第8話

 その相手の群れのたまり場に着いた。レオナルドはこっちだど俺に顔を向けて合図をする。その部屋のドアを開け、まずレオナルドが入る。どうやらこっちのリーダー候補と話しているようだ。


「お前のような腑抜けた野郎に付いて行きたいと言う奴は居ないぜ! 出て行け!力が強い奴が上に立つべきなんだ!」

レオナルドは数人の狼男に蹴り飛ばされたようでドアの外までふっ飛んで来た。


「やれやれ困ったもんだ、お前達のせいで俺達に迷惑がかかっているんだが、そこの所どうしてくるんだ」


 俺はその中に入って行く。始祖オーラは出していない、まずこいつ等の本当の姿を知りたい。

「なんだお前! ヴァンパイアか。ここはお前達みたいな者が来ていい場所じゃない! 関係ない奴は出て行け!」


「何を言う、大いに関係はあるぞ。お前達の食事のマナーの悪さでせいでこっちは困っている。俺達は人間と上手くやっているんでね。日本のポリスは有能だ、このままだといずれお前達の存在がバレる事になる。それは俺達にとっても不都合なんだ。はっきり言って迷惑だ」


 中にいるウルフマン達は血の気が多いようで唸り声を上げている者もいる。そこでこの群れのリーダーだろう一人が俺の方にやって来た。俺の顔を睨むように見る。が、何かを感じたのかさっと後ろに後退した。

「お前‥‥‥始祖か」

「ほう、オーラを出さなくても解るとは流石だな、で、俺に文句を言いたい奴はいるか? 出て来いよ」

 

 何人か俺の前に出ようとしたが近づけないでいた。そう俺は始祖であるオーラを放っていた。

「こんなもんか。俺は争い事は嫌いなんでね。そこで俺は、ここで言いたい事を言わせてもらう。お前達のリーダーはここにいるレオナルドになってもらう」


 その群れのリーダーらしき者が俺を睨む。俺は

「レオナルドはもう俺の友人だ。それにレオナルドの思想に賛成なんでね。力が強いってだけで群れを率いては行けない。群れを守って行かなければいけないと、という覚悟がなければリーダーはやって行けない。だから今のお前はリーダー失格だ。仲間を危うくさせている。昔の魔女狩りのようにあぶり出され処分される。なんせお前達は人間を襲った、人間にとってはお前達は危険な存在となっているからだ。お前がリーダーになったらこの国のウルフマンは根絶されるだろうな」


 その言葉にそこにいた狼男全員がざざっとその男から距離をとった。


「人間を襲いたいのであれば勝手にやればいい。だが、人間に捕まった時は狼の姿になっていないとお前達は終わる」


 俺の言葉に他の狼男達は息を飲む。


「知っているか? 日本の警察はもう動いているぞ」

 俺はにっと笑ってそこにいる狼男達を見る。そこで誰かが言う

「最近、この周囲にやたら警官が多い」


「今の時代いたる所に防犯カメラがあるからな、車にもカメラが付いている時代だだ。写っていない事を願っておいてやるよ」


 さっきまでと空気が違っている。

「後はそっちの判断に任せる。レオナルドがリーダーになったら俺はお前達の力になろう、相談は聞いてやる以上だ」


 そう言って店を出た。車に戻りスマホを確認する。有紀からメッセージが来ていた。話がある、とだけ。俺は直ぐメッセージに返信を送る。今から家に帰る良かったら家に来てくれ、と。俺は急いで帰る。今回の事できっとレオナルドがリーダーになるだろう、ヴァンパイアの始祖がバックにいれば怖いものはない。俺達は不死だから経済界に有力な者もいる。この国の総理だって怖くないし、他の国の首脳や代表者と言われる者にもコネはあるんだ。


 事件はこれで解決だ。後は個人的な問題だけだ。俺の正体を話した方がいいのか‥‥‥。リックはいつも相手に自分の事は話していた。けれどアイツは眷属にはしなかった。いつも見送っていた。人間が一生懸命に生きる姿が好きだから、死ぬ事への自由を奪いたくないと。リックも純血種だ。眷属にする事だって出来るというのに‥‥‥俺とは本当に長い付き合いだ。有紀には正直に伝えておいた方がいいな、恐れられても仕方ない、いずれ解る事だ。だったら言っておこう。恐れられ嫌われたら、記憶を消して俺が違う土地へ行けばいい。それだけだ。


 俺はそう決めて家へ帰る。家に着いてマンションに入ろうとしたら、


「遅い! 私の方が早く着いてしまったわ」

 と言ってあの弾けるような笑顔を見せる。ああやっぱり有紀のその笑顔が好きだ。


「すまない。昼間の患者の様態を診に行っていたんだ」


「あっ! それ聞いたわ。救命にいたナースから聞いてビックリしたのよ」


「そうか、ここではなんだ、その‥‥‥とりあえず部屋に入らないか?」


「そうね」


 俺達はそれから無言でエレベーターに乗り無言のまま部屋に入った。リビングのソファーに座り向かい合って俺は話し始めた。


「有紀、この前は悪かった。気分を悪くさせたのなら謝る、だが‥‥‥もし」


 俯きながら言う。すると有紀は立ち上がって俺の後ろに立つ? すると今度は俺が後ろから有紀に抱き絞められた。!


「私もマルク貴方の事が好きよ」

 耳元で言われた。どうしようきっとその耳は真っ赤になっているだろう。

「まあ、耳真っ赤よ。私にあんな大胆な事をしておいて、ずるい」

「君は俺の心を簡単にかき乱す。今までこんなに気持ちを揺さぶられた相手は有紀だけだよ」


 有紀は俺をソファーに押し倒し、俺を見下ろして言う。

「あれから私。自分の気持ちに気づいてしまったの。貴方の事が好きだって」

「嬉しいよ。有紀。君に隠し事はしたくない。大切な話がある、聞いてくれないか」

 

 有紀は俺の隣に座り直してこちらを向く。

「有紀、俺は人間ではない。ヴァンパイアと呼ばれる者だ」







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