第5話序幕

 「シャーリー、カリンはどこ行った!!」

スレイヤーが見たこともない焦燥を露わにしながらシャーリーに問い詰める。

 「・・・・・・・・・・・。」

しかしその答えは恐怖ゆえの沈黙だった。

 「やめてやれスレイヤー…、シャーリーはもうかなりのトラウマを抱えちまってる。思い出すだけでもかなり辛いんだろう。」

 「っ・・・・・・!」

しばらくの沈黙、その空間にいた各自が恐怖に憤り、後悔と無力さに苛まれながら、スレイヤーが、その沈黙を破った。

 「地獄に行く・・・。」

 「・・・正気か?」

地上と戦うのと地獄で戦うのは訳が違う。地獄はすなわち、デーモン共の本拠地だ。数ももちろんだが、戦闘力も格段に上がる。

 「昔からあいつらは魔法使いを欲しがってた。地獄にいるのはほぼ確実だ。

…それに、カリンはもう家族だ。家族を見捨てる輩がどこにいる。」

 「・・・。しゃーね。お前ひとりじゃ不安だし、付いてってやるよ。」

 「そう言ってお前、ホントは地獄で戦ってみたいだけなんじゃねぇの?」

 「ふっ、ばれたか。」

 「ま、待って!」

今まで恐怖に震えていたシャーリーが口を開けた。

 「無理はしなくていいぞ。わざわざトラウマを悪化させる理由はねぇ。」

 「ちっ、違うの!私、あの時連れ去られた時の無力感に耐えられなくて…

だから、私も連れてって!」

 シャーリーの膝は震えている。しかしその瞳には固い決意が宿っていた。

 「そう言われちゃあな。でも、自分の身は自分で守れよ?」

 「わ、分かった!!」

       覚悟は決めた。あとは

       「ぶち殺すだけだ!!!!」

                

           *


          獄城内部


 ここは、どこだ。記憶が曖昧だ。分かることは、私は連れ去られ、地球上にはない、何処かとても暑い場所の施設の牢屋に監禁されているということだ。

 「目覚めたか。」

 一人の声が聞こえる。幼い声だ。そして私の前に現れたのは、褐色の肌の角の生えた幼女であった。いかにも『私は偉い魔族だぞ』とアピールするかのような豪華な衣装を身にまとっている。

 「ここは

 「地獄だ。」

 言葉を遮られるかのように告げられた。かなり淡々とした口調で話している。

 「もうすぐ貴様は父上のもとへ送られる。変な真似はするなよ。」

 ・・・喋り方が年相応のそれではない。しかし、抵抗するなと言われてしない者が何処にいるだろうか。そして今目の前にいる悪魔は相当な重要人物。…今しかない。

 「黒き力よ・・・

 「やめておけ。」

 また遮られた。それと同時に手に込めていたエネルギーが抜けていくのが分かった。

 「その檻は貴様のエネルギーを吸い取るように造られている特別製だ。負のエネルギーしか取り柄のない貴様は、何もできん。」

 希望のかけらもない冷たい言葉が反抗心を奪い、忌々しい檻は再び私に酷い眠気を押し付けた。

 

          *


         地獄門

 「決意を決めた勇者3人は、ついに地獄の入り口に到着するのであった…。」

 「何一人で語ってんだよ、気持ちわりぃ。」

 「えー、い~じゃんか別に~。」

 「二人とも落ち着いて!!」

 「「へいへい」」

 地獄の入り口の目の前で妙に落ち着いている3人組は、それぞれ手に物騒な得物を持っている。

 「お前近接戦闘イケるのか?」

 「まぁ見てなって。銃で一発で殺すよりチェーンソーでヤったほうが面白いだろ?それより・・・」

 二人の視線が一人の幼女へと送られる。

 「シャーリー・・・。戦えたんだな・・・。」

 その手には、小さい体とは不釣り合いなドでかい鉄槌が担がれていた。

 「隠しててごめんね?でももう支えるだけじゃ守れないってことが分かったんだ。これからは・・・」

 その少女の目は純粋な瞳から、明らかな殺意の目へと変貌し、

 「私もあいつらをぶちのめすよ。」

 ゆがんだ笑顔でそういった。

 「まぁまぁそんな力まずに、気楽にいこうよ。気楽に。」

 「そうだな。」 

 「そうだね!」

 ゆっくりと門が開く。そしてその門からは何とも禍々しい雰囲気を漂わせていた。

 「よし、二次会の準備はできたな?それじゃあ、あいつらに


   本当の地獄を見せてやろうぜ!!!!!!!!」

 

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