第13話 エルデン王国 厄災第3波
~エルデン王の屋敷前~
俺は一人屋敷まで来ている。
とりあえず庭で待機だな。
夜はかなり更けてきた。
お陰でここからでも見える。
ナント村の方角が赤く見えた。
王達は俺の言う事を聞いてくれたようだ。
この作戦で一番苦労した事があった。
エミリアの説得だ。
一緒に行きたいとずっと言うのだ。
困ったものだ。
なのでエミリアにだけ作戦の詳細を教えた。
そうして彼女を納得させる事に成功。
APの概念を知るエミリアだ。
俺のAPの数値を教えて安心させた。
・「さて、ボチボチやって来るかな?」
バリバリバリ
嫌な音が響き渡る。
夜更けなのでいつもより大きく聞こえる。
・「この音は消せないようだな。」
バリーン
遂にゲートが割れた。
予想通りだ、、、
割れたゲートから魔物が飛び出す。
思った通り飛行能力を持つ魔物ばかり。
そしてひと際目を引く存在が出てきた。
・???
「止まれ、隊列を組み待機だ。
どういう事だ?何故あの様な火が?」
現れたか、、、あれが魔族?
羽が生えている、顔色が悪い。
あと妙にデカい、、、
それ以外は人間みたいだな。
俺は声を掛けた。
・「待ってたよ、、、お前は魔族か?」
俺の言葉で驚く魔族。
・???
「読んでいたと言うのか?
それともずっと待っていたのか?」
ふむ、待っていたと思わせた方が良いか?
読んでいたと思われると警戒されそうだし。
・「5日間も待たせやがって。
夜間に見張りする人の身にもなれってんだ。
こんな所にゲートを出しやがってよ。」
適当に言い放ってやった。
・???
「そうか、それもそうだな。
ゲートの危険度を知る者なら当然か。」
考えて無かったのかよ、、、
意外とアホなのか?
・「んで、あんたは誰なの?」
・デイズ
「貴様が怖がっていないのが気になるが。
まあ良いだろう、我が名はデイズ。
魔族と言えば理解できるか?」
やはり魔族だ。
意思の疎通も出来ると判明した。
・「んで、デイズさんは帝国に言われてこの国の女性をさらいに来たってわけ?」
・デイズ
「人間如きに命令されるのは癪だがな。
だが、我が主の命令も同じ。
我は同胞の為に従っているに過ぎない。
良いか?人間に言われたわけではない。
悪までも主の命令だ。」
デイズの不満がビシビシ伝わってくる。
何か、こいつチョロそうだな。
・「そっか、デイズさんも大変ですね。
俺も命令だからやってるだけなんですよ。
もう一緒に帝国とか倒しません?」
・デイズ
「人間の帝国とやらは主の駒だ。
そして貴様らは餌、無理な相談だな。」
あっさり聞き出せた、、、
これで確定だな。
・「そっか、残念だ。
んじゃこれからどうする?」
・デイズ
「無論、ここから飛び立ち目的を果たす。
して、貴様は誰だ?
只の兵士にしては妙に落ち着いているな。
理解に苦しむ。」
そろそろ名乗っておきますか。
・「エルデン国の勇者、浩二だ。」
名を聞いた途端、殺気が渦巻く。
・デイズ
「そうか、貴様が勇者か。
この国の勇者は殺して良いと言われてな。
これも何かの縁。
貴様はわが眷属が血祭りにあげてやる。」
殺る気満々だな。
その方が俺もやりやすい。
・デイズ
「死ね!」
デイズの合図で魔物が動き出す。
勇者と聞いて攻撃目標を俺に絞ったな?
魔物は一斉に飛び掛かってくる。
まずは俺を殺す事にしたのだろう。
・「好都合だ、ターレット起動!」
昼間に設置しておいた箱が変形する。
全ての箱が起動した。
自動追尾のターレット砲台。
全部で12カ所から一斉射撃が始まる。
*ターレット
自動で敵を認識して攻撃する銃火器。
近くの敵から狙っていく特性がある。
弾が切れるまで撃ち続けます。
起動以外はすべて自動なので便利。
弾は一箱200~400発。
物によります。
索敵範囲は300~400m。
攻撃力は1発40~200前後。
物によります。
・デイズ
「これ程の兵力があるとは聞いていないぞ。」
あれよあれよと撃ち落とされる魔物たち。
凄まじいスピードで倒されていく。
・デイズ
「何なのだ?何の魔法だ?
これ程の精度、威力、連射速度。
一体この国は何なのだ?」
隠れている兵士の攻撃だと勘違いしている。
まぁ仕方ないか。
この暗闇だとターレットは見えないだろう。
それが全方向12カ所から放たれるんだ。
通常弾、ミサイル砲撃、レーザー砲。
3種類だから一人の攻撃とは思わないよね。
・デイズ
「て、、撤退だ!」
デイズが判断を下す。
だが、少し遅かったな。
数にして約200の魔物は数十秒で壊滅する。
そして全ての魔物を倒したターレット。
次は一番遠くに居たデイズに目標を定める。
12カ所からの一斉射撃が始まる。
・デイズ
「ぐぁぁぁぁぁ」
さて、魔族のHPはどれ程だ?
正直どれ程か想像がつかない。
ひょっとしたら倒せないかもしれない。
そう考えていた。
・デイズ
「、、、、」
弾が着弾して即落下。
倒すべき目標を失ったターレット。
自動追尾機能が停止。
向いている方向に打ち続ける
・「あっさりと倒してしまった。」
死に真似とかは無意味です。
自動追尾が生命反応を判別してくれますので。
という事は、、、討伐完了という事ですね。
・「ふむ、、、12カ所から一斉射撃。
多分5~9発命中で終わったよな?」
連射速度が速いので正確な数値が解らん。
仕方が無い。
一発の最大攻撃力が400として、、、
9発と仮定しておこう。
多く見積もってHP3600前後かな?
・「飛行能力を持ってHP3600か。
普通に戦ったら勝てないよな。」
帝国は駒だと言っていたな、魔族が今まで生かさず殺さずこの世界を征服していたのだろう。
帝国には甘い蜜を吸わせて、、、
この世界のカラクリが解って来た。
・「言ってみれば人間牧場って所か?
帝国に管理させて、定期的に収穫に来る。
そんな所だろうな。」
正直考えたくはなかった。
考えたくなかったけどそういう事だよね?
・「さて、この事を皆に話しますか。
これからどうなる事やら。」
他の魔物はとりあえず放置だ。
ロドルフに任せよう。
俺は魔族の亡骸を抱えてナント村に戻る。
~ナント村~
・ロドルフ
「見たか?」
・コーン
「見ました、、、」
全ての兵士達が目撃した。
殆どの国民もだ。
ゲートの割れる大きな音。
その後、夜空に放たれる無数の光。
小さな一列の光は炎魔法?
一筋の光は光魔法?
小さな爆発が連続して起こっていた。
あれは別の魔法?
あの場所には勇者しかいない筈だ。
様々な角度から攻撃が放たれていた。
・コーン
「あそこは、、、箱の位置だ。」
コーンは思い出した。
浩二がせっせと設置していた箱の事を。
・コーン
「まさか、この為に木を伐採したのか?
攻撃がしやすいように。
浩二殿はここまで読んでいたのか?」
浩二の所業に恐怖すら覚える。
たった一人で厄災を止めているのだ。
・ロドルフ
「エミリアが連れてきた勇者。
どうやら本物の救世主だったようだな。」
ナント村は静まり返っていた。
暫くして、、、
・「ただいまぁ~」
何とも気の抜けるような声で帰って来た。
先程の攻防をしていた者とは思えない。
・エミリア
「浩二!」
真っ先にエミリアが俺に抱き着く。
そして気付いた、、、
・エミリア
「それは、、何?」
・「魔族だよ、やはり現れた。」
エミリアは驚愕した。
そしてコーンもロドルフも現れる。
・ロドルフ
「厄災はどうなった?」
・「全て倒してきた、んでこいつが魔族ね。」
俺はデイズの亡骸を王に見せる。
・ロドルフ
「魔族?魔族だと?
魔族は討伐不可能なはずだ。」
・コーン
「しかし、こいつは人間に似すぎている。
到底魔物とは思えません。」
混乱が広がる、、、
これは説明が必要だな。
・「一度、説明がしたい。
とりあえず明日にしないか?
屋敷の周りの魔物も何とかしないとだし。」
・ロドルフ
「数はどれ程だったのだ?」
・「ん~暗くてよく解らなかった。
50~100って所かな?」
200体である。
・コーン
「たった一人で倒したというのか。
流石としか言えない。」
・ロドルフ
「浩二殿はゆっくり休まれよ。
エミリア、浩二殿を案内してくれ。
残りの者は屋敷に向かうぞ。
安全の確認、そして魔物の遺体駆除だ。」
王の号令で兵士達が動く。
んじゃここは任せますか。
正直言うと恐ろしく眠い。
このまま倒れてしまいそうな程に。
ここで寝てやろうかしら。
・エミリア
「浩二、こっち。」
エミリアに連れられて宿に向かう。
道中、眠気に負けそうになる。
フラフラしながら宿に向かった。
だってもう夜中だよ?
昼間は重労働だったし。
ずっと気を張って待ってたんだもの。
そりゃ疲れるさ。
そんな足取りを国民たちは見ていた。
フラフラになりながら、宿に向かう。
一人では歩けないほ程に疲弊している。
姫に支えられながら何とか歩く姿。
たった一人で我々を守ってくれた勇者。
そんな彼に感謝しない人は居ないだろう。
~次の日?~
がっつり寝ていた俺。
やべ、もうすぐ夕方じゃないか。
相当疲れていたらしい。
村に戻って来てからの記憶が曖昧だ。
何度か寝落ちしながら歩いていたらしい。
・「エリシャ、聞こえるか?」
俺は通信を始めた。
・エリシャ
「浩二!大丈夫?」
何故か心配してくるエリシャ。
・「何かあったか?」
・エリシャ
「昨日から通信しても返事がにゃくて、すっごい心配したんだよ?」
あれ?昨日って通信あったっけ?
気付かない程集中しすぎてた?
・「そっか、ごめんな。
厄災の事に集中し過ぎていたかもしれない。」
一応謝っておこう。
・エリシャ
「こっちの厄災が終わったからそっちに向かってる、夜には着くと思う。」
そんなに心配させてしまったのか。
何か悪い事したな。
、、、ん?
グランデの厄災が終わった?
向こうは一日遅れじゃなかった?
6日目でゲートが開いたのか?
・「6日でゲートが開いたのか?」
・エリシャ
「え?にゃのかで割れたよ?」
あれ?何かおかしいな。
しっくりこない感覚を感じていると部屋にエミリアが入って来た。
・エミリア
「浩二!心配したのよ。
良かった、、、良かった。」
そしてこの心配具合である。
う~む、どうなってんの?
この後エミリアに聞いたところ。
厄災の次の日はずっと寝ていたらしい。
つまり、厄災から2日経過していた。
マジでか?
知らないうちに凄まじいプレッシャーに心が疲れ果てていたみたいだ。ここ数日で厄災を2回壊滅させたしな。
・「心配させてすまなかった。
もう大丈夫だ。」
俺に抱き着くエミリアを安心させる。
エリシャにも事情を話して謝っておいた。
・エリシャ
「こっちとエルデンを行き来してたしね。
厄災もこっちの分も倒して貰ったし。
浩二が無事でにゃにより。」
エリシャが労ってくれる。
・エリシャ
「んじゃ、積もるはにゃしもあるので着いたら連絡するね。」
通信が切れた。
夜に来るって言ってたな。
て事は屋敷に戻ってた方が良いか?
エミリアにその旨を話してみた。
エリシャに逢えることを喜んでいる。
何だかんだで仲良しなのだ。
そして俺はエミリアと共に屋敷に戻る。
戻る途中、エミリアに聞いた話によると屋敷が残っていた事にロドルフは泣いて喜んでいたそうだ。完全に偶然ですが、喜んで貰えたなら良しとするか。
こうして厄災第3波は終了した。
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