3話

言ってきます。私が声をかけても誰も返事はない。いつも通りだ。明日は返事をしてくれるかも。もしかしたら扉を閉める直前で走ってきて謝りながら私を見送ってくれるかもしれない。そんな願いは叶わずドアはがちゃんと閉められた。しかし、今日は珍しく違った。私の携帯に連絡が入ったのだ。

「おはよ」

学校に着くと親友の飯島いいじま 春乃はるの

「おはよう」

転入生の呉橋聖羅さんがいた。

「おはよう。春乃、呉橋さん。二人とも今日早いね」

春乃はいつも遅刻ギリギリで呉橋さんはいつも来るのが早い。私なんかよりもずっと、本当はダメなんだろけどやっぱり真理まりさんが苦手で早めに家を出ている。

「まぁね。てか、小姫さきこの時間にまだ学校来てるってことは変わってないんだね。」

と春乃に言われる。彼女は中学からずっと仲が良い。そして、唯一私の家庭事情を知っていた。

「変わってない?」

と呉橋さんは怪訝な顔をされる。

「いやさ、」

「ちょっと、春乃!」

「言いじゃん。さっきまで話してたんだけど、そんなに悪い人じゃなさそうだよ。」

「でも……」

「私はあなたの心配をして言ってるの。彼女は頭がいいし知識を貸してくれるかもしれない。それに美也もいない状況で不安しかないよ。」

田沼たぬま 美也みやは私の幼馴染だ。自分の夢であるピアニストになるために今は海外に留学している。私の事を話てあの子の指に何かあってからでは遅いのだ。あと、あの子は喧嘩っ早いので何をするか……

それに今日朝私に連絡してくれたのだ。美也の先生の友人で画家をやってる人が私の絵を評価してぜひ弟子にしたいというので会ってみないかと。そんな子に無理だ。

「わかった。ねぇ、呉橋さん。私の話を笑わないで聞いてくれない。」

「ええ。南さんと仲良くしたいと思ってたから嬉しい。」

私は家の事情を話した。私は母を小さい頃に亡くし父子家庭で育った。そんな父も私が中学に入りたての時に再婚して私にも義理の母が出来た。それが真理さんだ。父の前ではお義母さんと呼ぶことを強要しそれ以外は名前+さん呼びにしろと言われそうしている。そんな真理さんには前の夫との間に二人の娘がいた。大学生二年生の姉の茉莉花まつりかと妹の亜里沙ありさだ。茉莉花さんの方は優しいが、亜里沙さんの方は真理さんと一緒に私を虐めてくるのだ。私の私物が無くなったり私服が破られていたりなど出せばキリがなかった。父は毎日残業でそんなことを知らない。それに迷惑もかけたくなかったし、真理さんは当然のこと亜里沙さんも私より年上で逆らえなかった。私は父から貰った少ないお金で自分の部屋を鍵付にして、自分の空間は維持した。それに茉莉花さんや春乃達は私の味方をしてくれるのでまだやって来れている。

「そう。自分で何とかしなさいと言いたい所だけど、この歳ならなにかしてこの結果になってるのよね?」

そうだ。してこの結果なのだ。初めは私も話し合おうとした。しかし結果はダメだった。真理さんは矛盾ばかりだし、亜里沙さんは会話すら難しかった。私は戦意が失せた。

「その言い方だと、茉莉花さんは会話に参加してないのね」

「ええ。当時は茉莉花さんは受験生で遅くまで塾だったので。」

「ふーん。私が見返してあげてもいいよ。」

私はその言葉を聞いて心臓が跳ねる音を聞いた気がした。心待ちにした言葉だった。

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