2話

僕は外が怖い。窓のカーテンを全て閉めて部屋のドアの鍵も閉めて完全なる一人だけの空間に入った。初めは毎朝同じ時間にドアをノックされる。鍵が内側にしかかけられなくて良かった。朝母の声はうるさくて頭にキンと響くものだから彼女に手紙を書いた。僕は学校いじめられていること。具体例を上げながら。泣きながら書き綴った。それを扉の下の隙間から出す。しかし鳴り病むことは無かった。ある日とうとう我慢できなくなって親に昔貰ったイヤホンをスマホにくっつけて音楽を聴いていた。電子音に機械的な声。それは僕をとても癒した。曲に合った映像には青いツインテールの女の子が笑ったり泣いたりしていた。僕の心を代弁してくれるようなそんな歌。僕はそれを聞いて久しぶりに涙を流したのだ。ある日担任が家に押しかけてきた。それは親が朝のノックの数を減らして二日目の事だった。これで安心だと思ってた僕の部屋の鍵が開いたのだ。スペアキーと言うやつだ。いざと言う時に開かないと困るからあるのは必然的なのだろうけど…

僕は部屋と廊下に明らかな境界線が見えた。ドアの外に行く所に真っ赤なフィルターがあって危険信号が頭を駆け巡る。僕は引きずり出されそして、吐いた。しかも廊下で部屋の前の。ふらっとすると僕は倒れた。そういえばしばらくご飯食べてないや。多分四、五日。親が寝てるのを計らって夜のコンビニに食べ物を買いに行ってたけど、最近は食欲もなくて水とかだけしか取ってなかったからな。視界がかすれると脳が情報を集めるためか嗅覚が異様に敏感になった。臭いゲロの匂いと焼けるような喉の気持ち悪さが残った。

起きるとそこは病院だった。僕は栄養失調で1週間ほど入院となった。

僕は死んだ目でずっとイヤホンを耳にして音楽を聴いていた。それだけしか自我を保つものがなかった。退院した後すぐに親に心療内科に連れてかれた。今度はそこを通院となった。親は僕と月一出かける日を設けられて安心してるようだった。僕はある日の帰り違う道で帰ろうと言われ渋々了承した。通りには母の職場があった。介護センターだ。そこに行くとしわくちゃなおじいちゃんとおばあちゃんがいた。

「あら、村上さんこんにちは。今日は可愛い子連れとるけんね」

「そうなんですよ。ユウちょっと忘れ物取りに行くから待っててね」

と言われる。僕は頷くと母は僕から離れる。すると物珍しそうに老人たちが来る。ああ、この珍しいものを見る感じすごいあの時に似てる。怖い怖い。

「ねぇ、なって名前なのかおばあちゃん達に教えてくれない?」

と杖をついてる一人のおばあちゃんに肩を軽く叩かれる。

「えっと、村上むらかみ 優奈ゆうなです。」

「優奈ちゃんって言うのね。」

「お母さんにでべっぴんさんだな。」

と車椅子のおじいちゃんが声を上げる。

「今、ちょっとゲームやってるんだけど優奈ちゃんもどう?」

と奥の部屋をまた別のおばあちゃんに指される。

「え、いや。その…」

正直今は数人だから何とかなってるが、もっと多くの人のところに行くと思うと怖かった。でも、隣の部屋では笑い声が耐えないようだった。

「あの、また今度で」

僕はついそう言った。すると、ちょうどお母さんが戻ってきて帰った。また、あの老人ホームに行ったのは僕が一人で病院に行かないといけない日だった。約束しちゃったから罪滅ぼしで来たのだ。それに今日はお母さんは居ない。なぜなら、お母さんは僕の弟か妹がいる事がわかったから入院しているのだ。

「あ、あのこんにちわ。」

私は勇気をだして声を出すと。お母さんの先輩という人がでてきた。要件を聞きたいらしい

「お、お母さんが筆記用具忘れちゃったみたいだから取りに来たんです。」

建前はそれだった。事実だ。するとその人はちょっと待っててね。と言って出ていった。すると、また、老人達が何人か来る

「あれ、優奈ちゃん本当にまた来てくれたの?」

と聞いてくる。忘れてしまった人もいるみたいだが覚えていてくれたようだ。

「あった。これだよね」

と奥からさっきの人がお母さんの筆箱を取ってきてくれた。お礼を言うと

「優奈ちゃん良ければ一緒に遊んでかない?」

その言葉を少し待っていたのかもしれない。恐る恐る私ははいと返事をした。中では、麻雀をやっていた。麻雀はゲームでやってたから私もわかる。何回かは役すら出来なかったけど1回だけ死ぬんじゃないかと思う運が来た。

「うわぁ、こ、国士無双だ。」

「初めて見たと。俺が狙ってたのに」

「あんたずっとダメじゃない」

私はそんな芸人のコントみたいなやり取りに笑ってしまった。

「お、優奈ちゃんが笑った」

「ほんとだわ。やっぱり、女の子は笑った方が可愛いわね。」

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