際に撃つと結構な音が出るんですね、流石は銃火器です。
兵士達は混乱していた。
しかし誰かが言った「危ない、伏せろ」の声に反応してとりあえず地面に伏せた、条件反射と言うやつだ。
霧が晴れる頃には音も止んだ。
一体何事かと、恐る恐る頭を上げる。
・「後は任せた、勇者エリシャ殿。」
思いっきり丸投げして俺はエリシャに跪く。
俺の言葉でハッとするエリシャ。
そして見事に対応してくれる。
・エリシャ
「我が名はエリシャ、グランデの勇者だ。
皆の怪我は既に治してある。
まず敵ではない事を理解してほしい。」
エリシャの言葉で自身を確認する兵士。
言葉通り怪我が治っている。
奥では重傷者達が立ち上がっている。
そして前に出てきた。
・兵士
「隊長!ご無事でしたか!」
瀕死の状態からの復活。
既に命を諦めていた者も居ただろう。
痛みから逃れたい。
早く死にたい。
そんな地獄から一瞬で戻って来た。
状況を理解するのに時間は掛かるだろう。
・「エリシャ、ここは任せて良いか?
俺は勇者と王を助けに行く。」
・エリシャ
「あんまり良くにゃいけど、頑張る。
後でご褒美期待してるよ。」
エリシャはこの場を収めてくれるようだ。
ご褒美の事は後で考えよう。
美味しい物でも探してくるか。
・「リンネ、勇者と王の所に案内してくれ。」
・リンネ
「え?、、ええ、解ったわ。」
どうやらリンネも理解しきれていない様だ。
まあ、あんな光景観たらそうなるわな。
怪我人がいきなり回復したんだ。
しかも一気に全員が。
そりゃ驚くわな。
・リンネ
「一体、何をしたの?」
・「リバボンしました。」
何となく答えてしまった浩二。
・リンネ
「『リバボン』って言う魔法?
回復魔法だなんて聞いた事ないわ。」
あ、変な理解をしてしまった。
まあ良いか、今度からリバボンにしよう。
そんな事を話しつつ勇者の部屋の到着。
部屋に勇者が眠っていた。
とりあえず布団を剥ぐ。
・リンネ
「サリウス、、、。」
昏睡状態の勇者。
方腕は切り落とされている。
方脚もだ、、、
残った腕も足もあらぬ方向に曲がっている。
・「これは、魔物の仕業ではないよな?」
今まで戦ってきて気付いた事がある。
切り口が真っ直ぐなのはおかしい。
包帯越しでも解る。
更にこの骨の折られ方。
人的なものを感じる。
魔物ならこんな事しない。
敵を殺すには効率が悪いから。
それに頭や顔には傷が無い。
四肢だけを狙って襲う魔物など居ない。
効率を求めるなら頭を狙うはずだ。
それに動けない相手なら喰うか殺す。
この状態で生きているのは不自然だ。
・リンネ
「帝国の勇者にやられたのよ、、、。」
・「この状態でよく生きてるな。
出血死とかしなくて良かった。」
・リンネ
「あいつは私を奴隷にすると言った。
そうすればこの国を助けると。
サリウスは怒ったわ。
そしてあいつに戦いを挑んだ。」
・「返り討ちに逢ったって事か。」
あいつそんなに強いのか、、、
あいつの名前、なんだっけ?
・リンネ
「あいつは『宝珠の実』を食べている。」
・「『宝珠の実』?」
・リンネ
「この国で100年に一度取れる奇跡の実。
食べた者のLVを最大まで引き上げる。
勇者限定だけどね。
この国は帝国にこの実を献上する義務があるの。」
成る程、実を食べたあいつのLVはMAX。
この国の勇者では太刀打ち出来なかった訳か。
てかドーピングの粋を超えてるぞ。
チートみたいなもんじゃねぇか。
・リンネ
「それが解ってたのにサリウスは戦ったわ。
私の為に戦い、そして負けた、、、。
私達は帝国に従うしかなかったの。
でもあいつらはサリウスを殺さなかった。
死なない程度に治療をして帰った。
不思議よね。
こんな状態なら死んでもおかしくないのに。
お陰でサリウスは一命をとりとめた。
でもね、最後に帝国の勇者は言ったわ。
厄災が終わったら、、、
サリウスは死ぬ。
死ぬ前にサリウスの目の前で私を、、」
・「もう良いよ。
そんな未来はやって来ない。」
俺はリンネの話を途中で止める。
全てだ、全てを覆してやる。
・「『リバーサー』装備。」
「想像」するんだ。
自分の力を信じろ。
・「いくぞ、、、」
俺はサリウスにリバーサーを掛ける。
すると見る見るうちに傷が消える。
・リンネ
「うそ、、、腕が生えてる。」
切り落とされた腕が再生する。
脚も再生し始めた。
そして、、、
・「何か出てきた。」
見た事もない黒い球がサリウスから出て来る。
なんだ?
動いた!
・「『レイヴン』装備!」
嫌な予感がした。
だから即座に撃ったんだ。
・黒い球
「ばぁぁぁぁぁぁぁ」
聞き難い奇声を上げて珠が砕け散る。
なんだ?魔物だったのか?
・リンネ
「い、、、今のは?」
・「仮説でしかないが、恐らく魔物だ。
サリウスが死なない様に生命維持していた。
最後に意識を回復させて殺す為じゃないか?
帝国勇者の言い方から考えるとそんな感じ?」
何ともエグイ考えをしているな。
しかし、魔族ってのは何でもありだな。
・リンネ
「帝国、、、許せない。」
・サリウス
「うぅぅ、、、」
そうしている内にサリウスが目を覚ます。
・サリウス
「僕は?あの時死んだはずじゃ。」
相当な攻撃を受けてたんだな。
よく頑張った。
・リンネ
「サリウス!」
リンネがサリウスに抱き着いた。
そして大きな声で泣き始める。
今度の涙は先程とは違う。
歓喜の涙だ。
俺は一人部屋を出た。
感動のシーンは二人で満喫すればいい。
俺はとりあえずエリシャの元に向かう。
自分に与えられたスキルに感謝しながら。
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