第10話 歴史が変わる時

デストロイヤー軍師降臨

いい雰囲気になった場を一瞬で破壊する。


・軍師

「おやおや、奴隷になる前の思い出作りか?

救援に来ておいて何も出来ない様な奴と?

そうか、こんな奴しか相手にして貰えないのか!

これは失礼した!」


見事に場を凍らせる軍師殿。

ある意味天才だな。


・リーム

「私達は奴隷にはならないわ。

一体何を言っているの?」


・軍師

「今さら何を言っても無駄だ。

魔道兵器の威力を見ただろう?

一撃で魔物を消滅させたんだぞ?」


ふむ、このおっさんは勘違いしているらしい。

魔道兵器で魔物を倒したと思ってるんだね。

100ダメージしか出せない兵器で何を言ってらっしゃるのかしら。


・エリシャ

「あの魔物たちは私が、、、」


・軍師

「よいよい、何も言わんでよい。

私も鬼でない、好きにすればいい。

今日は存分に楽しいんで来るがよい。

人生最後の自由を満喫するんだな。」


そう言い残して去っていった。

あいつ何しに来たの?


・エリシャ

「一体にゃんだったんだ?」


・リーム

「さぁ?」


・エミリア

「飲み過ぎたんじゃない?」


エミリアの一言で皆が納得した。


軍師は知らない。

明日になって起きる出来事を。

この国が変わる時が来たのだ。


・エリシャ

「浩二たちは国に戻るのか?」


エリシャが少し寂しそうに聞いて来た。


・リーム

「この国で私達と一緒に居ない?」


リームが無茶を言う。

無茶と知ってて言った感じかな?


・エミリア

「まだ、エルデンの厄災も続くわ。

明日にでも戻らなければならない。

私達にも浩二が必要なの。」


エミリアがリームの申し出を断る。


・リーム

「そうよね、ごめんね無理言って。」


リームは悲しい顔になる。

解ってた事だけど、、、


・エリシャ

「また、逢えるかな?」


エリシャが心配そうに問い掛けてきた。

その一言で思い出した。


・「そうだった、伝えなきゃいけない事。」


エリシャに逢ったら言う事があった。


・「エリシャの能力はそのままにしておくから。

好きに使ってくれればいいよ。

音声チャットも出来る様に教えるね。

何かあったらいつでも話しかけて。」


こうすればエリシャはずっと能力を使える。

つまり常に俺と同じ能力が使えるのだ。

教えた『ダイバー』限定だけどね。


・エリシャ

「そうにゃの?いつでも話が出来る?」


能力ではなく俺と話す方に喰い付いて来た。

まだ聞き足りない事でもあるのかな?

一回しか教えてないから当然か。


・「そうだね、いつでも話せるよ。

まだ解らない事も多いだろう?

何か聞きたい事があったら何でも聞いてね。」


エリシャが目に見えて元気になる。

すると何故かリームが質問してきた。


・リーム

「何でも聞いていいの?それじゃあ教えて。

浩二とエミリアは婚約してるの?」


リームがいきなり爆弾を投下する。

いや、そう言う事じゃなくてね。

まあいいか応えておこう。


・「いや、してないよ。」


だって相手は一国の姫様ですよ?

恐れ多くて口が裂けても言えません。


・エリシャ

「本当か?」


念を押すように聞いてくる。


・エミリア

「えっと、、、」


何故か答えにくそうにしているエミリア。

何か政治的な事でも絡んでくるのかな?

よく知らないが代わりに応えておくか。

政治とかに巻き込まれるのはごめんだし。


・「本当だよ、エミリアは一国の姫様だよ?

俺なんて眼中にないでしょう。」


そう答えた俺。

俺の言葉に固まる3人。

なんか変なこと言った?


・エリシャ

「にゃんと、、、恐ろしい。」


・リーム

「鈍感?」


・エミリア

「ぅぅぅ、、、」


妙な空気が流れる、するといつの間にか戻って来ていた看護兵のお姉さんが一言。


・看護兵

「これは苦労しますね。」


そして去っていく。

いつの間に現れたんだ?


・エリシャ

「まあ、完ぺきにゃ奴にゃど居にゃいよね」


・リーム

「まだチャンスはあると取っておきましょう」


・エミリア

「ライバルが増える、、、」


こうして夜が深けていく。

そうそう、城の料理は美味しかったです。



~次の日~


これは後で聞いた話だ。


この日、この国で軍法裁判が開かれた。

砲撃兵多数の証言。

勇者への攻撃の事実。

その他、数々の汚職事件。

今まで軍師家系の権力を恐れて話せなかった事が次々と明るみに出る事となった。

絶望すら感じる魔物の大群に、たった一人で立ち向かった勇者。その姿に勇気をもらった人々が立ち上がったのだ。

その結果、軍師は罪に問われた。

階級の剥奪、お家断絶。

ずっと続いていた軍師の家系が途絶えた。


何だか恐ろしい世界だね。

まあ俺には関係ないか。


俺達は朝早くから出発していた。

エミリアの「これ以上ここに居るのは危険です」の一言で急いで国を後にしたのだ。

確かに第3波がいつ来るか解らないしね。


俺達が出発してからすぐにエリシャから通信があった事は言うまでもない。「一言言ってから行きにゃさい」と怒られました。

何だかすみません。


その時の通信でエリシャが教えてくれた。

本当は今回の厄災第2波が無事に終わったら、リームと共にエルデンに行こうと思っていたらしい。

エミリアがお風呂で誘っていたと言う。

しかしあの日のパーティーの際、グランデ王がリームとエリシャに頭を下げた。

軍師の権力に恐れて何も言えなかった事を謝罪して、軍師の家系による独裁政権を終わりにする事を誓った。

そして同時に国の為に力を貸してほしいと。

リームは国の民の為に残る事にした。

エリシャはリームを守るために残った。

そして通信の最後にこう言い残した。


・エリシャ

「今度は私が力ににゃる。

にゃんでも言ってね。

あと、エミリアに伝えて。

『次に逢う時は浩二を頂きます』ってね」


エリシャもスプライトフォールの魅力に魅入られたか?目の前で見てたしな。エミリアはその言葉を聞いて怒ってた。

馬車はエルデンに戻る為にひた走る。

再び起こるエルデンの厄災を止める為に。



~グランデ城~


通信が終了した後、リームとエリシャは浩二について話していた。話は2階のバルコニーで起きた出来事に至る。


・リーム

「ねぇ、あの時はああ言ってたけど。

実際はそんな風習ないんじゃない?」


・エリシャ

「ふふふ、バレた?」


・リーム

「やっぱり!抜け駆けは無しだよぉ~。」


・エリシャ

「こればかりは譲れにゃいよぉ~。」


2人は無事に厄災を乗り越えた。

そして偉大な力も手に入れた。

この国は、勇者エリシャが居れば大丈夫だ。

絶望の淵に立たされていた2人の女性、彼女たちは一人の男によって救われたのだった。



~エルデン王国~


エルデン王ことロドルフは頭を抱えていた。

第3波のゲートが出現したからだ。

そこまでは予想していた事だった。

問題は場所である。


・ロドルフ

「まさか、国の中心であるこの屋敷の上空に現れるなんて、、、」


ゲートはいつも国境付近に出現していた。

歴史書を読んでも国の中心に出現した事などなかった筈だ、どの歴史書を読んでもそうだった。

何かがおかしい。

いつもの歴史と違う事とは何だ?


・ロドルフ

「『始まりの魔獣』の討伐?

帝国への救援要請をしなかった事?」


この国でも歴史では第2波からバンガード帝国の介入が記されている。考えられるのはその2つしか思い浮かばない。


・ロドルフ

「どういう事なのだ?」


とにかく避難が必要だ。

中心から攻められるのだ、敵がいきなりバラけてしまう可能性が高い。国中の国民を集めて一カ所に避難するしかない。


・ロドルフ

「兵士に即刻命令を下す。

国民を集めよ、全ての民をだ!

南の村『ナント』に避難する。

急ぎ避難所と基地を構えるのだ。」


残された時間は少ない。

少しの時間も無駄には出来ない。


・ロドルフ

「エミリア、、、浩二殿。

早く戻って来てくれ。」


それはグランデの厄災第2波を撃破した、その日の話であった。



~グランデ出発から4日目~


・エミリア

「やっと戻って来たぁ~。」


エルデンの国境を越え無事帰国。

山と海に囲まれているエルデン。

国境の山を越えた時、不吉な物が見える。


・護衛兵

「姫様!ゲートらしき物が見えます。」


なんかこのパターン最初と同じだな。

エミリアは急いで馬車の外に出る。


・エミリア

「本当だ、でもおかしい。

何で?何であんな所にあるの?」


俺も馬車を降りる。

そして目の当たりにした。

国の中心、屋敷の上空にあるゲート。

あんな場所にまで出現するのか?

出現場所は自由自在かよ。


・エミリア

「何故?ゲートは国境付近にしか出現しない筈なのに。だって、そう書いてあったじゃない。」


自分に問いかける様に呟くエミリア。

そうなのか?いや、そうなんだろう。

エミリアは歴史書を暗記しているくらいだ。

凄いよな、あんなに一杯ある歴史の本を殆ど覚えてるなんて考えられないよ。


・エミリア

「急がなきゃ、急いで帰らなきゃ。」


エミリアの不安が加速する。


・護衛

「急ぎましょう、お二人とも馬車にお戻りください。」


護衛に言われて急いで戻る。

エミリアの顔がすぐれない。


・エミリア

「一体何が起こってるの?」


国の中心に出現したゲート。

今までに無い危機が迫っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る