4話 愛の形

「この中にウェンベリンの家系に関係する者はいるか?」

そう言うと数名俺の前に出る。和也もいる。


「お前達はきっとマリーから眷属になった者だろう」

全員が頷く。


「これを、マリーから預かっている。これを渡そう」


そう言ってブルーダイアモンドの指輪をその場にいた者に渡す。


「‥‥‥これは‥‥‥どういう事ですか? マリー様は‥‥‥」


「‥‥‥マリーは亡くなったよ」


「何故? 始祖であるマリー様が‥‥‥何故なのですか!」

和也が悲し気に声を荒げる。


「‥‥‥彼女は‥‥‥ハンターにやられた。当時まだ和平を結んでいなかった時代時だ。彼女は、他国にいる自分の眷属達の心配をしていた。そして悔やんでいた。無理にでも連れてくればよかったと言っていたよ。まだ、自分を忘れないでいてくれたのならそれを渡して欲しいと頼まれた」


「そうですか‥‥‥」

そういう和也は怒りの表情で俯く。


「そのハンターが日本にやって来る。マルクス様どうされますか?」


「あの時マリーを殺した奴は俺が始末した。マリーは和平を望んでいた。人間達との共存を望んでいたんだ。その話し合いの時に騙し打ちに遭ったんだ」


その場の誰もが怒りに震える。


「俺は何人か始末したよ。母を殺されたんだ、黙っていられる訳はない。その後だよ、奴等が和平に応じたいと言って来た。これ以上の犠牲者を出したくないと言う理由だった。」


「ヴァンパイアを何だと思っているんだ。俺達は人間を殺めたりなどしていないと言うのに‥‥‥」

部屋に居た他の仲間は涙ながらに声を震わせて言う。


「そうだな。だが人間にとって俺達は化け物なんだよ」


仲間達の怒りと悲しみの感情が部屋の中の空気を満たしていた。


「とりあえず日本にはまだ来ていないのが分かってよかった。だが、日本の教会支部には連絡はいっているはずだ。これからどんな手立てをとってくるのか不明だ。くれぐれも気を付けてくれ。吸血する相手もこれからはしっかり決めていた方がいいだろう」


「承知」


そう言った後、指輪を大事そうに握りしめて泣き崩れる者もいた。


母さん。貴方はこんなにも慕われていたんですね。彼等の顔を見れば分かる。

他の国の眷属にも渡したが同じ様に指輪を抱え悲しみに暮れていたよ。


「和也。帰ろう。お前に合わせたい者がいる。これからはその者とも協力して教会の奴らを騙していくぞ」


「はい」

俺達は部屋を出る。途中でレオナルドに連絡をする。アイツらも狙われる対象だからな。情報は共有した方がいい。

「俺だ。マルクスだ。レオナルド話しがある」


「ハンターの事だろう? こっちでもその対策を考えている所だよ。ヴァンパイアハンターと言ってもヴァンパイアだけとは考えにくい。俺達も注意しなければと話していたんだ」

「なら話しは早い。場所を決めて会おう」

「俺達は良くカラオケへ行くぞ。防音対策はバッチリだ。仲間が経営している所もあるからな」

「それはいいなあ‥‥‥そうなると、日本語を話せないのはお前だけか」

「情けないがそうなる。あれから一応日本語は勉強しているぞ」

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