第11話 エミリアの帰還
・エミリア
「お父様!お父様!」
屋敷に戻って来たエミリアは父を探す。
しかし屋敷にその姿はない。
・エミリア
「何処に行ったのかしら、、、」
その声が聞こえたのだろう。
屋敷に残っていた兵士が声を掛けて来た、どうやらエミリアたちの帰りを待っていたようだ。
・兵士
「おかえりなさいませ、エミリア様。
南の村「ナント」でロドルフ王がお待ちです。
至急向かいましょう。」
一人でゲートの下に居るのが怖かったのだろう、早くここから離れたい様子が伺われた。
・エミリア
「ゲートが出現して何日目になりますか?」
・兵士
「今日で4日目になっています。」
・エミリア
「そう、、、少し準備をしてまいります。」
4日間ずっと馬車の移動だった。
少しくらいはゆっくりしたいのだろう。
・「少し部屋で休んでいると良い。
風呂でも沸かしておくよ。」
エミリアは何も言わずに頷く。
そして自分の部屋に戻っていった。
・兵士
「エミリア様は大丈夫でしょうか?」
・「かなり疲れているんだろう。
急いでるのかもしれないが、今は少しだけ休ませてやってくれ。」
兵士は頷いてくれた。
・「あんたも疲れただろう?
少しゆっくりすると良い。
出発は今日の夕方にしないか?」
俺の提案に少し悩む兵士。
グランデに一緒に行っていた護衛兵が先に「ナント」に向かい、ロドルフに事情を説明しに行ってくれることになった。
・兵士
「私も一緒に「ナント」へ行きます。
浩二様はエミリア様をお願いします。」
こうして屋敷には俺とエミリアだけが残った。
俺はまず風呂を入れに向かう。
暫くして準備が整うとエミリアに声を掛けた。
少し眠っていた様子だった。
・エミリア
「ごめんね、浩二。
あなたの方が疲れているはずなのに。」
・「気にするな、今はゆっくりすればいい。
とりあえず出発は夕方だ。
風呂に入ってサッパリして来いよ。」
エミリアは頷いてお風呂に向かう。
俺は厨房に向かった。
・「何か作るか、、、何が良いかな?」
適当に考えて料理をする。
簡単な物しか作れないが無いよりはマシだろう。
悪戦苦闘の料理は思ったよりも時間が掛かった。
エミリアが戻って来たので俺も風呂に入る。
・「ふぅ~」
やはり風呂は最高ですな。
深呼吸で思考までサッパリする。
さて、今回はどうしたものか。
俺は考えていた事を整理する。
今回の敵の攻め方についてだ。
国の中心にゲートが出現した。
異例の事だと言っていたな。
、、、聞いてみるか。
・「エリシャ、聞こえるか?
少し聞きたい事がある、今大丈夫か?」
俺は『音声チャット』、もとい通信を試みた。
するとすぐに返事が来た。
・エリシャ
「大丈夫だよ、にゃにかあった?」
・「こっちにゲートが出現した。
そこで調べて欲しい事が2つある。
過去の歴史にゲートが国境付近以外で出現した事があるか、それと飛行型の魔物は存在するのか、この2つだ。」
・エリシャ
「わかった、すぐにリームに聞いてみる。
ゲートが出てにゃん日目?」
・「4日目だ、既に青から黒に変化している。」
・エリシャ
「そっか、助けに行きたいんだけど実はこちらもゲートが出現したの。」
4日前に撃退したばかりなのに?
連発とか有りかよ。
・「こっちは何とかする。
エリシャは自国を守ってくれ。」
・エリシャ
「了解!ありがとう。
じゃあ聞いてくるね。」
そうして通信が切れる。
出現場所も出現時期もランダムか、、、
なんか、、、引っかかるんだよな。
・エミリア
「浩二?大丈夫?」
そんな事を考えていたらエミリアが来た。
扉越しに声を掛けてくる。
・「あ、ごめん考え事をしていた。
今から上がるよ。」
どうやら結構時間が掛かってたようだ。
心配になって見に来てくれたんだな。
俺は風呂から上がる。
エミリアと話しながら疑問を解決するか。
扉を開ける。
エミリアが布をもって待っていた。
・「ちょっ!」
思わず変な声が漏れる。
エミリアは俺に布を被せてくる。
そして抱き着いて来た。
・エミリア
「ゲートが、、、ゲートが。」
歴史上で一度も確認されていない出来事が起きている、不安で押し潰されそうなのだろう。
一人で考えて不安でたまらなくなった。
そんな所かな?
俺はエミリアの頭を優しくなでる。
・「大丈夫だ、俺が居る。」
エミリアが落ち着くまで頭を撫でていた。
出来るなら、服を着させてほしかった。
~ナントの村~
・ロドルフ
「そうか、2人共帰って来たか。」
ロドルフはエミリア帰還の報告を受け取った。
そして護衛に質問する。
・ロドルフ
「それで、エミリアと浩二殿は?
この旅で上手くいったか?」
・護衛
「それが、、、」
護衛もパーティーに参加していた。
エミリアから離れない様に守る為だ。
当然、バルコニーでのやり取りも観ていた。
・ロドルフ
「グランデの勇者に先を越された?
風習と言っていたんだな?
そうか、風習か、、、」
ロドルフがなにやら考えている。
・ロドルフ
「この国の法律に追加するか?」
・コーン
「アホなこと言わんでください。」
兵士長のコーンに突っ込まれる。
王様に軽く突っ込む当たり、この国の王様は非常に寛大な心を持っているらしい。
・ロドルフ
「しかし、このままでは浩二殿が。」
・コーン
「エミリア様を信じましょう。
色恋沙汰は当事者同士の問題。
部外者である我々が介入すると良い事はありませんぞ?」
コーンは王様に助言する。
王は頭を抱えている。
・護衛
「浩二殿は強くお優しい方です。
いっその事、身分など関係なく全てお許しになれば宜しいのではないですか?」
・ロドルフ
「そうか、、、それも有りだな。
だが一番はエミリアにして貰わないとな。
この国の為にも。」
王の悩みが少し解消された、そして事が落ち着いたらグランデに出向く事を決めた。
・ロドルフ
「これでゲートに集中出来る。」
一人娘の事になるとどうしても考えてしまう。
王の前に一人の親なのだ。
・コーン
「私も、応援しますよ。」
・護衛
「私も。」
この国の兵士は皆、エミリアの幸せを願っていた。
~夕刻・ナントの村~
・エミリア
「ただいま戻りました。」
屋敷で浩二とゆっくりしていたエミリア。
随分とスッキリした顔でやって来た。
・ロドルフ
「うむ、大儀であったな。」
王はエミリアを労う。
護衛からグランデ救援の話は一通り聞いてある。大成功だったという事も。
戦闘時はエミリアの命令と浩二のお願いで町に避難していた護衛兵、戦闘の詳細は知らなかったがスプライトフォールの光は見えた。
誰がやったのかは一目瞭然だ。
その後、パーティーの様子から手柄をグランデ側に譲ったのだと解釈した護衛兵、この事も報告済み。
優秀な兵士である。
・ロドルフ
「浩二殿、今回も助けられたな。
ありがとう。」
やはり頭を下げてくる王様。
上の者が下の者に頭を下げる、この行為が良いか悪いかは知らないが俺は好きだ。
・「早速で悪いんだが聞きたい事がある。
帝国の人間が屋敷に来たか?」
俺は気になっていた事を質問する。
・ロドルフ
「よく知っているな。
救援要請を出していないのに来てたぞ。
魔道兵器を持って来た。
交渉には応じずに国へ返したがな。
歴史通り、兵器を貸すだけでとんでもない要求をしてきたから断った。浩二殿が居なかったらと思うと恐ろしい。」
やはりそうか、色々と繋がったて来た。
・エリシャ
「浩二、聞こえる?」
いいタイミングでエリシャからの通信が入る。
・エリシャ
「遅くにゃってごめん。
えっと、ゲートは国境付近にしか出現しにゃいみたい、あと飛行型の魔物は記されていにゃかった。魔将軍のにゃかに飛べるのが居たとは書いてあるみたい。」
ふむ、成る程ね。
・「最後の質問だ。
そちらのゲートは国境付近だろう?
人が余り寄らない場所じゃないか?」
・エリシャ
「よく解ったね、リームがぼやいてた。
あんな所は誰もいかにゃい所だって。
私は知らにゃいけど、にゃんだか怖い噂があって誰も近寄らにゃいんだって。リームはお化けが苦手みたい。」
・「そっか、色々ありがとな。
お陰で何とかなりそうだ。
エリシャも頑張れよ。」
・エリシャ
「お安い御用だよ!
お互いに頑張ろうね。」
エリシャとの通信を切る。
もう少しだ、、、
・「エミリア、聞かせてくれ。
ゲートの出現場所には何か噂があったか?」
・エミリア
「え?」
暫く考えるエミリア。
・エミリア
「ある、あるわ!『始まりの魔獣』の所は「首なしの森」と言う噂があった。第2波の平原に続く絶壁には「彷徨いの崖」と言う噂。
どちらも怖い噂よ。
誰も近寄りたくない場所だった」
・ロドルフ
「どういう事だ?
それに先程の独り言、、、
エリシャと言えばグランデの勇者。
一体何が起こっている?」
ロドルフ王には悪いが説明は後だ。
少し整理したい。
ゲートはいつも人気のない場所。
怖い噂があって近寄りがたい。
国境付近なら尚の事だな。
魔獣や魔族は討伐出来ないと言う歴史。
退却させるという事に違和感がある。
帝国の貸し出す魔道兵器。
能力に見合わない要求額。
100程度では倒せなくて当たり前だ。
これはどう考えてもおかしい。
最後に屋敷にやって来た帝国の人間。
貸し出すのが当然だと言う感じがする。
そして今までの歴史の流れ。
・「俺の仮説だが、バンガードからの要求。
国はそれぞれ別の物を用意してないか?」
・ロドルフ
「何故それを?機密の筈だが。
まあ要求を断ったのだ、今さらだな。
浩二殿には全てを教えよう。
要求は国それぞれだ。
商人の国「アキナ」は金を。
開国の国「グランデ」は兵を。
豊穣の国「フーバ」はある果実を。
そして、、、、」
一旦区切るロドルフ。
・ロドルフ
「奴隷の国「エルデン」は若い女性を。
これが歴史上続けられて来た事だ。」
この国に対する周りの対応が納得できた。
・エミリア
「奴隷の国ですって?どういう事ですか?」
・ロドルフ
「我が国は他国からそう認識されている。
公に出来ないから呼ばないだけだ。」
この話を聞いていた一部の兵士。
そしてエミリアは愕然とした。
知りたくなかった真実を知ってしまった。
だが俺には一番知りたかった情報だ。
・「ロドルフ王、感謝する。
これで全てが繋がった。」
そう言うカラクリだったか、、、
お陰で何となく敵の攻め方が解って来た。
今回の襲撃、必ず異例の事が起きる。
全て、俺がぶっ潰してやる。
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