3話 ハンター

和也の後を付いて行くと、別のマンションの前に着いた。


大きなマンションだ。タワマンっていうのだっけ。何階あるんだ? 驚いて見上げる。


「ここに仲間は沢山暮らしておりますよ」


「ほう。ここに居るのは眷属か?」


「そうです」


「貴方様の家系の眷属は、今は私を含め10人いないかと‥‥‥。ウェンベリンの家系は眷属を余りお創りにならないので、少ないのですよ」


そう言って俺を見る。


「貴方も眷属を従える気はないのですよね」


「眷属とてヴァンパイアには変わらないがやはり不死ではない。別れは悲しいんだ。俺の家系は愛する者を眷属とする事が多い。和也お前も俺の家系の誰かが愛したんだろう‥‥‥」


「はい。私はこの日本でウェンベリンの血族のヴァンパイアに眷属とさせて頂き愛されておりました。それは幸せな日々でございました。でも彼女はご自分の国に帰って行かれてしまったのです。日本が鎖国をしたのが原因です」


和也は悲しそうに言う。


「うちの家系は愛情深い。眷属はいつも傍に置いていたぞ?」


「ここで立ち話ではなく、中でお話させて頂いても宜しいですか」


「和也。そんなに畏まらなくてもいいぞ。せめてマルクスと呼んでくれ」


「わかりました。でもせめてマルクス様と呼ばせて下さい」


「かまわないよ。それでいい」


和也はマンションに入る。その後に付いて一緒に入る。

和也が話す。


「私が眷属になったのは江戸時代に入って直ぐでした。異国の彼女は私達にとても良くして下さったのです」

エレベーターの中で言う。


「私は自分から望んで眷属になりました。彼女と離れたくなかったから‥‥‥」

「そのヴァンパイアの名前を教えてくれ」


「‥‥‥マリー・ウェンベリンです」


「そうか‥‥‥お前は俺の母親の眷属だったのか‥‥‥マリーは俺の母親だ。数少ない始祖の家系のな」


和也は驚きの余り声が出ない

「‥‥‥それで、マリー様は‥‥‥」


「その事についても話そう。後から和也お前に渡したい物がある」


話していたらある部屋の扉の前に来た。ドアのインターフォンを鳴らす。


「どうぞ。マルクス様。中で貴方を仲間が待っております」

小さく礼をされ、部屋の中に通された。


「おお! 始祖様が来られた!」

と、その場にいた全員が膝まづく。


「そんなに畏まらなくていい。楽にしてくれ」


「それで? ハンターの情報は何処まで掴んだ」


「日本にはまだ、入国していない様です。教会の奴等は準備をしております。銀製品をやたら集めていますよ」


「どうせ。銀製の杭を作る為か拳銃の玉でも作っているんだろうさ」


「野蛮な事を考える者達だからなあ。だが、火あぶりは勘弁してほしいよな。暑いんだよ。それに、灰の中からそっと出るのって大変なんだ。仲間がいるからどうにかなったが‥‥‥裸になるからなあ」

仲間の1人が言う。それにつられるように何人かが笑う。そうか、この中にあの魔女狩りに遭った者もいるんだな。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る