第4話束の間の快楽
自分の中にある全ての力を出し切った。足から力が抜けていくのを感じる。
「ゲンジ!!殺した数少ない方が今夜の寿司奢りな!!
Let's PARTYYYYYYYY!!!!!!!」
「なっ…!ちょっと待てよおおおぉぉぉ…」
私をソファに寝かせ、騒がしく屋上から飛び降りる2人を見送り、私は静かに、深い眠りについた。
*
廃墟の街に、異形の軍隊が凱旋する。そんな地獄に、場違いな人影ふたつ。
「よっと…だいぶ少なくなったな。」
「あぁ、カリンちゃんのおかげだな。」
その2人は、人の見た目をしながら、なにか常人とは違う雰囲気を漂わせていた。
「それじゃあ、殺しましょうか!!」
「よっしゃあ!!」
「作戦は?」
「無し!!!」
「Let's gooooooo!!!!!」
ひとつの銃声が鳴り響く。そしてその轟音が、
大量殺戮の始まりの鐘となった。
「おいお前らこっち見ろ!」
スレイヤーが2丁の拳銃を体ごと回転させながらぶっぱなす。その大回転により吹き出した血は、まるで花弁を形どった噴水のように鮮やかだ。しかしこれだけでは止まらない。前後左右あらゆる方向に弾をばら撒く、仲間が近くにいようとお構い無しだ。そしてその凶弾は正確に急所を突き、化け物共を即死させていく。
次々とスレイヤーが屍を重ねていく中、ゲンジは危機感を覚えていた。
「やべぇこのままじゃ俺の貯金がゼロになっちまう…。ただでさえカツカツなのによォ。
…それじゃあ『俺ら』も頑張るしかねぇか…。
『アレス』!!」
『了解。』
黒曜石のように黒く輝いていた刀は機械の声で応え、そしてその姿を刀の何倍をある大剣へと姿を変えた。
「ふんっ!」
気合と共に放った斬撃は、豪快な風切り音と共に周りのデーモンの上半身と下半身を別れさせた。
しかし息をつけたのも束の間、また次々とゲンジの下に怪物たちが飛びかかっていく。
「懲りねぇ奴らだ。そんなに逝きてぇなら、纏めて送ってやるぜ!!」
アレスは大剣からまた日本刀へと姿を変え、ゲンジは抜刀の姿勢を構えた。目を閉じ、半径10m以内ある全て物を肌で、耳で感じ取る。時がゆっくりと流れ、遂にその間合いにデーモンが入った瞬間、ゲンジの姿が消えた。首を斬り、縦に割り、横に裂く。その姿がまた見えた時、周囲にいたデーモンは全て肉塊へと変貌していた。
「フゥ…さてスレイヤーは…。」
全てを終えたゲンジはスレイヤーのいる方向に目をやる。
「やっと終わったか。今夜の寿司は、アンタの奢りだな。」
そこには山積みになったデーモンの死体にあぐらをかいて勝ち誇った表情で座っている、スレイヤーの姿があった。
「この脳筋女が…。」
皮肉混じりにそう言う。スレイヤーはゲンジの額に銃口を向けた。
「悪いのはそのふざけた髭面か?」
「おー怖え。」
「はっ、今夜は覚悟しとけよ?」
「ただでさえ金欠なのに…。」
「蓄えが無いお前が悪い。」
*
廃墟ビルの部屋に戻っている途中、ゲンジがふと感じた疑問を投げかける。
「なぁスレイヤー、今日の奴ら。ちょっとおかしくなかったか?」
「確かに言われてみれば。いつもは真っ先に1番近い獲物に向かってくるが、ビルにまっすぐ走ってったな。」
顎に手を当て答えを絞り出そうとするが、全ては?マークで塗りつぶされる。考え事をしている間に、いつの間にか部屋の前に立っていた。
「あくまでも俺の推測だが、多分今回のアイツらの狙いは多分カリンだ。今日は一応武器を持っていた方がいいかもしれない。」
「そうだな。よし、腹が減った。早く行くぞ。
ただいまー!!カリン!早くスシロー行くぞ!!!」
部屋の前に着き意気揚々とドアを開けたスレイヤー達を迎えたのは、部屋の隅で震えているシャーリーと、
血痕が散らばる悲惨な光景だった。
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