第3話 平地愛子
平地愛子・・・どこかで聞いた気もするが、名乗られて返さない訳にはいかない。
「あ、芝野駿馬です。漢字でシュンメと書いてシュンマと読みます。こっちは・・・愛馬のハヤテです」
「(おい、愛馬って照れるぞ。ていうか紹介でオウ省略するな)」
ひとまずハヤテオウのツッコミは無視する。さっきまで鼻をひくひくしてこっちのことなど気にしてなかったくせに・・・
「はあ、そうですか。それで、こんな場所に何の御用ですか?」
「ああ、えっと、怪しいものではないです・・・」
「(怪しいだろ!)」
「では、どんなご用件で?」
背丈はほぼ同じぐらいだが、少し屈みながら上目遣いをされるとむず痒くなる。
「(おい、ハヤテ。どうしたらいい?)」
「(知るか。自分で解決しろ)」
初めてこっちからも言葉に出さず、心の会話を試してみたら繋がった。しかし、こんな態度の奴だったのか。いや違う・・・未だ姿が見えない牝馬に気持ちがいって、こっちのことなど上の空なのだろう。何しろ2走目では白毛の牝馬のことばかり気にして直線まで気合いが乗らず、危うく負けそうになったくらいだ。一か八か、レース中にステッキを使ったのはあの時だけだ。
「なんて説明したら良いか・・・実は道に迷っちゃいまして」
「あ、ああ。それでしたら、このスマイル牧場は・・・」
愛子さんがせっかく説明してくれても地名がうまく耳に入ってこない。効き慣れないからだ。言葉は完全に理解できるのに・・・でも、待てよ。スマイル牧場・・・平地愛子・・・あ、何かの公開イベントにゲストとして招かれて、競馬ゲームだったか。
ええっとゲームのタイトルは「ダービーミリオネア」で、物語の拠点がスマイル牧場、女性オーナーの名前が・・・平地愛子!
謎は全て・・・解けてない。一体何が起きているのか。もしかして、夢でも見ているのだろうか。
「あの、柵の外からすみません。平手で頬を打ってくれませんか?」
「えっ」
「お願いします」
「(おいおい)」
「で、では・・・」
バシッ!
グハッ!
見た目によらず、怪力・・・・駿馬の意識は飛んでいった。
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