第7話 鉄の裁き

 「あ~…逃げるぞ!!!」

 「あっ!待ってよ!お姉ちゃあああぁぁぁ…」

 ベルゼの叫ぶ声と共に小さくなるかつての牢獄の姿を、スレイヤーの肩に担がれながら見届けたのであった。

 「スレイヤーさん、ベルゼとはどう言った関係なのですか?」

 「あ~うん、終わってから話そう!」

 うまく、はぐらかされてしまった。

            *

          数十分前…

 「あ~、やっと着いたぜ。」

 「案外遠かったな。」

 「砂漠ではよくある事だよ。」

 塔は黒い材質で覆われている。壊して侵入ということは難しそうだ。

 「じゃあ、いつもの行くか。」

 「やっぱ、どこでも俺達のスタンスは変わらねえよな。」

 「よ、よく分からないけど正面突破ってこと?」

 「「大正解!!!」」

 息があった掛け合いで、救出作戦の内容は決定した。

 「門番もいないし、ちょうどいいや。入ろうぜ。」

 「「おー!」」

 正門らしき巨大な門をこじ開ける。金属らしき物体で造られているそれは確かに重いが、スレイヤーにとってはドアも同然だ。

 「お邪魔しまーす!」

 そこには、既に数多くの兵士がズラリと待ち構えていた。

 「お前ら、何の用だ。」

 端的に、1人の兵士が問う。スレイヤーは、堂々と、城中に響き渡る大声で仁王立ちと共に応えた。

 「プリンセスを、助けに来た!!!」

 ポカーンとする戦士たち。しかし、判断は早かった。

 「やれ。」

 中世の騎士のような鎧を身にまとった大勢の兵士が一気に距離を詰めてきた。

 「私はカリンを探しに行く。相手は任せたぞ。」

 「「了解!」」

 スレイヤーはその場をゲンジ達に任せ、その場から姿を消した。

 「さあシャーリー。暴れるぞ。」

 「イェーーイ!!!」

 シャーリーが構えるのは、少女の体躯とは不釣り合いな巨大な鉄塊。敵を視界に捉えた瞬間、彼女の目付きが変わった。

 「ぶっ潰す。」

 フッと姿が消える。次にシャーリーを見たのは、2人が潰された後だった。敵は、何をされたか分からずにただただ死にゆくことしか出来ない。銀色に輝く鉄槌が1つ、また1つと肉塊を作っていく度血に染っていく。彼女は楽しんでいた。肉を潰す感触、響き渡る断末魔、それら全てが心地よく感じた。

 「ゲンジさん!これ楽しすぎる!!」

 「だろ?!癖になるよなぁ!!」

 ゲンジもゲンジの方で楽しんでいた。今日は薙刀の気分らしい。得物を振り回すその姿は、まるで山を流れる清流のように滑らかで、まるで舞のようだった。為す術もなく兵士達が斬り伏せられていく中、1人がなんとか一矢報おうと槍をゲンジに突き立てる。が、それは軽く受け流され刃の渦に呑まれてしまった。戦士たちは、恐怖に支配されていた。

「なんだよあいつらッ…!急に現れやがって…。」数々の同胞の叫びが聞こえてくる中、2人の生き残りは戦場の隅でガタガタ震えていた。もう1人が仲間を鼓舞しようと安心させようとする。

「おい落ち着け!大丈夫だ。もうすぐベルゼ様が来るは…

 しかし、その言葉はプツリと途切れた。

「お、おい。どうし…うわあああ!!!」

隣には、戦友の代わりに巨大な鋼の塊が座っていた。

「こんにちは!ごめんね。仲間さん潰しちゃって。でもしょうがないよね!最初に手を出したのは。

       あなた達なんだから。」

 「ごめんなさ…ァァ…許し

 「だーめ♡」ブシャッ

 血と肉が辺りに散らばる音が惨劇の現場に響き渡る。

 「おーい、終わったかー。」

 「うん!今行くー。」

           *

          ~塔外~

 3人が集結した。

 「よおスレイヤー。成功か?」

 「まぁな、ちょっとサプライズがあったが…問題は無い。」

 「あれ?じゃあお姉ちゃんは?」

 「ぉーぃ。」

 遠くの方から、小さいが声が聞こえる。その聞き覚えのある声はだんだんと大きくなっていき、近くの砂漠の山の頂上からは、カリンの姿が見えた。

 「みなさーん!」

 3人と1人が合流する。それは即ち、作戦の成功を意味していた。

 「寂しかった~。カリンお姉ちゃ~ん。」

 シャーリーが泣きながらカリンに抱きつく。

 「お帰り。」

 「よく無事だったな。」

 2人が優しく微笑む。

 スレイヤーもゲンジも、カリンとの再会を静かに喜んだ。

 「みんな………ただいま!!」

    そしてカリンも、「家族」との再会を

         心から喜んだ。

        

 

 

 

 

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