2話 ヴァンパイアハンター

今日も仕事が終わり家に帰る。明日は休みだ。玄関を開け入る。


「お帰り。マルク」

と有紀の笑顔が眩しい。


「うん。ただいま」


「明日お休みでしょう? 何処か行きたい所ある? 秋葉原でもいいわよ。私も欲しい本があるから」


 そう言いながら夕飯の支度をしてくれている。

二人で食事をしながら有紀に聞く


「実家に顔を出さなくていいのか? 俺はそう言った人間関係について詳しくないから。遠慮しなくていいんだぞ」


「今、パパ達は豪華客船のクルーザーで旅行中よ。楽しんでいるから気にしないで」


「そうか。ならいいんだ」


 食事も終わりシャワーを浴びた後髪を拭きながらスマホをチェックするとリックから着信があった。留守電にメッセージは入っていない。だがメールに書かれている文字は危険を知らせる暗号が送られてきていた。


「有紀。今から友人に電話をする。ベッドの部屋で話してくるから。有紀はゆっくりしていてくれ」


 そう言いながらスマホでリックに電話をかける。


「‥‥‥リック何があった? このメッセージは危険を知らせれる時に使う俺達にしか分からない暗号化されたものだ。どうした!」


「マルク‥‥‥気をつけろ。ヴァンパイアハンターが復活して活動を始めた」


「奴等とは和平を交わしたはずだが、何故今になってそんな話になるんだ?」


「トップが変わったのさ。トップが変われば自ずとその思想や方針は変わる。よくある事だろう? 教会の奴等はゴーストバスターでは物足りないのだろう。伝説の化け物をやっつけよう! だとさ」


「その標的が俺達か」


「そうだな。もう何人かの眷属がやられたよ」


「! なんだって!」


「眷属は不死ではない。確かに人間より長生きだが‥‥‥」


「日本にも来るぞ。気をつけろ」


「ああ。分かったよ、知らせてくれて助かったよ。日本にいる仲間に知らせておく」


あのネオン街にいる奴に伝えておくか。そう言えば名前を聞いていなかったな。リビングにいる有紀に声を掛ける、


「有紀。ちょっと出かけてくる、仲間達に伝えたい事があるんだ。遅くなっても心配はいらないよ」

「そう‥‥‥」


そう言って俺の顔を見る。

「浮気じゃないのは分かるからそっちの心配はしないけど。マルク。その表情からすると‥‥‥きっと危険な事なのよね。気を付けて」


「分かった。気をつけるよ。落ちついたら話すから」


そう言って外へ出る。あの眷属の所へ。相変わらず夜の街は明るい。人も沢山いる、その中であの眷属から声を掛けられる。


「今日は、どうされましたか?」


「話がある。あの部屋じゃないゆっくり話せる場所を教えて欲しい、出来れば他の仲間がいると何かと省ける」


「承知しました。では他の者も呼びましょう。始祖様に会いたがっておりましたから、皆、喜ぶ事でしょう」


俺はその男の後ろをついて歩く。


「そう言えばお前の名を聞いていなかったが教えてくれるか?」


「名乗る程の者ではございませんが、今後の事もありますから名乗らせて頂きます。私は、久納和也といいます。連絡先もこちらです」


 と名刺を渡される。へえ。弁護士か。

「宜しく。和也、これから連絡する事も増えて行くだろう。頼むよ」

「承知」

そう言って礼をする。

歩きながら聞いてみる。

「和也。ヴァンパイアハンターの事は聞いていないか?」

「仲間から聞いておりますよ。教会の奴等が動いていると」

「そうか‥‥‥日本にいる仲間に被害はないか?」

「ここ日本では宗教は余り重要とされていませんからね。主に神仏に対しての方が日本では主なようですから、教会という所に余り興味を持つ者は少ないですよ」

そうだったな。ここで布教活動してもそれ程広がらなかったからなあ。この国は面白い。神が一人で絶対神という思考はこの日本では浸透しないだろうな。この国には八百万やおよろずの神と言って色々な物に神は宿ると信じている者の方が圧倒的に多い。

しかし、教会関係者は存在する。そう。俺達を敵視している奴等だ。人間からすれば俺達は化け物だろう。だが、人間を襲う事は基本的にない。昔は人間達と共存していた時期だってある。

ヴァンパイアだと認めて、それでも一緒に居てくれた。いつからだろう、こうやって互いに溝が出来てしまったのは‥‥‥。

ニックはその時から人間を愛し、見送って来た。『蕾の花が美しく咲き、その一番美しい時を共に生き、花びらを散らす様に儚く逝ってしまうその姿までもが愛しいのだ』と言っていた。









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