6話
私のおうちは貧乏だった。服や文房具も満足に買えなかった。そんな家に育ったけど、私は悲しくなかった。それは、シングルマザーの母が必死に私と弟を育ててくれたからだ。愛されていたからだ。
「じゃぁ、相良さんは進学しないのね?」
私は担任の先生と今面談をしていた。
「はい。弟のためですから。」
と言う。
「頭いいのにもったいないわ。難関私大とかは許容範囲内だと思うよ。」
「いいんです。弟は私と違ってやりたいことがあるんです。それを支えてやりたいから」
「そう。相良さんがいうならしょうがないけど。ああ、そうだ。お母さんいつ来れるか聞いてくれた?貴方だけよ三者面談出来てないの。」
「すいません忙しくて。」
「ちゃんと話し出来てるなら何も言わないけど。後悔だけはしないでね」
私は先生の言葉を最後に教室を出た。そして、美術室に向かう。
「ああ、蒼ちゃん。やっほー」
「今終わった感じ?」
私に話しかけてくるのは親友であり幼なじみの
「由美子今日部活じゃないの?」
美緒と私は美術部だが、由美子だけ弓道部なのだ。
「へへ。サボり」
「はぁ、エースが何してるんだか」
「いいじゃん。大会前の息抜きよ。それに明日はちゃんと出る。」
こんな感じで私たちはクラスは違えど、いつも話していた。美術部のみんなもそれを見て一緒に和んだりする。それだけで楽しかった。
「あ、そうだ。今日バイトだわ。」
「ああ。そっか。大変だね。」
「また明日」
美術部の後輩と親友に別れの挨拶を済ませて下駄箱に向かう。
「えっと、相良さん?」
と私を呼びかける声が聞こえる。
「えっと、呉橋さんだっけ?うちのクラスの」
「そう。」
呉橋さんは同じクラスになるのは初めてでほとんど喋ったことがない。
「帰りってどっち?」
「岬駅で中央駅方面」
「じゃぁ、岬駅まで一緒にいい?私あなたと仲良くしたかったから」
そう言われたら断る理由はなかった。彼女は話してみると意外と面白い子でウマが合った。
「ああ、電車来ちゃった。じゃぁね。」
「ええ、じゃぁね。」
今日はバイトに行く足も軽い。なぜなら呉橋さんと話が弾んだのもあるが、給料日だからだ。私は駅前の喫茶店で働いていた。店長がいい人で今日は特別ボーナスを茶封筒で別途で貰った。これで、文房具が買える!家に帰る途中。ニャーとか細い猫の鳴き声がした。足元を見ると土で汚れたペットを入れるためのカゴがあった。覗いてみると子猫が二匹いた。見た目がどうも飼い主が来るように見えなかった。私は辺りを見渡し近くにコンビニがあるのを確認するとそこでキャットフードを買った。便利な世の中だ。私貰ったばかりの封筒からお金を出した。子猫の元に行く。飛び出てくるかもと思ったがそんなことは無かった。もしかしたらそんな体力すらないのかもしれない。私は子猫達にキャットフードを上げている間にどこか預けられないか考えた。そういえばここら辺に保護猫カフェがあったはずだ。もう夜遅くて営業時間外だから明日出直そう
「ごめんね。明日また来るね。」
私は車に轢かれることがないようにカゴを道の外側に少しずらした。私は小銭だけになった封筒をポッケに入れて再び家へ歩みを進める。
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