・星の銀貨

「ただいま」

私はそう言いながら家の電気をつける。今誰もいないのかな?

「あれ?」

電気をいくらつけようとしてもつかなかった。もしや、電気代が払われてないのだろうか。とりあえず荷物を置こうと懐中電灯を玄関の棚から見つけだし、それの明かりを使い奥に進む。すると蹲る弟がいた

「ミキ?」

「姉ちゃん。母さんが逃げたよ」

とただ一言弟に言われただけだった。とりあえずその日は寝た。何も考えたくなかったから。次の日学校から帰る途中に電気代を払おうと自分のバイト代を確認しに行くと一円たりとも残ってなかった。今まで家のために貯めていたものも、弟のために残していたお金も全て。私は弟のために高校を辞めた。どの道お金を払えない。美緒やユミは心配してくれたが迷惑はかけられなかった。

「あら、相良さんじゃない。」

俯いて歩く私の前にはいつの間にか呉橋さんが立っていた。私は彼女にも一応話した。

「そう。全てを払い着くてしまったのね。だったら、私の家で働かない?弟さんの安泰も約束するわ。」

と言う。選択肢の少ない私は彼女について行った。

「あれ、呉橋さんの家ってそっちだっけ?」

「ああ、あれは学校に近いから兄の家にいさせてもらってるだけよ。実家はこっち」

と言う。さっきも聞いた感じだがどうやら金持ちらしい。

訂正。金持ちだった。少し離れた田舎町にどんと大きな昔ながらのの邸宅を構えていた。

家の中に通されると呉橋さんから契約書を貰った。私はそれを記入した。


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相良さがら あおい。それが、私の親友。ユミも言ってたけどやっぱり思い出せないわ。」

「そうよ。普通はそうなのよ。寺田由美子のようにその時、現場に居合わせない限りね。不覚だったわ。まさか、あのこが私たちの後をつけていたなんて。」

「ねぇ、弟さんはどうなったの?」

「ああ。相良さがら 幹人みきひとのこと?あの子はうちの使用人として働いているわ。姉の存在をあの子は覚えてない。母の知り合いという理由で偶然を装って接触した。そして、働く場所を設けてあげたの。普通に今は大学院生になってるわ。卒業したら独り立ちしていくと思うわ。」

「ねぇ、幹人君とは契約しないの?」

「出来たらしたいと思ってるわ」

「ねぇ、話にでてきたお兄さんって今、もう大人なの?それともあなたと同じ学生なの?」

「…ごめんなさい。それは言えないわ。」

「じゃぁ、もし外れてたら言って欲しいんだけどさ。もしかして、契約は学生しか出来ないとかある?」

「…」

「無言はイエスと捉えるわね。」

「最後に、私が契約したとしたらどんな話になっていたのか教えてくれない?」

「…それならいいわよ。もうあなたと会うこともないだろうし。」

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